反省会'08その7『選手の個別評価 FW編』

深井正樹
 今期途中から加入し素晴らしい活躍を見せた深井ですが、シーズン終盤はその強引なドリブルが相手に読まれ厳しい状況になってしまいました。
 サイドで起用されても縦への突破という形が少なく、中に入っていくばかりで攻撃の種類が限られていたのが問題だったように思います。
 しかも、守備に関しても戻りが遅れたり、戻ってからの守備が雑だったりと、課題が多かったですね。
 前へのプレスは期待できたのですが。
 それらを考えてくと、深井が生きるポジションというのは本来中央のように思います。
 中央からゴリゴリとドリブルしていって強烈なシュートを放つというパターン。
 そういった武器を持っているのは選手として大きいのですが、逆にそれ以外の基礎的な部分。
 守備だとか、パスをつなぐ際の視野だとか、そういった細かな部分に課題があるように思います。
 そのあたりがプロ入りしてから、なかなかレギュラーをつかめてこなかったところにつながっているんじゃないでしょうか。
 とはいえ、シーズン途中から加入し、素晴らしい活躍を見せてくれた深井の貢献度というのは非常に高かったと思います。
 ジェフには少ない前向きでさっぱりとした性格の兄貴タイプで、チームの盛り上げ役としても大きな役割を担ってくれました。
新居辰基
 今期一番苦しみ、一番悩んだのが新居でしょうね。
 シーズン終盤に入ってもサイドで使われた場面がありましたが、厳しい出来でした。
 頑張って守備には戻るのですが、相手への寄せが甘く、体の入れ方も下手。
 守備が上手くないのでアフターチャージばかりが目立つようになりましたね。
 サイドでの守備に関しては素人っぽさすら感じ、押し込まれるから攻撃にも転じられず、かといってパスをつなげるタイプでもなく、SHとしての新居に限界すら感じました。
 では、なぜそれでも監督が使ったのかというというと、他にSHがいなかったというところが大きいのでしょう。
 深井の項でも言ったように、深井もまた中央の方が活きる選手。
 新居も中でプレーした方が活きるタイプですが、パスがつなげずカウンターサッカーになると、強引なドリブルがある分だけ深井の方が活きてきます。
 新居はあくまでもパスを受けて活きる選手ですが、パサータイプがジェフにはいない。
 工藤も守備とビルドアップに一杯一杯で、なかなかゴール前にはパスを供給できていなかったですからね。
 結局のところ、深井も新居もSHではないように思います。
 本来はFW、最悪でもトップ下(新居はトップ下でも厳しいように思うけど)。
 サカマガには「起用法に不満があり移籍画策か?」なんて書かれていますが、それも状況を考えると仕方がないように思います。
 アマル監督が“オシム戦術”の枠から外れて4バックが相手でも2トップを維持したのも、新居の良さを活かしたかったからでしょう。
 にも関わらず「もっと使え」だとか新居の処遇に関して文句を言っていたサポも多かったのですが。
 実際問題として1トップが世界の主流となっている中、新居のようなクラシックなちびっ子ストライカーというのはなかなか使いづらいんだと思いますけどね。
 それにしても根本とレイナウドを放出し深井、新居もSHとしては微妙ですから、来期の補強ポイントとしてSHは重要だと思うのですがほとんど話しが出てきませんね…。
巻誠一郎 
 工藤と谷澤も活躍したし、池田、青木良も頑張ったけれど、今期のMVPは誰か?と考えると、やっぱり巻じゃないかと思います。
 使ってもらえないのにも関わらず代表に何度も呼ばれた上にそこで何度も負傷し、それでも強いメンタルでくじけず、最後までチームのために戦ってくれました。
 思うに、今までの巻は遠慮していたところがあったのでしょう。
 加入した頃からジェフは阿部のチームと言われ、阿部がいなくなっても佐藤や羽生がチームを引っ張ろうとし、日本での知名度とは裏腹に巻の立場は微妙でした。
 また、大津→駒大(ユニバ代表)→ジェフ→日本代表と、実はエリートコースを進んできた巻ですから、周りには巻以上にうまい選手がたくさんいたはずです。
 それを本人もわかっているからこそ、周りを叱咤するキャラにはなれなかったのではないかと。
 けれど、今年初めに選手が大量に流出しメンバーが入れ替わったことで、巻はいよいよその遠慮を取っ払いリーダーとしてジェフを引っ張っていくようになっていきました。
 今までのように背中で「付いて来い」と言うだけではなく、時には仲間と喧嘩し、時に監督とも意見を戦わせるようにまでなりました。
 もともと賢く戦術理解度も高い選手ですし、経験も十分にある上、ジェフでの在籍期間も長い選手。
 ようやく壁を破って、本当の意味でのエースになってくれたように思います。
 特に最終節の巻は怖いぐらいの迫力で戦ってくれました。
 あそこまで試合に対して本気になって、顔を真っ赤にしながら周りの選手をを鼓舞するリーダーが、ようやくジェフにも現れてくれたのかなぁと思います。
 個人成績を見てもチームの得点数が少ない中で11得点。
 代表選出によって怪我が多くコンディションに苦しんだ状況でこの結果を出せたのは、純粋に立派だと思います。
 最終節の試合後、「辛いシーズンだった」と話していた巻。
 厳しい中でもジェフに残り、ジェフを愛してくれている巻のためにも、来期はもっといいシーズンにしたいですね。