前線と中盤をいとも簡単に分断されて

 コンディションの回復もあって、先週の3試合よりは良くなったのではないかとは思います。
 でも、コンディションが戻ってきたからこそ気になるのが、戦術面だとかチーム全体での動き。
 モチベーションなども含めて、すべてが良くならなければ相手に勝てないのがジェフの現状だと思います。
 そういった意味で、もっと頑張らなければいけませんね…。


■巻の復活?と工藤の前進
 横浜FMは4-1-2-3のフォーメーションでスタート。
 1ボランチ気味に松田を置く形でした。
 ジェフはいつも通り4-4-2で、巻のバイアーノの2トップ。
 ボランチは中後と工藤でした。


 この組み合せがジェフにとってはうまくはまり、前半はまずまずだったと思います。
 相手が1ボランチ気味なので、2トップをターゲットにしたパスが比較的楽に通ります。
 本来は松田あたりとCBでジェフのFWをサンドしたかったと思うのですが、ボランチが1人しかいないで両方のFWを見ていられないといった感じだったのではないでしょうか。


 しかも、ボランチから上がってくる工藤がそこに絡んでいきます。
 4-1-2-3だから、工藤は「2」さえうまくフリーランニングで振り払えれば、フリーになれる。
 ポストに入った巻と、工藤の前進でゲームの流れをつかんでいきました。



 やはり今のジェフは、ボランチに工藤を置いたチーム作りをしていきたいところではないかと改めて思いました。
 前節の中後と下村だと、攻撃時に前への動きとゲームを作る力の部分で足りないところがあると感じます。
 もちろん工藤にも足りない部分はありますけど、そこは周りも補って戦っていくのが今のメンバーではベストなのかなぁと。


 また、横浜FM戦では巻が戻ってきたのかな?とも感じました。
 「復活」とまで言っていいのかはわかりませんが、この試合では巻らしいポストプレー時のパスが戻ってきました。
 前半4分のPKを得るバイアーノのプレーも巻がボールを奪って、そこからシンプルにスルーパスを出し、相手の裏を付いたことによって生まれたものでした。
 


 ここ数試合(練習試合も含めて)、巻は少し焦っていたようにも見えました。
 変に一発で局面を打開するようなプレーを狙いすぎて、ボールを失う機会が増えていたように思います。
 コンディションの問題もあるのでしょうが、その一番の要因はバイアーノの加入ではないでしょうか。
 バイアーノが強引に行くタイプだから、負けじと巻もそういったプレーを狙おうとし過ぎてしまったのではないかと思います。


 巻は周りに影響を受けながら、成長してきた選手です。
 オシム監督の指導やハースを見てポストプレーを学び、岡田監督の日本代表で裏を突くプレーが増え、ミラー監督になってカウンターサッカーが始まるとシュートへの意識が高まっていきました。
 だから、今回のバイアーノ加入にも刺激を受けるところが当然あったんじゃないかと思います。
 しかし、今までの巻を見ると、悪い部分で影響を受けてしまっていたのかなと。
 最終的にどう成長していくのかはわかりませんけど、横浜FM戦で見る限りは一度吹っ切れて“良い巻”に少し戻ったんじゃないかと感じました。


■フォーメーションの噛み合い
 フォーメーションの組み合せは、守備面でもやりやすさを感じました。
 相手の3トップをこちらの4バックが見て、中盤の前2人をボランチの2人が見る。
 相手のSBをSHが見て、ボランチには巻かバイアーノがつく。
 これで、がっちりと噛み合うことになります。
 前半の横浜FMは運動量も少なかったこともあって、このフォーメーションの噛み合いでしっかりと守備面で先手を取れていたと思います。


