スムーズな連携で4-0の大勝利

 シーズン序盤に横浜FCと対戦して、4-0で勝利。
 つい2007年を思い出してしまいました。


 あの時も同じく4-0。
 堅守の横浜FCという予想がされましたけど、意外と中盤が開いてきて、そこからチャンスが出来る試合だったと思います。
 今回もそれに近い展開でした。


 07年と今年。
 凄く近いと思う部分も多いし、逆に全く違うと感じる部分もあります。
 チームが近い感じになってきたからこそ、比較できるところもあるし、それが方向性を保つ1つのメリットなのかなぁなんて思います。
 どこかに問題があればそこと比べて修正できるかもしれない。
 けれども一方でそこを逆手にとって批判の材料にしようとすれば、いくらでもできる場合もあるわけですけどね。


 例えば今のジェフはあのころに比べれば全然雰囲気がいい。
 それだけでも、選手を助ける1つの大きな武器になっているのではないでしょうか?
■序盤は横浜FCペースも
 キックオフ直後は横浜FCペース。
 シンプルにジェフのDFライン裏を狙い、こぼれ球を拾う形で、ジェフに攻め込みます。
 相変わらず大黒のDFから消えてる動き、DFラインの穴を突く飛び出しが得意で、序盤はそこから何度もチャンスを作っていました。
(どうもジェフDFラインが裏に飛び込むFWを捕まえるのに何があるということで、チームとして狙っていたことでもあったようですね。)
 そして、中盤からはG大阪からレンタル中の寺田がキレのあるドリブルで飛び出してくる。
 この元G大阪の2人を中心に、攻撃のリズムを作っていきました。


 対するジェフはそれに合わせてしまう形で、ロングボールを蹴るサッカーになってしまいました。
 空中戦に高さはないジェフの選手達ですから、当然ながられはあちら方向に。
 ネットが一発で決めてしまうような場面も作っていましたけど、逆に「自分達のやりたいサッカーって何なんだろう」となやんでしまいました。


 その中で可能性を感じたのが、ネットが右サイド寄りの中盤まで下がってきてポストをしMFとパスをつないで、左サイドの渡邊に大きく展開する攻撃。
 その流れでクロスを上げても、若干中央が遅れがちでもう一歩…というところではありましたけど、守る相手に右中ごろでためて薄い左を狙う…というのは1つの狙いとして面白いのではないでしょうか。
 やはり渡邊はサイドが本職ということで、オーバラ―ップのタイミングや走り込むコースが的確ですね。
 それに比べるとSBとしてのアレックスはちょっと違うような…と、言ってもどこが本職なのかわからなくなっていますけどね(笑)



 こういったいい形もありましたが、それもまだ連動性のある攻撃とまではいかずどちらかといえば偶発的に近い物なのかな…と感じましたし、まずはジェフが劣勢でどうやって立て直すかといった試合展開だったと思います。
 しかし、前半20分に相手選手が自陣ゴール前でボールの処理をミスし、そこを倉田がかっさらってゴール。
 倉田がよくつめていたという部分はありますけど、それ以上に幸運な部分が多い得点で、予想外の先制点となってしまいました。
 後で振り返ってみれば、これがこの試合の大きなターニングポイントだったようにも思います。
■守備の変更とネットの活躍
 そこからはようやくジェフが落ち着き、細かくパスを繋げるようになります。
 逆に横浜FCの方は一気にペースダウン。
 DFラインも下がり前線と中盤の距離があいてしまって、ロングボールを蹴り込んでもジェフに跳ね返され、中盤でボールを拾うこともできなくなてしまいました。


 ここで少し気になったのは、ジェフの守備体系。
 今までは初めのプレスをかいくぐられても3トップは前で張っていて、中央のトップ下2人も比較的高い位置をキープしていたのですが、この試合ではウイングもかなり引き気味でトップ下もバランスを取りながら下がり気味のポジショニングをしていたように感じました。
 もしかしたら相手との力関係や戦術(繋ぐのではなくカウンター重視)を考慮してということなのかもしれませんが、これによって相手のポストプレーの一連の流れ(くさびのパス出す、ポストを受ける、中盤に落とす)にもケアで来ていたと思いますし、フリーにさせがちだった相手SBの攻撃参加への対応もしっかりと出来ていたと思います。
 これによって今まで不安だった守備の部分も、かなり改善されたのではないでしょうか。



 ただ、一方で前方のプレスで奪ってショートカウンターという形は、少なくなったように思います。
 その分、目立っていたのが、ロングカウンターの展開ですね。
 そうなってくると、ますます活き活きとしてくるのが、ネットなのかなぁと(笑)
 ポストプレーへの入り方も、かなりよくなってきたのかなぁと思いましね。
 昨年後半、新居もポストの受け方がうまくなっていきましたし、江尻監督はそのあたりが得意なのかもしれませんね。
 巻はもともとオシム監督仕込みのポストプレーでしたから、入り方に関してはうまい選手でしたけど。


 ネットに頼らなくとも、細かいパスワークで相手を崩す展開が作れれば良いのでしょうが、それに関してはこの試合でもまだまだ課題を感じるシーンが多かったのかなと思います。
 それによって20分に先制してからジェフがボールを持つ時間が長くなったのですが、その後得点は生まれずに前半終了となってしまいました
■ネットの展開力から倉田のゴール
 後半、若干横浜FCが勢いを若干取り戻してきます。
 5分に渡邊がボールを持ち込んで前方の倉田にパス、倉田と工藤が絡んで、工藤がゴール前に走り込んでいた勇人にラストパス。
 最後はネットにつなぐも、大きくボールをふかしてしまいました。


