北京五輪から見る“対世界”での日本サッカーの課題
うーん…悔しい。
昨日の試合に関してはオランダ相手だったわけだし、よくやった方ではないかと思います。
失点もPKのみですし。
オランダもサッカーの内容は、さほど良くはなかったですけどね。
でもやっぱり日本のサッカーは、芝がいい状態の方がやりやすそうですね。
天津よりはボールが走っていましたから、内容もよくなっていました。
まぁ、それでもボコボコでしたけど。
今大会を通して、日本サッカーが世界と戦う上での課題が少しずつ見えてきたんじゃないかと思います。
それだけでも1つの収穫でしょう。
山本監督やジーコ監督よりはしっかりとしたチームができていたわけで、ある程度まともな日本チームがどこまで世界とやれるかというのが見れたわけですからね。
まぁ、その結果が惨敗だったわけですが…。
厳しいグループだったとはいえ、それもきちんと受け止めなければいけませんね。
ということで、細かく課題を見ていきたいと思います。
・世界の大舞台での経験が不足しているということ
ナイジェリアの鋭いカウンター、オランダの悪いなりに勝ってしまうサッカー、アメリカの勝負に徹底したプレー。
これらは本当の勝負の場でなくては、対峙できないものだと思います。
特にナイジェリアのカウンターの鋭さなんて、日本の選手達は驚いたんじゃないでしょうか。
日本のサッカーは勝負の場で、世界の国となかなか対戦することができません。
これはフル代表もクラブも同じこと。
しかも、この五輪代表チームは何を血迷ったのか、中韓なんかと定期戦を組まされちゃって…(笑)
ただでさえ世界の国と対戦する機会が少ないのに、ますますそういった機会を失ってしまいました。
・メンタルの弱さ、リーダーの不在
昨日の試合もそうでしたが、点を取られると落ち込んでしまったり最後の数分になって焦って攻めだしたりと、メンタルの弱さを露呈してしまいました。
選手達のコメントを見ても、本田だけでなく「なんだかなぁ」といった感じでした。
また、練習を見にいった時もそうでしたが、やはり声が出ていない。
一番声が出ていたのがGKの2人でした。
チームをまとめ上げ積極的に強烈な意思表示が出せる選手がいないから、自分達のペースでサッカーができず、同じペースになってしまうのではないかと思います。
これらも日本チームにはよくあること。
フル代表でもしっかりとした意思表示の出来る選手なんて、ほんの数人ですからね。
・最後のプレーの質の問題
シュートだけでなくラストパス、クロス、仕掛けるドリブル…などのゴール前に直接絡む最後のプレーの質が課題として現れたと思います。
しかし、これに関しても日本サッカーを象徴した形ではないでしょうか。
Jリーグが外国人選手に頼っているというだけでなく、フル代表も最後の質には大きな課題があります。
だって、何年になりますかね。
「日本代表の最大の武器はセットプレー!」と言われ続けて。
2004年くらいか、もっと前からじゃないですか?
その声が一番強かったのが、ドイツW杯前ですね(笑)
最大の武器というか、得点するならセットプレーしかないだろうとすら言われてしました。
これも大きな問題なんじゃないかと思います。
しかし、逆に良い面も見られたんじゃないかと思います。
運動量やポゼッションの部分では世界相手でもやれることがわかったし、意外にもフィジカル面や空中戦の部分でもある程度戦えることがわかりました。
数年前からJFAの技術委員会は若年層の育成段階から、フィジカルの向上を最重要課題として取り上げてきていたので、その成果が出たのかもしれません。
しかし、逆にテクニカルな選手が少ない年代になってしまったのかな…という思いもあります。
このあたりは今後どのように比重を置くべきなのか、非常に難しい問題ですね。
しかし、もちろんポゼッションしても運動量で勝っていても、点を取れなければ意味がありません。
このチームもまたフル代表同様に「セットプレーが最大の武器」になってしまいましたね…。
さて、どうやってこれから日本は世界相手に点を取るべきなのか…。
ありきたりですが、私は結局『数的優位を作る』しかないんじゃないかと思います。
1対1で勝てなければ、2対1で勝つしかない…と。
これはオシム監督の考えでもあるのですが、実はオシム監督就任前から技術委員会の方では考えられていた方針なんですよね。
特に若年層の代表チームで。
…というか会長が独断で監督を決めてしまった、フル代表だけ方針が違ったという説が有力だけど。