 ただ、ジェフの方も守備は出来てもボールを簡単に失うことが多く、そこまで良い展開にはなりませんでした。
 やはりバイアーノの前に急ぎすぎる傾向は改めて気になります。
 あれでは攻撃が単発になり、厚みのある攻撃がなかなか出来ていきません。
 個人で突破する意欲は良いと思うのだけれど、チーム全体を考えて動けないというか、判断力の部分に問題がある。
 まぁ、それでも結果的に巻のポストプレーに対するオトリにはなってくれましたけど、相手もサイドの守備はしっかりしていてサイド攻撃がなかなかうまくいきませんでしたから、結局攻撃は巻と工藤だけ(バイアーノはオトリですから)になってしまう…と。
 これではボールを失う回数が増えてしまうのも当然ではないかと思います。



 守備面で不安を感じたのが、相手SBへのマークの遅れ。
 特に逆サイドから振られた展開で守備が遅れることが多かったですね。


 しかし、これはサイドの守備問題よりも、中央の守備に問題があったように思います。
 DFラインは相手の3枚を見て1人がフォローにつくから、相手SBを見れません。
 よって必ずジェフのSHが相手SBを見たいところなのですが、中盤の中央の守備がしっかりしていない。
 ボランチの2人が一方のサイドに偏ってしまう傾向があった上に、相手の「2」の攻撃力に押し込まれていたため、SHは中に絞ってサポートしざるを得なかったんだたと思います。
 ボランチが相手に押し込まれるから、全体のラインを下げる要因になってしまい、徐々に相手のボール支配率も高まっていってしまいました。



 攻撃面では期待も多い中後と工藤のダブルボランチですが、やはり守備面ではもう一歩ですね。
 このあたり今後も理想と現実のギャップと戦っていかなければいけないのでしょう…。


■ダブルボランチに苦しむ
 PKによって1点を先制された横浜FMですが、後半になって反撃を開始してきます。
 4-4-2にして攻撃面では坂田を前線に投入し、前線の動きが出来てきました。
 この坂田の左右に動く動きと、トップ下(狩野と途中から兵藤)がサイドに流れる動きをジェフの守備陣はうまくとらえることができませんでした。
 また、前半からジェフがSBをうまく捕まえることが出来なかったため、そのサイドの選手を高く保つようにして、攻撃の起点にしてきました。


 この変更はジェフの攻撃の芽を摘むことにもなります。
 前半のターゲットだった巻とバイアーノの前にダブルボランチを敷くことで、くさびのパスを通さずロングボールが来てもしっかりと2人で挟むようにしてきます。
 

 ジェフとしては前半から中央で攻撃を作る形に頼っていたので、これによって攻撃のパターンがなくなってしまいます。
 本来ならば中央で攻撃を作れない分、サイドで攻撃を作りたいところだったのですが、相手FWの一角やトップ下が流れてきて押し込まれてしまい攻撃に転じることができずにいました。


■守備が堅くなったと思ったところで…
 後半20分、ジェフはバイアーノに変えて下村を投入。
 4-1-4-1で下村が相手のトップ下を見るようになります。
 名古屋戦でもトリプルボランチで対応したジェフですが、あの時は2トップのままで左SHには選手を置かない変則的な4-4-2でした。
 それによってジェフの左SBと相手の右サイドのところで簡単に一対一位置を作られてしまいやられてしまったわけですが、今回はしっかりとバランスの整ったトリプルボランチでした。


 下村の起用により攻撃面はともかく、守備はある程度安定してきました。
 まぁ、それまで本当に防戦一方だったわけですから、攻撃面うんぬんをいっていられる状況ではなかったわけですが。



 そういった展開だっただけに、その直後の櫛野のミスはいただけなかったですね…。
 なんでもない相手後方からのロングボールに対して目測を誤り、飛び出しすぎて裏を取られて失点。
 照明が目に入ったとのことですが、非常にもったいないミスでした。


 これで1-1。
 試合は終盤撃ち合いになりますが、最後のところでパスが合わず引き分けのまま試合終了となります。


■前線と中盤を簡単に分断される
 どちらのチームにとっても、勝ちたかった試合展開だったかなぁと思います。
 どちらかといえば前半はジェフがペースを保てていて、後半は完全に横浜FMペースでした。