 これも非常に良い展開でした。
 工藤と勇人の関係も、ようやく整理されてきたように感じます。
 工藤がパスをつなぐ役割で、勇人が飛び出す仕事。
 連携が出来てきた証拠ではないでしょうか。



 この頃から、横浜FCも疲れが見え始めたのか、守備への戻りが遅れてくるようになってきます。
 10分にはカウンターから、谷澤、勇人、倉田(?)とつないで惜しいシーンを作るも、倉田はシュートを打たず。
 ここは、どんどん打ってほしかったですね。
 11分には谷澤が左サイドで綺麗に2人を抜いてシュート。
 やはり谷澤は途中投入されると、生き生きしてきますね。
 J2のチームからすれば卑怯だと思うでしょうけど(笑)


 そして、後半15分。
 カウンターの形で、左サイドでネットがボールを持つと前を向き、右前方を走っていた倉田にぴたりとロングパスを出します。
 これぞネット獲得前にYouTubeで見た、展開力ですね。
 やはり前を向くと怖い選手です。
 そのまま倉田は中央に切り込んでいき、思い切りのよいシュートを左足でズドンと決めます。
 ジェフにとって貴重な追加点でした。
■試合終了間際に止めの2ゴール
 その後、20分あたりからは停滞ムード。
 両チームとも足が止まってきて、このまま終わるのかな?とも思っていました。


 しかし、40分あたりから相手の動きが完全に止まっていき、逆にジェフの方は動きが良くなったかのようにも見えました。
 後半44分、右サイドの展開から途中出場の巻をめがけたクロスがこぼれ、そこを拾ったのは工藤。
 ボールを奪った勢いのまま前に前進し、左足でボールをコントロールしながら右足一本で1ステップすることでフェイントをかけ、左足でシュート。
 倉田のゴールと甲乙つけがたい素晴らしいシュートでした。


 ロスタイムには谷澤がドリブルを仕掛け、シュートを売ったこぼれ球を、走り込んでいた勇人にあたった形で4点目。
 なんとなくですけど、“ジェフでの勇人”らしい得点だったかなと思います(笑)
 もちろんそこまで走り込んでいたからこそ、奪えた得点ですけどね。



 こうやって倉田だけでなく、工藤や勇人もゴールを取れるようになってくると、チームとしては心強いですよね。
 よく「J1に昇格するには絶対的なゴールスコアラーが…」という話を聞きますが、ジェフはオシム監督の頃から「誰でも点を獲れるチーム」を目指していたわけで、その流れに沿うのであれば一概に絶対的なストライカーがいなくてもいいのかなとも思います。


 それに今年のジェフは「絶対的な選手層」で勝っていくチームなのかもしれません(笑)
 だから、誰でも点が取れるポテンシャルはある。
 2−0で終わりそうな試合が4-0になったのも、もしかしたら競争意識が強く、最後までアピールしたいという思いがあったからこそかもしれませんしね。
 巻も最後までボールを欲しがっていましたし。
(でも谷澤がカットインした際に外に開いてスペース作ってあげたりしてましたねぇ。正直、中で待っていればいいのにと思ったんですけど、そこが巻きらしさですからね。周りを活かすプレーが体に染みついているところもあるんでしょうけど。)
■攻守においての連携
 試合序盤、ロングボールばかり蹴り込み、相手のペースで試合が進んだときはどうなるかと思いましたが、終ってみれば4-0の大勝でした。
 ジェフからすれば良い試合だったと思います。


 逆に横浜FCは試合序盤しか良い時間帯はなく、3連敗も納得かなぁという内容でした。
 もちろんこれが不調の底なのかもしれませんけど、今のままの状況が続いてしまうと大変そうな感じですね。
 横浜FCとしては、どれくらいの出来だったんでしょうね。
 ジェフとしてもあれで満足していいのかどうか、気になるところでもあるのですが…。



 とはいえ、ジェフが開幕からよくなってきたのも確か。
 まず、選手を固定して連携が高まってきたことが大きいと思います。
 工藤と勇人の関係に関しても言いましたが、渡邊がオーバラップしてそこに工藤も絡んで、倉田をフリーにするという展開なども無理なく出来つつあるように思います。
 サイドの広い位置で自然と攻撃の流れができているというのは、中央を助けるという意味においても非常に大きいものだと思います。
 また、ネットと中盤の関係もようやく整ってきました。


 それに加えて、この試合では守備の流れも良かった。
 今までの試合だとどこかで必ず遅れがちになるポジションが出来ていましたが、しっかりと戻るところは戻る、前に行くところは前に行く共通意識がチームとして少しずつ出来つつあるのではないでしょうか。
 これをベースにもっと前からボールを奪えるようにするのが、江尻監督の理想なのかななんて思います。



 こういったいい形をどのチーム相手にもしっかりとやれるようにして、今後に結び付けたいところですね。
 今のジェフは流れに乗っていますし、今のうちに勝点を量産する展開には入れれば、シーズン終盤が非常に楽になっていくのではないでしょうか。
 かといって現状に満足しすぎることなく、一戦一戦しっかりと戦っていきたいところではないかと思います。