プレスをかけるためにもリスクを冒せ!

 ジェフが実施している4-1-2-3、あるいは4-2-1-3においてのプレスのかけ方の基本がこんな感じです。

 まず巻が前線で守備をしてパスコースを限定する。
 ボールホルダー(CB)と片方のボランチの間に入って、相手がもう一方のボランチにパスを出させる仕向けるような守備をします。
 そして、ボールホルダーからそのボランチに縦パスが出された瞬間に、後方からジェフのMFがチェックにいく。
(この時チェックにいくMFは工藤や大輔など、体を寄せる守備が上手い選手が多い。もう1人のMFとなるアレックスあたりは巻の限定した方向にいる相手ボランチを見ていますね。)
 このチェックでボールを奪えれば大成功。
 実際にCBからボランチへのパスを予測して、ボールをカットするなんてシーンも増えてきました。
 しかし、ボールをカットできなくても、ボールを受けたボランチに前を向かせなければそれでOK。
 後ろしか向けないボランチは、CBに戻すかSBに開くしかない。


 もしそこでSBにパスを出したら、MFと同じようにウイングが少し遅れてチェックに行く。
 ここで奪えたら成功で、奪えなくとも前を向かせないようにする。
 次に悪い体制で相手CB、GKに質の低いバックパスが出たら、そこをチェイシング。
 相手CB、GKがロングボールを蹴ってきたら、ボスナーが跳ね返す…というのが最終的な狙いだと思います。



 どちらも少し相手から離れておいて、パスを受ける瞬間を狙うというのがポイント。
 こういった“狙いすましたチェック”を実行するためには相手の先を読んだ守備というのが重要で、このプレスの場合巻が相手のパスコースを限定することによって、相手の動きを予測しやすくしているわけです。



 実際にはまだそこまでうまくいっていないところもあります。
 そこまで…というのはどこまでかというと、相手ボランチのところでパスを奪う、ロングボールを蹴らせる…といったところが、まだもう少し。
(相手ボランチのところにアタックに行ってもボールを奪いきれないのは選手の質…個人のボール奪取能力による部分も大きいと思うので、チームからすれば仕方のない部分もあるんじゃないかと思いますけどね。)
 チェイスには行けているから、やられはしません。
 けれどボールを奪うことも出来ていないことが多いから、均衡状態が続くことが多いですね。
 パスカットの回数は増えていますけれど、パスカットは簡単なボールの奪い方とは言えないですから、チーム戦術としてやれるようなモノではないと思います。
 1つの狙いとしてはありでしょうけどね。



 ただし、そこまでの形がうまく作れていることは十分に誇れるものだと思いますし、このプレスを作り上げたミラー監督の手腕も評価されるべきだと思います。
 今後もっとプレスでボールを奪えるようになってくれれば、より高いレベルのサッカーが見れるんじゃないでしょうか。
 今のプレスも100%のモノではないでと思いますが、逆に言えばまだノビシロはあるのでしょうし、何よりもどんなサッカーを目差しているのか目差すべき方向性が感じられることは素晴らしいことだと思います。



 …けれども、2トップにした場合はこのプレスが出来ていません。
 もともとこのプレスの肝は、中盤での数的優位。
 このプレス一番の狙いは、相手のボランチ付近で3対2となる数的優位を作り出すことで成り立っているわけです。
 けれども、2トップにすると4-3-1-2にしろ、4-4-2にしろ、数的優位は作れ出せません。
 DFの前にボランチを並べ人数で守ろうとしているだけで、前へのプレスがいけていない。
 当然守備に関する狙いも曖昧になって、FWの2人も相手DFとボランチの間をふらふらするだけになっています。



 確かにリスクがあるのもわかります。
 上の図を見てもわかるようにMFが飛び出す形になるから、中盤の底は1ボランチに近い状態になります。
 そうすると相手にボランチを飛ばしてそこを狙われる可能性も出てくるでしょう。
 1ボランチ候補である下村にせよ、大輔にせよ、中後にせよ、凄まじいカバーリング能力と運動量を持っているわけではないですしね。


 けれども、怖がっていても仕方ないはずです。
 というのも、前へのプレスを仕掛けないと、相手のボランチやDFラインが余裕を持ってプレーが出来ます。
 そうすると、どうしても相手にゲームを作られてしまうから、全体が下がらざるを得なくなる。
 全体が下がっても守りきれるだけの守備が出来ていればアリなのかも知れませんが、今のジェフはそういった術を持ち合わせていません




 結局、完璧な戦術・完璧なサッカーなどありえないわけですから、どこかに必ず不安な部分が出てくるはずです。
 だから、何かを成し遂げたければリスクを冒すしかないわけです。
 問題はどういったサッカーを選択するのか、どういったリスクを冒すのかということになりますが、今のジェフにおいてはそれが「前からのプレス」なはずです。


 それが正しい選択なのかどうか、ジェフというチームに合っているかどうかはまだわかりませんが、その選択が正しいのかどうかを見極めるためにも、まずはその道を信じて1つの方向性を究めることが重要でしょう。
 それが出来ないのであればそれ以前の問題です。
 まずは自分達を信じ、1つの道を歩んで欲しい。
 結論を出すのは、その後になるはずではないでしょうか。