スペイン風4-1-2-3への期待と課題

 磐田戦での4-1-2-3はイングランド風というよりは、どちらかと言えばスペイン風のシステムだったと思います。
 スペイン風のシステム…というよりは考え方が、そちらに近いという意味で。

 図で見るとわかりやすいと思うのですが、磐田戦で実施した4-1-2-3は小さなトライアングルを作りやすいフォーメーションです。
 CF(巻)―ウイング(谷澤・深井)−MF(工藤・アレックス)でも、MFの2人(工藤とアレックス)―CF(巻)でも、ウイング(谷澤・深井)−MF(工藤・アレックス)―SB(坂本・青木良太)でも、ピッチ上のどの部分でも小さいトライアングルを比較的簡単に作ることの出来るシステムです。
 それによって今まで以上にパスをつなぐサッカーが出来ていました。
 トライアングルを作ってボールホルダーに2つ以上の選択肢を与えてあげる…というのはパスをつなぐサッカーの基礎と言っていいでしょう。


 その中で、ビルドアップの起点となっていたのが巻でした。
 CFというゴールに最も近いポジションで相手に競り勝てていたことで、そこからの攻撃が作れるようになりました。
 今までは単発の攻撃しか出来ていませんでしたが、巻のポストプレーをようやく活かせるようになったことで攻撃の選択肢が増したことになります。


 しかし、問題はそこからの崩しの形。
 最後の部分でのプレーの質。
 このあたりを高めていかなければゴールはなかなか遠いわけですけれども、これに関してはそう簡単に解決できるものではないでしょう。
 今はできる部分…ようするに、組織的なビルドアップの形だとか、チーム全体での守備面などの向上を目差していくしかないと思います。



 それと先日も言いましたが、ウイングの2人(谷澤・深井)をMF(工藤・アレックス)とSB(坂本・良太)で押し上げられたことも大きかった。
 フォローが少なくどうしても単独でのドリブルが多くなってしまっていた2人ですが、周りのサポートを受けたことによって深い位置まで攻撃参加することが出来ていました。


 加えてサイドにおける守備面でも、いい影響が出ていました。
 谷澤と深井はどうしても守備に課題があり、守備に戻ることが遅れることが多かったのですが(まぁ、昨年のSHは仕事が多かったので仕方のない部分もあったのですが)、MF(工藤・アレックス)がサイドの守備をケアしてくれることによって、2人が多少守備に遅れても数的不利が作られにくくなりました。
 サイドで数的不利を作られてしまう問題に関しては長らく解消できなかった問題ですし、そこからサイドだけでなく全体の守備が崩壊してきた試合もありましたから、1つの可能性として興味深いものが見れたと思います。





 ただ、課題がないわけでもなく。
 1つは単純にスタミナ切れなどで相手に押し込まれ選手達が押し上げられなくなれば、小さなトライアングルも出来なくなってしまう…ということ。
 例えばジェフは押し込まれたりスタミナに問題が出てくると、バロメーターとしてSBが上がっていかなくなってしまいますけど、そうなると当然ウイング―MF―SBのトライアングルは広くなってしまい、このシステムの良さは出なくなってしまうことになります。


 もう1つの課題は、中盤の底の守備。
 磐田戦では後半からラインが下がってしまったこともあって、中盤にスペースが出来てしまいました。
 このシステムで間延びしてしまうと、1ボランチの脇がスカスカになってしまう。
 MFのどちらかが戻ってダブルボランチ気味に出来れば良かったのでしょうが、上記のようにMFの2人はサイドもカバーしなければならず、広範囲を守らされていました。
 磐田は後半から両SHを高い位置に貼り付けて、ジェフのMFをサイドに広げたような感じになっていました。
 そうなると、1ボランチが守備面で孤立してしまいます。


 磐田の中盤から1ボランチの横を通すFWへのパスがどんどん決まるようになり、今度はジェフが苦しい格好に。
 前半はジェフのポストプレーが機能していましたが、押し込まれてからは磐田のFWにボールを持たれる時間が増え、そこで攻撃のリズムを作られてしまいました。
 


 このあたりの攻撃の課題と、守備の課題。
 スタミナに関しては何度も言ってきましたけれど、MFを広げられて1ボランチを孤立させようと相手が狙ってきたときにどうするか。
 これが、今後も4-1-2-3を続けていくのであれば、ポイントになるのかなぁと思います。


 それと、磐田戦ではほとんどの場面で相手に競り勝っていた巻ですけれども、この戦い方を続けるのであれば次はもっと警戒されるでしょう。
 その時に、巻以外のビルドアップの起点をどこに作るのかが、重要になってくるのかもしれません。



 課題もありますけれど、個人的にはこのシステムを熟成させていって欲しいと思っています。
 そろそろシステムを変えることで対応していくのではなく、選手達の判断で臨機応変に戦っていくべきなのではないかと私は思うのです。
 そして、システム…というか戦い方に関しては、ある程度固定することによって選手達の連携を深めていくことが重要なのではないかと。


 個人的にはこの4-1-2-3のシステムに、大きな可能性を感じています。
 今のメンバーで戦っていくことを考えれば、かなりフィットしているのではないでしょうか。



(…ただ、このシステムで戦うんならレイナウド、ぴったりフィットしていたと思うんだけどなぁ。)