エンジン統一の話しが出てきた経緯について
F1というのは自由競争こそが一番の売りであると思っているし、それがなくなるというのならシャシーにせよエンジンにせよ私は反対ですね。
マシンもドライバーも最高の物が集まってくるからこそ面白いのであって、デザイナーなど(モータースポーツ界に限らず)世界的に見ても素晴らしい頭脳が集まっているのも、レギュレーションの中で自由にマシンを創造できるからでしょう。
しかし、その無制限に開発が出来るF1に、宣伝のためならお金に糸目をつけない自動車業界が、近年こぞって参加してきてしまいました。
これによって、開発競争=投資競争のようになってしまいました。
しっかりと宣伝効果を得るためにも、ライバルに対して一歩でも先に開発をしたい。
そのためには他者よりも、投資をしなければいけないということになってしまった。
(もっともトップクラスの投資をしても結果が出せないホンダや一時期のトヨタがいたり、逆に低予算の…といっても年間350億円程度だが…ルノーがチャンピオンに輝いたりもしたけれど。)
そこで開発を制限するためにあれこれFIAはやってきたのだけれど(風洞、エアロパーツ、テスト…の制限など)完全なる打開策は出ず。
「打開策を出せー」とチーム側はいうのだけれど、「でももちろん開発は止めないからね」というまぁ難しい状況に。
ようするにF1全体がジレンマに陥ってしまったということになります。
そんな時代の中で、F1から撤退せざるを得なかったのがスーパーアグリ。
ワークス全盛時代におけるスーパーアグリの撤退は、苦しいプライベターチームの象徴であると報じられました。
そして、やってきた金融危機。
「打開策をー」とか言いながらもそこまで深刻な状況ではなかった(それでもスポンサーや親会社の顔色も考えアピールだけはしていた)ワークスチームも、これにはさすがに焦り始めます。
今まで「FIAが打開案を出す→チームが反発」という一方的な流れしかなかったのですが、ここに来てチーム側も含めて打開案を共に考える状況になったそうです。
先日の会議ではフィアットの会長でありFOTAの会長でもあるルカ・ディ・モンテゼモーロが参加し、FIAとの“打開案”に関して合意に至ったとか。
ちなみにこの会議、「初めてチームが一致団結した歴史的な出来事である」と報じたところもあったそうで、今までいかに“打開案”に対してチーム側が無頓着で真剣に話し合うつもりがなかったのかが窺えます。
その前後で出てきたのが、エンジン統一の話し。
でも、実際には当然この案は通らない見込みのようですけどね。
『フェラーリチームがメルセデスエンジンを積んで勝つ』なんてことすれば、それこそ自動車メーカーは出て行ってしまうでしょう(笑)
もう来期からマシンに付属するエアロパーツ禁止は決まっているのだから、いっそシーズン中の開発は禁止にすればいいのに…とも思うんだけど、それをやっちゃうと今度はチャンピオンシップが一方的な展開になってつまらなくなっちゃうかもしれないですしねぇ。
シーズン中も開発しながら「あのチームが巻き返してきた」とか、「開発スピードが遅くなった」とかでチームの勢力が均衡していくのが面白いんだろうし。
F1がつまらなくなると、集客的にもスポンサー的にも大問題ですしねぇ。
やっぱり難しい問題ですね。
ちなみにはてなブックマークなどで、「エンジンなどが統一されればドライバーの純粋な勝負が見れるかも」という期待の声もあるそうですけど、それ無理ですから…。
下位カテゴリーやアメリカを見てもわかるように、例えマシンがある程度統一されたところでチームのチューニング技術だけでマシンの性能というのは大きく変わってしまう。
だから、同じシャシー、同じエンジンでもチームの差が出てきてしまうわけで。
下位カテゴリーでもそうなのだからF1という技術力ではトップであるカテゴリーにおいて、「完全なるイコールコンディション」というのはありえないでしょ。
それこそあれやこれやと可能な限りの調整、変更、開発をしてくるはずですよ。
ってかなんでF1ネタは盛り上がらないはてブで、珍しくこんなにレスポンスがあるんだろうと思ったんだけど、どうやらヤフーのトピックスに出てたみたいですね。
流れからすればエンジン統一のネタ自体は、大した話しではないはずなんだけど…。
それよりもウィリアムズのRBSやルノーのING(06年ーアジア杯のスポンサーでもありアジア進出にも躍起になっていた)の損失の方が心配なのではないかと。
両社共に金融系の企業で、チームにとって大きなスポンサーでした。
この両社が共にF1を去るとなれば、それこそ大問題になるでしょうね…。