4月半ぶりのリーグ戦勝利

 岐阜戦の敗戦が薬になったのか、ホーム・フクアリで気合いが入ったのか、FC東京に対して得意意識があったのか…(笑)
 ともかくジェフの内容は良く、選手の気持ちも入っていた試合だったと思います。
 その調子の波がどうしても出来てしまうことと、ちょっと気持ちが入る試合になるとラフプレーが増えてしまうのが、今のジェフの大きな問題ですけどね…。


 一方のFC東京は、良くなかったみたいですね。
 やはりナビスコ杯に優勝してメンタル的な部分がどうしても落ちてしまうのか、ジェフ相手に油断していたのか。
 ビルドアップがうまくいっていなかったのを見ると梶山の不在も大きかったのかなと思うのですが、それ以上に全体的に選手達が動けていなかった印象でした。


■SHの役割の変化
 ジェフのスタメンはFWに巻、新居。
 中盤に米倉、工藤、中後、谷澤。
 DFラインに坂本、福元、斎藤、アレックスでGKに岡本。


 ここ数試合、江尻監督は一方のSHにチャンスメイクをさせ、もう一方のSHをゴール前に飛び込ませるサッカーを狙っているのかなと思います。
 一時期はアレックスを左SHに起用し、中に絞らせてボランチとの連携でビルドアップしようとし、右SHは縦に突破してチャンスメイクを狙うサッカーをしていたと思うのですが、それだとゴール前に人数が足りない場面が多い。
 しかし、そのまま右SHをゴール前に飛び込ませると、サイドを広く使えない窮屈なサッカーになってしまう。
 そこで、SH1人はゴール前に顔を出すようにさせ、もう1人はサイドでチャンスを作る形にしとうとしているのかなと。
 監督からの指示としては、そういった「SHの役割分担」と言うよりは単純に「SHのどちらかはゴール前に入っていくように」というものなのかもしれませんけどね。
 その分、ビルドアップはSBに下げたアレックスに期待しようということなのかもしれません。



 この試合では状況によって違いましたが、基本は米倉がサイドより、谷澤が中央よりだったかなと思います。
 天皇杯で何度か出場機会を得ている米倉は、落ち着きが戻ってきましたね。
 一時期はがむしゃらに前に行こうとしすぎてボールを失うことが多かったですが、やはり本来は賢くプレーできる選手。
 落ち着いてプレーできるようになったことによって、ボールを持っても余裕ができ、プレーの選択肢も増えていました。
 来年はぜひ中心選手として頑張ってほしいですね。


 その米倉と谷澤を中心に、チャンスを作っていきます。
 谷澤は相手のバイタルエリア付近で自由にプレーすることで、伸び伸びとやれていたんじゃないでしょうか。
 そこに工藤もどんどん2列目から飛び込んで行く動きも、地味に効いていたんじゃないかと思います。



 試合開始からジェフのペースが続く中、前半22分に巻が負傷退場してしまったのですが、その直後の前半26分。
 右サイドからのボールを、巻の変わりに入ったバイアーノが中央ためて左にパス。
 ボールを受けたアレックスがクロスを上げ、新居がヘッドで先制します。
 やはり新居はいい状況でボールを受ければ、確実にゴールを決めてくれますね。


■ジェフ先制後、相手が猛攻
 しかし、この先制点でFC東京の目を覚ましてしまったようです。
 明らかに攻撃参加する人数がそれまでよりも増え、ジェフを押し込んでいきます。



 それまでのジェフはCBに大輔が入ったことで、今までの試合より全体のラインを高く保って戦えていました。
 守備時のDFラインもそうなのですが、見方がボールを持ったときの押し上げが非常に大きいですね。
 これによって中盤より前の選手達を攻守にサポートすることが出来ていました。
 江尻監督就任直後、CBを池田と福元にしていたのも同じ狙いではないかと思います。
 その後、池田は負傷してしまいましたけど、池田の離脱は江尻監督にとっても大きな誤算だったんじゃないでしょうか。


 しかし、先制点後のFC東京の猛攻により、全体ラインが下がっていってしまいましたね。
 一番の理由はジェフの中盤のエリアに、どんどん相手選手が入ってきたことでしょう。
 DFラインの問題以前に、中盤で簡単に相手に前を向かせてしまうことが、この時間の大きな問題となっていました。
 加えて、巻がいなくなったことで、前線からのプレスも弱くなってしまいました。
 バイアーノはここぞという時のチェイシングはすごい迫力がありますけど、それ以外での守備は巻に比べるとどうしても劣ってしまいます。


 しかし、それよりもこの時間帯での問題は、ボランチの守備能力だったと思います。
 やはり中後と工藤のダブルボランチだと、攻撃面ではいいのですが守備面でのゆるさが目立ってしまいますね。
 失点シーンもボランチ2人の守備が軽く、そこでパスを繋がれて最後は抜け出した赤嶺に決められてしまいました。


■トドメを刺せないジェフ
 FC東京による同点弾が前半31分に決まり、その後もFC東京の時間帯が続きました。
 しかし、その攻撃を何とか凌ぐと、前半終盤、またFC東京の運動量が落ちてきます。


 すると、後半開始早々に、坂本の見事なアーリークロスバイアーノが合わせて勝ち越し弾。
 なぜこういったクロスが今まで蹴れなかったのか…とか思ったりもしなくもないですが(笑)
 それはともかくとして、それ以降もジェフの流れが続きます。


