微かに見えた可能性?

 神戸対ジェフ戦がキックオフされる前に、残留争いの目下のライバル達は試合を終了。
 14位山形は好調清水に敗れ勝点30のまま。
 15位柏は広島相手に引き分け勝点27。
 2チームを勝点22で追うジェフとしては、神戸に勝利して差を詰めたいところだったのですが、結果は2-2の引き分け。


 この勝点1をどう評価するかは、今後の試合次第でしょう。
 勝点差を詰められなかったと判断するか、なんとか残留の可能性をつなぎとめたと評価するか…。



 この後の試合で勝点を量産することができれば、この勝点1の価値も小さいわけじゃない。
 そして、今後勝点を量産するためには、内容の充実が何よりも重要です。


 ということで、今後の残留争いを測る上でも神戸戦の試合内容の方を見ていきたいと思います。
■工夫のないロングボール
 ジェフは序盤からバイアーノへのロングボールが一辺倒。
 工夫のないボールばかりで、バイアーノも相手に競り勝てず、前節に続き自らの手で悪い流れを作る展開に。
 すると、前半7分にあっさりと失点してしまいます。
 

 1点取られてジェフの選手達が前へ出るようになり、相手は引き気味になったことで、ジェフのボール支配率が増えていきます。
 しかし、最終的にはやっぱりバイアーノへのロングボール。
 例え高い位置で相手からボールを奪ったりボールを拾って中盤で前を向けても、ボールを受ける側が全く動き出さない状況で、攻撃に工夫がなく手詰まりになっていました。
 相手の4×4のディフェンスにきれいにジェフの選手達が吸収され、相手の2ラインを脅かすことができないといった感じです。
 その結果、ボールは持ててもFWへの長いパスを蹴り込むだけになっていました。
ポストプレーの活かし方
 神戸も同じようにFWへのポストを使う機会はありましたが、くさびのパスを出す位置がジェフに比べて高く、ポストプレー後の連動性も明確でした。
 例えばSBがくさびのパスを出すと、ボールを受けたFWが少し下がることで、ジェフのCBを前にひきつけDFラインに凹凸を作り、そこにパスを出したSBがDFライン中に入ってくる…など、FWへのパス1つとってもその後の狙いがはっきりとしていました。
 他にもSHがジェフのDFラインとボランチの間のバイタルエリアに入ってボールを受けようとしたり、ボランチの2人がポストプレーに絡んできたり、攻撃に流動性が感じられました。


 ポストプレーからの攻撃の中で、一番差を感じたのはFWがボールを受けた時の味方ボランチの位置でした。
 神戸の2人の方が位置が高く、ジェフの2人は低いことが多かったですね。
 ジェフの2人もパスをつなげているときは高い位置まで出ていけるのですが、後方からFWへのロングボールが多いこともあって、全体のラインを上げる前に攻撃が終わってしまうことが多いということですね。
 神戸の1点目もボランチの宮本がFWからのポストを受け、SHのパクにパスを出されてやられてしまいました。



 ジェフはバイタルエリアの守備がゆるい部分があり、ここ数試合は相手チームもそこを狙ってきているように感じます。
 1点目の失点もバイタルエリアを自由に使われてやられてしましましたし、逆にバイタルエリアを警戒して簡単にボランチが下がってきてしまうことも多い印象があります。
 ようするに、ボランチが守備のバランスを取れていない…ということですね。
 後半10分の2失点目も、ボランチが下がった前の位置からミドルシュートを決められてしまった形でした。
 やはりボランチの1人に、運動量豊富で守備面で期待できる選手を起用すべきではないかと私は思うのですが…。
ミシェウの走りの質
 ロングボールばかりでボールを持ってもなかなかビルドアップの形が作れないジェフでしたが、そんな中で唯一自由に中盤を動き回り相手の守備ブロックを混乱させていたのがミシェウでした。
 前節の新潟戦ほど後ろを向いてボールをうける回数も多くなく、工夫して中盤を走り回りボールを受けようという意思が感じられました。
 相手の2ボランチの守備が厳しいとわかると、2ボランチの脇にすっとずれてボールを受けようとしたり、比較的守備の緩いサイドに大きく流れてみたり、DFラインがパスの出し所を迷っているとワンタッチでボールを受けてみたり。
 ジェフにも頑張って走れる選手は他にもいるのかもしれませんが、ミシェウには運動量だけでなく走りの質の高さを感じました。
 持ちすぎてボールを失う機会も多かったですけど、どちらかと言えば周りの選手からのフォローが少なく、単独で行かざるを得ないような状況が多かったと思います。
(それでも、もう少し球離れを早くしてほしいと思うシーンもありましたが。)


 特にトップ下の位置から左サイドに流れが有効で(今までのジェフはほとんどサイドを攻めることができていませんでしたしね)、1点目もその形からミシェウがクロスを上げた展開からPKを獲得した形でした。
 バイアーノは前に突進できる状況になれば、いかんなくフィジカルを発揮できるようになり怖さが出てきますね。
 PKをもらうキッカケとなったDFラインとGKのあいだを狙うようなクロスが、バイアーノには合っているのかもしれません。 
 ミシェウは後半の序盤にも左サイドから精度の高いクロスを上げ、バイアーノが惜しくも外してしまう…というシーンを作り出していました。


