江尻監督「バイタルエリアでの攻略が今日のテーマ」


江尻監督
「最後、ゴールに向かうところまで形ができ始めていると思います。それはこの中断期間の2週間で一生懸命トレーニングした成果が何シーンか出てきているのは、選手がしっかりとやっているからだと思います。ただ、最後ゴールを決めるところに関しては、もっとトレーニングをしていかなければいけないところです。」(ジェフ公式
 確かに新潟戦ではアタッキングエリアまでボールを運べていましたね。
 私は相手の動きの悪さ(というか動きが悪いので全体が引いて守っていたこと)があって、高い位置までボールを運べていた部分が大きいんだとは思いますけど、ともかく結果は同じだと思います。



 ただ、岡田監督もオランダ戦後に「ビルドアップはできている」というような話をしていて、江尻監督の今回のコメントも趣旨は同じだと思うんですけど、少し違和感を感じるんですよね。
 ビルドアップと、最後のプレーを別々に考えていいものなのかどうか。
 ミドルエリアでのボールの運び方と、アタッキングエリアでの仕事は別物なのか…。


 良いビルドアップというのはラストパス(あるいはシュート)を放てる体制まで作れてこそ評価されるものだと思うし、アタッキングエリアを攻略する絵がチーム全体として描けていて、それを実現するためにミドルエリアでのボール回しというのがあるのだと思うのだけど…。
 ただ単純にアタッキングエリアまでボールを運ぶだけではゴールは奪えないわけですから、その2つをまったくの別物に考えるのってどうなんでしょう。
 ビルドアップというのは、最後のゴール形から逆算して作っていくものであり、ゴールを脅かす状況にすらならないのであれば、ビルドアップがうまくいったとは言い難いのではないかと思うのですが。



 実際、新潟戦でのジェフはボールは持てていたけど、ほとんどチームとして有効なボール回し、ビルドアップというのは出来ていなかったと思います。
 相手を揺さぶったり、チーム全体でスペースを作ってそこに早く展開するなんて形もなかった。
 そして、結局前が詰まって、個人技でのドリブル突破しかなくなっていったんだと思います。
 

 オランダ戦での日本代表もそうでしたね。
 中盤でボールは持ててパスはつないでいたけど、相手はそのパス回しにビクともしなかったですから。
 本来はミドルエリアでのパス回しで相手を揺さぶって、薄くなったサイドをつこうという狙いだったはずなのですが、それが通用しなかったということです。
 少なくとも有効なビルドアップとはいえない試合だったでしょう。



バイタルエリアでの攻略というのがひとつの今日のテーマ。ただバイタルを使うということではなく、どこからバイタルを使うのかというトレーニングを今週一週間やってきました。僕らがおいたテーマはサイドからという形、組み合わせを例えばネットバイアーノと巻、ネットバイアーノと谷澤、巻とミシェウ、などと今週かってきた中で、今回組み合わせとしてこの形にしました。彼のコンディションが悪いというわけではなく、チームの戦い方で彼が外れたということだけです。」
 「バイタルエリアの攻略が今日のテーマ」。
 確かに新潟のCB2人は高さがあるから、バイタルエリアを狙うというのは新潟を攻略する上で重要だったのかもしれません…。
 しかし、では前節はどうだったのか。
 前々節はどうだったのか。



 選手起用にしてもそうですが、それぞれ組み合せに良さというものがあるでしょう。
 一方で、誰かを活かすためには、誰かが犠牲にならなければいけない。
 巻を活かすならもっとサイドを深くえぐってからのクロスが必要だし、バアイアーノを活かすにははっきりトップ下にパサータイプを置いた方がいいのだろうし、工藤を活かすにはパートナーにもっと守備で貢献できる選手を置いた方がいいと思うし(新潟戦は守る時間が短かったから良かったけど)、深井を活かすには巻の1トップにして前線にスペースを作ってあげた方がいいのかもしれない。
 どこを選んで、どこを捨てるのか。
 そして、それを決める前にチームとしてどういった方向性のサッカーをするのか、監督がどういったチームを作り上げたいのか。


 今は選手の良さの部分だけ見ている感じがするのだけれど、一本筋を通さなければいけません。
 例えば磐田戦の前半では、深井がサイドをアップダウンして、クロスを上げる役割に徹していました。
 それだけでは深井のもう1つの良さである「ゴール前での思い切りのいいシュート」が犠牲になってしまうのだけど、その分サイドをえぐれていたからクロスを上げる機会は増えていました。
 深井の「思い切りのいいシュート」を評価している人にとっては物足りないかもしれませんが(私も好きですけどね)、チーム全体で考えると磐田戦での前半の深井は素晴らしい貢献をしていたと思います。
 1つの歯車になっていたということですね。



 今のジェフは勝手に選手達が動き、その場その場で自分自身の良さを出し相手を攻略しようとしているだけ。
 最低限のディシプリンしか感じず、チームとしてどのように相手を崩すのか見えてこないわけです。


 だから、その中で「今日のテーマ」を出されても、臨機応変というイメージはなく手探りで戦っているだけにしか見えないわけです。
 ベースの戦い方が作れていないのに、さらにやり方を変えようとしているわけですから。
 新潟戦でのバイアーノからミシェウの交代も、試合から分析した上ではわかったとしても、それ以上にもっと重要なチーム全体の戦い方から考えるとまったくわからない。
 「中盤を厚くする」という狙いなのでしょうが、それまで数戦のチームとしての狙いはバイアーノの突破力を活かす形(というより少なくとも今のところはバイアーノ頼り)だったわけですから。




 ようするに、チームとしての軸をどう考えているのか。
 戦術的に相手チームを見てコロコロと変えてたくなる気持ちもわかるのだけど、その前に自分のチームの戦い方をはっきりした上でやっていかないと、いつまでたってもチームとしての形は作れません。


 まぁ、監督が変わってもずっとこの問題は続いているので、チームの軸になれるような選手がいない…という問題も大きいのかもしれませんが。
 でも、もう泣き言なんかもいっていられない状況なのだから、なんとかしてチームの形を作っていくしかないわけです。