 守備機会も少ないからボランチ2人の課題も隠れ、アレックスも裏を気にせず積極的に上がり、バイアーノへのマークも緩く自由にプレーでき…。
 おまけに後半18分には平山が2枚目のイエローで退場。



 完全に有利な状況で、相手は明らかに気持ちの面でも落ち込んでおり、ボール保持率も圧倒的。
 …なのに、相手にトドメを刺せない。


 相手のプレスが緩くアタッキングサードまでは何の問題もなくボールを持ちこめる状況で、そこから先のマークも曖昧に見えたのですが、なぜかそこからサイドに開いて見せたり、余計なパスを加えてみたり、簡単なパスをミスしたり…。
 そこまでの出来は良かっただけに、フラストレーションのたまる時間帯でした。
 これが勝ち慣れていないチームなのかもしれませんが「ここで試合を決めてやるんだ!」という意気込みはあまり見られず、落ちていた相手の勢いにジェフが合わせるような空気になっていってしまいました。




 これが残り数分だとか、相手のカウンターが怖い状況ならわかるのですが、むしろこの状況で警戒すべきはこのまま1点差で試合終盤になって、相手がパワープレーなどを仕掛けてくることだったはずです。
 実際、終了間際には一度相手のシュートがポストに当る展開もあったわけですからね。


 ただ、それ以外のFC東京の攻撃は、勢いもなくほとんど怖さを感じませんでした。
 逆に後半終盤はFC東京の守備への戻りも遅くなり、ジェフのカウンターのシーンでスペースが出来ることが増え、なんとなく昨年の最終節を思い起こさせるような状況でした。
 しかし、やはり最後のプレーが雑なのは変わらず、ジェフにとってもったいない展開が非常に多かったと思います。


■反省と、手応えと
 そのまま2-1でジェフの勝利だったわけですが、弱っている相手に3点目を取りきれなかった、トドメを刺し切れなかったという思いの方が強く残る試合でした。
 今シーズン何度も点を取らなければいけない時間帯で点を取れず、勝ち点を取りこぼしてしまう試合を経験してきたわけですが、試合展開からするとそういった形に近かったかなぁと。
 相手がまともな状況だったら、危なかったんじゃないでしょうか。


 来季、本気でJ1復帰を目指すのであれば、こういった勝ち試合は確実にモノにしていかなければいけないわけで、相手にトドメを刺せなかったことをしっかりと反省しなければいけないと思います。
 J1に復帰する、J2で勝点を重ねていくということは、そういった“強さ”の部分が絶対に必要になってくるはずですからね。



 とはいえ、それ以上に収穫も多かったと思います。
 まず大輔が入って、今まで課題としていたDFラインの押し上げができていたこと。
 前半に押し込まれた時間以外は、しっかりとラインコントロールが出来ていたのではないかと思います。
 大輔自身も序盤こそボールを持った時に危なっかしいプレーが見られましたが、それ以降は安定したプレーをしてくれていました。
 特に試合終盤は何度も相手からボールを奪っていましたね。
 やはり後ろに大輔がいると守備が締りますし、もう少し早い時期にスタメンで起用してみても良かったんじゃないかと思ってしまいますね…。


 また、工藤と中後のダブルボランチが攻撃時に効いていたこと。
 SBのアレックスの攻撃参加が出来ていたこと。
 J1のチーム相手だと守備面の不安の方が出てしまったり、押し込まれて前を向けなくなることが多いですが、こういった試合展開なら2人のダブルボランチもアレックスのSBも心配なく起用できそうです。


 加えて、このような状況ならバイアーノにも期待できることがわかったこと。
 マークが厳しいとどうしても前線で人数をかけられて潰され、非カウンターの起点になってしまうことが多く、かといってオトリになるプレーができるタイプではないですけど、この試合のように相手に警戒されなければバイアーノの良さが出せそうです。
 この日のFC東京バイタルエリアでの守備がちょっと弱く、バイアーノが下がってきても比較的楽に前を向けました。
 前を向けないと良さが出ない選手ですけど、この日のように前を向ければ強さが出ますね。


 このあたりは、J1では厳しかったことももしかしたらJ2ならいい方向に機能するのかなぁと、この試合を見て思いました。
 もっとも今日のFC東京より強いJ2のチームは、たくさんあるんじゃないかなぁと思いますけどね…。
 J1から落ちてくるチームへのマークは厳しいでしょうし、J2では追われる立場になるはずですから、しっかりと弱点は研究してくるでしょうし。
 それに現段階ではどの選手が残ってくれて、どの選手がいなくなるのかもわからないですけどね。



 まぁでも、一番の収穫はなんといってもジェフの勝利なのでしょう。
 江尻監督就任後初勝利…ともいえるけれど、それ以上にジェフにとって久々のリーグ戦での勝利。
 ここまでの苦戦は江尻監督の責任だけではないのだし、逆にこの勝利もまた江尻監督だけが頑張ったわけでもないはずですから。
 もちろんなかなか結果が出ない中で、江尻監督はとても苦しみ、悩みもしたんだと思います。
 そういった意味でも、今シーズン中に1勝でも出来たことは本当に良かったと思います。
 まだ2試合残っていますけどね。



 まぁ、しかし…。
 純粋にFC東京からいろいろと学びたかったんだけどなぁ…(笑)
 それが江尻監督の今後のためになると、真面目に思っていたのですが。
 勝たせてもらった上に、そんなことを言うのは贅沢な話しなのかもしれませんけどね。