危機に面してようやく動き出したF1チーム

 ホンダの広報などでF1チームに携わった小倉茂徳氏のコラムです。


このマーチの役員として、営業面とレースチームを統括していたのが、マックス・モズレーFIA会長だった。当時のモズレー氏は、F1チームの団体であるF1CA(現在のF1の商業面を統括するフォーミュラワングループの前身団体だが、当時の機能は参戦チームの利益を代表するもので、現在のFOTAのようなもの)の事務局長でもあった。
モズレー会長は、その経験からプライベートチームの立場を理解し、パワートレーンを共通化しても、コスト削減と競技の面白さの両立になることも知っていた。しかも、現在のFIAには、元ロータスのテクニカルディレクターで現在のF1マシンの空力技術や世界中の電子制御サスペンション技術の元を築いたピーター・ライトや、元PIリサーチやジャガーF1の代表で、エレクトロニクス技術にも明るいトニー・パーネルら専門の技術者を集めたシンクタンクがあり、そこで科学的な考察や検証を元にレギュレーション案が練られている。モズレー会長はこうした結果を踏まえて、チーム側や自動車メーカーにさまざまな提案をしている。決して一時の思い付きや、過去の経験だけによる案だけではないのだ。 (CarWatch
 ようやくモズレー会長側を擁護するような意見が出て来てよかった…。
 今回の件で何かと「チームは悪くない、モズレーとエクレストンが悪い」なんて構図にする人が多かったけど、私はそうは思いません。


 確かに突拍子のない意見もあります。
 FIA側に問題がないわけではないでしょう。
 しかし、それも今まで参戦費用の高騰に関して、「FIA側が悪い」とばかり言って実際には真面目な交渉すらしてこなかったチーム側にも問題があるはずです。
 だからFIA側が代替案を出すしかない。
 けれど、それをチーム側が突っぱねる(費用抑えること=開発費の減少であり、チーム側は勝つためにも開発は続けたいものだからそれを飲んでこなかった)といった展開が、今回の金融危機の問題の前から何度もあったわけで。


 それになにより、無駄に豪華なあんなに贅沢三昧をしておいて、参戦費用を下げろと言われてもねぇ…。 
 パドック裏のモーターホームとか、凄いですもんね。
 もう立派な近代建設物。
 これを数日で建てて、レースが終わったら数日で撤去して次のGPの準備をなければならないから、スタッフも無駄に苦労するそうですが…。


実際F1の高コスト体質は、自動車メーカーにとってナンセンスなものになっている。エンジンでせいぜい20馬力ほどパワーを上げるのに、数十億円をかける。しかし、その技術はほとんど市販車に還元できない特殊なもの。空力にしても大部分の技術はF1に特化しており、スーパースポーツカーを製造する以外、その技術は市販車に直接転用できない。それでも競争の中で莫大なコストだけがかかっている。
長期的な視野に立てば、人材の育成やブランドイメージ構築になるかもしれないが、参戦費用が年間数百億円という異常な現状では、短期の利益を求める株主や投資家から「F1など止めろ」と言われるのは明白だ。
そこで、FIAはF1に環境対策技術開発の導入を打ち出した。環境対策技術開発を導入することで、社内のレース部門が存続でき、活動予算を取りやすくし、参戦を認めてもらえる理由にするためだ。
当初自動車メーカーとチームはこれに反対した。ところが、昨年からはF1参戦自動車メーカーの団体が、FIAとともに環境対策技術開発をF1に積極的に採り入れると、姿勢を転換した。危機に直面したことで、メーカーもチームもやっとFIAの真意を理解し始めた。
 ようするに、参戦費用の問題に対してお尻を叩いていたのは実のところFIA側であって、ようやく今回の金融危機でチーム側に火がついたってところでしょう。



 まぁ、チーム側が開発費を下げづらかったというのはわかる。
 このワークス時代、勝たなければ即撤退もみえてくる厳しい状況。
 プライベターなら参戦することに意義があるともならなくはないでしょうが、ワークスチームは勝って知名度を上げ、広告費用をバックしなければ本社の首脳も株主も納得させることは出来ないわけですからね。



 しかし。
 例えばマクラーレンのモーターホーム通称“銀閣寺”なんかは建設費30億円とも50億円ともいわれているレベル。
 開発費用以外でも贅沢三昧は行われていたわけで、それはいくらなんでも…ってところでしょう。
 例えVIPを招待しなければいけないにしたってねぇ。