 しかし、これだけ攻撃にアクセントを作れるのであれば、もう少し早い段階でミシェウを起用しても良かったように思うのですが(ミラー監督時代も含めて)、怪我もありコンディションが良くなかったという問題もあったのでしょうか…。
 試合経験を積んでいけば、連携面も改善していくと思うのですが。
■試合途中からフォーメーションを変更
 後半20分、坂本に代えて太田を投入。
 良太をCBにした3-4-3のフォーメーションにしてきました。


 3バックは一度練習でやっているという話を聞いたことがありましたが、まさか試合途中からやってくるとは思いませんでした。
 しかし、試合は膠着状態でミシェウの個人能力に頼っていた展開だったので、ベンチからの変化をつけたいという思いは納得できるモノだったと思います。



 後半26分、バイアーノに変えて巻を投入してからは3-5-2に。
 ここからの形は興味深かったですね。
 3バックにして中央後方の守備が安定したこともあって、工藤が積極的に相手のバイタルエリアに入っていけるようになりました。
 工藤、ミシェウが巻のポストプレーに絡んで攻撃を作り出せるようになったことで、相手が中央を警戒しサイドも空くようになり、広く開いたサイドからクロスという展開が久々に…本当に久々に何度も見られるようになりました。


 同点弾は左サイドに入った和田の深い位置でのロングスローを巻に合わせて、こぼれ球を工藤がミドルシュートを決めた形でした。
 深い位置からのスローイン自体も久々な気がします。
 これが後半42分のこと。
 最後は一進一退の攻防でしたが、そのまま2-2で試合終了となりました。
■3-5-2に感じた可能性
 先日のジェフリザーブズFC琉球ニコニコ動画で見たのですが、攻撃の狙いはトップチームと同じでとにかく素早くFWへくさびのパスをあてるというものでした。
 しかし、FC琉球が3-5-2ということもあってか、ジェフリザも3-5-2のような感じで、ここが今までのジェフとは大きく違いました。
 2トップのすぐ後ろにトップ下の選手がいることによって、ポストプレーからの連携が非常に簡単に作れていた印象です。
 トップ下の選手が、バイタルエリアでFWからの落としを待ち構える形ですね。
 バイタルエリアでボールを持って前さえ向ければそこからミドルシュート、もう1人のFWにラストパスと、多くの選択肢が作れることになります。
 しかも、2トップにしていることによって、くさびのパスをあてるターゲットも増えることにもなります。

 
 FC琉球戦でのジェフリザは非常に単純だけど、非常にシンプルでわかりやすいサッカーだったと思います。
 山中が退場して1人減ってから一気にFWが孤立してしまったのも、フォーメーションを変えてトップ下に選手がいなくなってしまったからでしょう。


 そして、神戸戦での3-5-2になってからのジェフも同じように、シンプルだけど可能性を感じるサッカーができていたと思います。
 前半も4-5-1で1トップとトップ下の関係はできていましたが、2人だけで攻撃が終わってしまい、連係面を感じることはありませんでした。
 なによりも、攻撃を作るにはトライアングルを作ることが重要ですからね。
 それによって、一気に選択肢が増えていくわけですから。



 ただし、当然3バックにもメリットもあればデメリットもあると思います。
 真っ先に思いつくのは、サイドの裏のスペース。
 この試合でもフォーメーション変更直後、ジェフの右サイドの裏を何度か付かれて、「あわや」というシーンを作られてしまいました。


 その後はなんとか落ち着い対応できていましたが、相手が1点リードしていて相手SHが守備面に重点を置いていたから…という部分を忘れてはいけないと思います。
 かといって、初めにやっていた3-4-3では2人のFWとトップ下の関係は作れませんし…(というかウイングというより3FWという感じでサイドに開いてはいなかったし)。



 ジェフが今後3バックで戦っていくのであれば、サイドのフォローというのが非常に重要になってくるでしょう。
 ジェフの06年前半や広島のように2シャドーにしてサイドバックを見るようにするとか、ボランチがサイドのフォローにまわるとか…。
(広島はボランチの1人を下げて4バックにする形もあるけど、ジェフのボランチ2人ではそれも無理でしょうし…。)
 あるいは、ジェフの06年後半のように、トップ下がサイドの守備に流れるようにするとか。
 神戸戦の後半は、トップ下のミシェウがサイドの守備で頑張っていた印象がありますけどね。



 
 サイドの守備に不安もありますし、ジェフが3バックメインで戦っていく可能性は低いのかもしれません。
 しかし、個人的には3バックにかけてほしい、という気持ちが強いです。
 今のままではなかなか個人技での突破以外、打開策が見つからない状況で、複数の選手が連係した攻撃はほとんど作れていませんでした。
 しかし、神戸戦での3-5-2では中央でのポストプレーだけでなく、サイドからの展開も何度も作れていました。


 そして、何よりも現在の状況を考えれば今のままではまずい、ということ。
 大きな変化をチーム内で作り上げなければ、残留は厳しいと思います。


 神戸戦後半に見せた3-5-2には、それだけの可能性があるのではないかと私は思います。
 もちろん4バックでも相手バイタルエリアにもっとボランチを絡ませるだとか、サイドを突破できる形を作れるようになるなど大きな向上が期待できればそれでも構いません。
 けれども、残念ながら今までのジェフをみていると、このままの形では大きな向上は難しいように思います。
 長期的に見れば現状を続けても少しずつ良くなる可能性があるのかもしれませんが、今はともかく短期間でのチーム改革が必要ですからね。

 

 ともかくオプションで3バックで戦う可能性も含めて、この“可能性”を大事にすべきではないかと私は思います。
 この勝点1を無駄にしないためにも…。