『リバプール流』だからといって成功するわけではない 

 なんだか開幕前のネット上での評判から感じたのですが、ジェフサポ以外のサッカーファンの方々はジェフが『リバプール流』をやっているから面白くなるじゃないかとか欧州流戦術だから活躍するんじゃないかとか、そういった見方をされていることが多いのかなぁと思うのですよね。
 私もミラー監督が来た頃は、そういった思いもありました。
 ただ、半年間ミラー監督を見てきた経験からすると、そこまで特別なわけでもないんじゃないかとなぁと。
 別にミラー監督を批判するつもりでは全然ないんですけどね。
 


 ミラー監督はかなり忠実に『リバプールベニテス監督)流のサッカー』をやろうとしているんだと思います。
 もちろん戦力的には不足していますから、完全にリバプールの真似が出来るわけでなく、壁が見付かる度に何度も“アジャスト”してきましたけども。
 それ自体は問題のあることではないでしょう。


 ただ、重要なのが『リバプール流のサッカー』って、本当にそこまですんごいモノなのかということ。
 そこまで画期的で斬新で見たこともないような特別なサッカーをやっているかと言うと、私はそうではないのではないかと。
 むしろ現在のトレンドに近いスタイルのサッカーをやっているなんじゃでしょうか。


 別にリバプールが弱いだとか、ベニテス監督の戦術がダメだとか言っているわけではありません。
 この前のマンU戦も見ましたけど、非常にしっかりとしたサッカーをしているなという印象を受けましたし、実際に結果も出ています。
 けれど、その戦術をジェフでそのままやったからといって、ジェフで上手くいくかどうかはわからない。
 というか、ジェフで『リバプール流のサッカー』をやったからといって“リバプールのサッカー”がそのまま実現できてしまったとしたら、ジェフの選手みんなリバプールで通用することになってしまう(笑)
 そういうものでしょう。
 戦術というのは実現できる選手がいて、初めて成り立つものだと思いますし。




 むしろ欧州での主流なサッカーをやっているということは、Jリーグ関係者の中でもある程度は研究されていて、チームによっては(全てではないにせよ)取り入れている部分も当然あるはずですから、実は新しさというものはそこまで見当たらないんじゃないでしょうか。
 もちろんディテールの部分でミラー監督から学ぶところもあるかもしれませんが、そういった部分というのは指導者なら誰しもが違いを持っているものだと思いますし。
 ですから、『リバプール流のサッカー』というだけで、ライバルとの大きな差がつけられるとはなかなか思えないんですよね。



 じゃあ、ミラー監督がダメなのかと言うとそういった話しではまったくなく。
 むしろライバルとの差をつけられるとしたら、戦術ではなくミラー監督自身の能力によるものなんじゃないかと。
 昨シーズンなんとかジェフが盛り返し奇跡的な残留を達成できたのは、終盤に穴も見えてしまった戦術の部分ではなく、ミラー監督による細やかな体調管理だとかモチベーションコントロールなどにあったのではないかと思います。
 ジェフにとってはそちらの方がリバプール戦術なんかよりも、非常に大きいものだったのではないでしょうか。
(ちなみに坂本によれば、オシム監督も非常に細かい管理を気にする人だったとか。)
 そして、体調管理の部分やモチベーションコントロール能力の部分でも、今のところ“リバプール流の独自の何か”というものを感じるところはあまりないように思います。
 もちろん選手達など関係者の仲には「リバプールのコーチが言うんだから間違っていないんだろう」といった、暗示的な部分もあったようですが…(笑)


 しかし、そういった部分も時が経つにつれて、徐々に薄れていくのではないでしょうか。
 でも、それも決して悪いことではなくむしろ自然な流れであり、ミラー監督自身にとってもいつまでも「リバプールの元コーチ」という見られ方ばかりをされるのはあまりいいことでもないように思うのです。
 ようするに、リバプールもいいですけど、本来はミラー監督はミラー監督として評価されて然るべきなんじゃないかなぁということです。