 横浜FMは山瀬も不在で坂田、兵藤もベンチ。
 前半は動きも少なく、ちょっと下位のジェフを下に見ているように感じました。
 ジェフとしては相手の甘さを付きたかったのですが結局攻撃は単発になることが多く、攻略しきれませんでした。
 後半は逆に横浜FMが勝ち越しまで持って行きたかったところでしょう。


 両者、最後のところで決め手を欠く試合だったと思います。
 横浜FMは山瀬が帰ってくればその部分で向上するのでしょうが、ジェフはそういった選手が初めからいないですからね…。
 


 さて、気になるのは試合前にも話した通り、「次へのきざし」を見つけられたかどうかなのですが…非常に微妙ですね(笑)
 確かに前半はここ4試合の中では良かったと思います。
 コンディションも良く運動量で相手を上回り、このチームの中心となるべき選手である工藤や巻も効果的にプレーすることができていたと思います。


 しかし、その良さも後半の横浜FMに簡単にせき止められてしまいました。
 相手にやられたことは非常に単純で、ダブルボランチにして中盤と前線の間にブロックを作り遮断したこと。
 これだけで、ジェフの攻撃は機能を停止してしまいました。



 振り返って見れば江尻監督就任直後まずまずの試合が出来た磐田戦も、相手のボランチの一角が若い選手だったということもあり、スクリーンプレーがうまくいっておらずポストへのボールが楽に入っていました。
 特に後半は巻がポストを受けて、中盤に預けて、バイアーノが走っていくという形がある程度機能していたと思います。
 今回の横浜FM戦前半も同じ形だったと言えるのではないでしょうか。


 しかし、本来そのエリアは相手の守備が一番厳しくなるはず。
 ジェフが良かったというより相手に問題があったんじゃないかと思います。
 横浜FMはダブルボランチにして、磐田はボランチに鈴木を投入してすぐに安定したように、簡単にそこでゲームを作れることは本来あまりないことだと思います。
 この試合でより「ボランチが踏ん張ればジェフの攻撃は遮断できる」ということがはっきりしてしまったことによって、今後は警戒はより強まるとと思いますし今後はそう簡単に中央でチャンスを作るのは難しいのではないでしょうか。




 そうなってくると、やはり出来れば真中でなくサイドでゲームを作れるようにしたい。
 これに関してはアレックスが復帰すれば少しは良くなる…と思いたいのですが、実際には柏戦序盤(退場者が出る前まで)も左サイドを使ったゲームメイクというのは全く作れておらず、ロングボール一辺倒だったわけでアレックスが不在だからどうとかいうレベルの問題ではないんだと思います。


 あるいはトップ下に選手を置いて、簡単に分断されてしまう前線と中盤の間に、1つポイントを作る…とか。
 もちろんその分FWは少なくなってしましますけど、現段階では「チームとして2トップを活かしている」とは言えず、ただ単純に「2トップに攻撃を任せているだけ」なロングボールが多いわけだから、チーム全体を考えれば2トップにこだわる必要性は今のところないと感じます。
 その2トップ任せの攻撃も少しずつ相手に読まれてきていますしね。
 中沢はバイアーノを研究していた感じではなかったけれど(笑)



 …結局のところ今のままでは攻撃の形は作れていないわけですから、どうにか改善しないといけない。
 前線に頼り切ったサッカーをどうにか変えていかないと、現状を打破するには至らないのではないかと思います。


 前半に少しいい内容のゲームが出来てしまったからこそ、逆にここで気を引き締めなければいけないのではないかと思います。
 後半になって横浜FMが簡単にジェフの良かった部分を止めてしまったという現実を、チームとして反省し克服していくことが必要になってくるのではないでしょうか。


 1週間あいだが空きますから、何とかしてチームで攻撃を作る形を構築していってほしいと思います。




 後からちょこちょこ修正しました(笑)
 申し訳ないですけど、明日も更新お休みします。