この北京五輪チームもそのテーマはあったはずなのだけど、なかなか『数的優位』が作れませんでした。
相手が退いてしまって『堅守速攻』の体力温存カウンターサッカーをやってきたため、攻撃に人数をかけても2対1になかなかできなかったし、そこからボールを奪われてカウンターの形を作られ、結局守備でも1対1の場面を多く作られてしまいました。
対戦国3チームは共に同じような、良く言えば大人な…悪く言えばコンサバティブなサッカーをしてきたと思います。
これも今大会を分析する上で大きなポイントではないかと思います。
でも、じゃあ日本がその『堅守速攻』サッカーをして世界に勝てるかというと、難しいでしょう。
日本が実力的に上となるアジアレベルなら、その方が確実に結果は出るかもしれない。
カウンターでも1対1で勝てるからチャンスが作れるし、体格でも勝っているか同等レベルだから退いた守備もある程度機能するでしょう。
ようするに、ジーコ監督の頃の代表のような感じ…といったらイメージしやすいかもしれませんね。
けれど、アジアレベルならいいけれど、世界に勝とうとするのであればそれでは難しいと思います。
何度も言っているように、カウンターを狙うにしても強力なFWなどがいるわけではないし、守備面でもベタ引きのサッカーをしたとしても世界の大型フォワードを止められるとは思えません。
これは非常に難しいテーマです。
『数的優位を作る』のが一番のテーマだったオシム監督時代のジェフも、『堅守速攻』のサッカーには非常に弱かった。
頑張って「オトリになる動き」や「片方のサイドでためてサイドチェンジ」などを行ってスペースを作ろうとはするんだけど、相手もわかっているからそう簡単にはスペースを作らせない。
ようするに『堅守速攻』相手だと、単純に人数をかけただけでは、『数的優位』はなかなかできないんですよね。
北京代表チームはその点で若干工夫が足りなかったのかな、とも思います。
狙っていた効果的なサイドチェンジも、なかなか本番では見られませんでしたし。
それに『数的優位』を作るには、どうしても攻撃に人数をかけるからカウンターを受ける怖さもある。
特にアメリカ戦はその怖さが出てしまって、前にいけなかったんだと思います。
初戦ということで、選手達が先に失点することを恐れてしまったのではないでしょうか。
まぁ、ホント…。世界の壁は厚いですよね。
個人的な意見ではどの試合も、相手との実力差は僅差だったと思います。
しかし、その僅差、最後の差が非常に厚い。
もちろんもう少しうまくやれば、ちょっとはまともな結果になったのではないかとは思いますが。
ともかくすぐに課題に対する答えは出ません。
けれど、きちんとこの課題に立ち向かわなければいけないんじゃないでしょうか。
言い訳はなんとでも出来ます。
確かにOAを使えていれば、『数的優位』を作らなくてもある程度チャンスは作れたかもしれない。
けれども、それが真の意味での問題解決に繋がるわけではありません。
監督に関しても、欧州の実力派監督を連れてくればもっと良くなったかもしれない。
けれど、じゃあ実際にそういった監督を連れてこれるかというと、現実としては難しいでしょう。
ここ数年の中韓などを見ても、フル代表との兼任だとかその繋がりで欧州の監督がやっている場合はあるけど、五輪チーム単独では実力派監督を呼べるほど魅力的ではないはずです。
そして、オシム監督の兼任は多分オシム監督自身が嫌がっただろうし、何よりフル代表と五輪代表の活動日程が被っていたという大きな障害がありました。
だからといって、オシム監督が他にコーチを連れてくるとは思えないし(日本人指導者育成を重要視していましたから)、他に日本人監督で明らかに実力が上だというフリーの指導者がいたわけでもない。
(有力な日本人監督がいない、少ないってのも大きな課題なのかもしれませんが。)
そう考えていくと小手先での変化などは考えられたとしても、大きな変化は期待できなかったんじゃないでしょうか。
ともかく、現実を見なきゃいけません。
極東の日本では、なかなか本気の世界とは戦えません。
クラブチームなんて、代表チーム以上にほとんどのクラブが井の中の蛙です。
そんな中で今大会は日本サッカーとして貴重な経験を積んだはずなのだから、課題を直視し前に向かって進むべきでしょう。
今度の世界との対戦は、CWCを除けば2年後の南アフリカとなるはずです(下手をしなければ予選敗退はないと思うし)。
それまでに日本サッカー界として、どのような問題解決法を見出せるのかが重要になってきますね。