ミラー監督が見せた攻撃的スタイル

 まずは試合の流れから。


 試合序盤。
 予想通りFC東京がボールを持ち、ジェフがカウンターを仕掛ける展開でした。
 FC東京のペースだったと言えるんじゃないでしょうか。
 中盤が良く動くサッカーをしていたFC東京に対し、ジェフはロングボールからのカウンターしかありませんでした。


 しかし、前半7分。
 後方からのフィードにレイナウドが抜け出し、それを今野がPA内で倒してしまいます。
 ちょっと厳しい判定のようにも見えましたが、今野が倒したのは確かだろうし決定機と判断だれてもおかしくない状況だったと思います。


 決定機の「レッド+PK」ルールに関しては、何度か取り上げているので今回は省略ー。





 この試合、レイナウドはこのシーンだけでなく、何度も積極的に裏を狙う効果的な動きをしていました。
 守備力は相変わらずですが、キープ力もありましたしキレのある動きを見せていたと思います。
 巻が帰ってきて、気合が入っていたのかな。
 

 ただし、決定機を外す場面が多かったのは残念。
 今野に倒されて得たPKも、コースが甘くGKに止められてしまいます。


 



 相手が1人少なくなったことでジェフが盛り返しますが、それも短い時間だけ。
 FC東京は冷静にその時間帯を乗り切ると、1人少ないにもかかわらず中盤の豊富な運動量でジェフを押し込みます。
 梶山や羽生がフリーになる場面が多く、そこからチャンスを作っていきます。
 なぜ、相手の中盤が1人多い状況だったのにも関わらず、あそこまで自由にやられてしまったんでしょうねぇ、うーん…。
 


 なんとか最後はやられずに我慢していたジェフですが、前半25分にボスナーの不用意な横パスを平山に奪われ、今度は池田がPA内でファール。
 PKとなりますが、そこはPKストッパーの立石。素晴らしい反応でセーブ。
 立石はこの試合でもいい出来でしたね。


 しかし、せっかく立石が止めてくれたのに、その後のCKでやられてしまいます。
 ファーの佐原をどフリーにしてしまい、ヘディングで決められて失点。
 FC東京はこのCKで真ん中に人が集まってキッカーが蹴る直前に一斉に散らばる動きをしていたのですが、それにまんまとやられてしまいました。
 というか、あそこまで単純にやられるのも珍しい(笑)
 なんだか質の悪いテレビゲームを見ていたかのようでした。
 佐原のマーカー役は猛省して欲しいと思います。





 後半になってようやく目覚めたジェフ。
 攻撃時のサイドバックの位置が明らかに上がり、全体的に前に行く姿勢を見せます。
 後半12分に巻、22分には谷澤を入れたことで、よりジェフの動きが活性化。


 巻が入ったことで前線で動き回りターゲットになる選手が出来たし、谷澤を入れたことでサイドを広く使えるようになりました。
 前半は新居が左サイドの位置に入り、そこから中に入ってくるプレーが多かったのですが、その分ピッチを狭く使うことになってしまい窮屈なサッカーになっていました。
 しかし、谷澤はシンプルにサイド攻撃を狙っていたので、攻撃に動きが出てきました。
 城福監督はすぐにそこをケアして、谷澤を止めにかかってきましたけどね。


 そして後半24分、佐原が負傷中でピッチに出ている状態ではありましたが、ようやくジェフが得点を決めて追いつきます。
 新居のクロスからレイナウドのヘッド。
 新居はクロスの質も高いですね。
 もう少し縦へのドリブルとビルドアップ時の判断やショートパスの質を高めてくれれば、サイドでも幅が広がるのですが…。


 その後はFC東京が選手交代もあって攻め込んできますが、ジェフの守備陣も集中しておりそのまま試合終了。
 1-1の引き分けで終りました。









 ジェフとしては最低限の結果と言っていいのではないでしょうか。
 確かにFC東京は素晴らしい試合をしていました。
 1人少ないにもかかわらず、運動量でジェフに勝るほどよく動き回るサッカー。
 悔しいですが、サッカーの質は相手が一枚上手なのでしょう。
 …今はね(笑)


 しかし、
・相手が1人少なってすぐに守備にまわってしまったこと
・PKを貰ったのに決められなかったこと
・不用意なミスで相手にPKを与えてしまったこと
・せっかく立石がPKを止めてくれたのに、その後のCKで簡単にやられてしまったこと
 などなど、反省すべき点は山ほどあると思います。
 しかも、高度な部分での反省点ならともかく、多くの問題は基礎的な部分ですからね。
 そういう意味で、取りこぼしの多かった試合のように思います。







 特に相手が1人少ないのにもかかわらず、守備的なサッカーをしていたことは非常に残念に思います。
 試合の流れからしてもあそこは攻撃的に行って、先に点を取るべきではなかったでしょうか。
 なんとも消極的な選択だったように思います。


 この試合ではスタメンで戸田と斉藤をボランチで起用しました。
 下村をトップ下に上げて、ジェラードのように使うのかな?とも思ったのですが、そこまで攻撃的な形ではなかったですね。
 なので、巻、谷澤を温存して後半勝負だったのかな?ならば前半守備的だったのもある程度は仕方ないのかな?とも思ったのですが…。


アレックス・ミラー監督
「前半を抑えていたわけではない。さきほどもいったように、前半はボールをキープできずに、簡単に、ショートパスをつなごうとしたが、カットされてしまった。後半はそれができるようになった。しっかりとつないで、そこからいろいろな動きが出るようになった。中断期間中の合宿などでやったことがうまくだせなかった気がする。」
 この発言が本当なのであれば、そうではないのかなぁ…と。
  






 まぁしかし、収穫もありましたね。
 巻、新居、レイナウドを同時に起用できたこと(とはいえ、新居はサイドでの起用だったので、本来の良さはそこまで出せていないと思うけど)。
 そして、それに谷澤が絡み、工藤、下村をダブルボランチに置く、攻撃的なスタイルを実施しまずまず機能したのを見れたのは良かったですね。
 もちろん相手が疲れていたのも大きかったのでしょうが。


 けれど、収穫があったとしてもそれをどう活かすかは別問題。
 収穫した実を食べずに放置しておくのか、生でそのまま食べるのか、粉々にしてジャムにするのか…(笑)
 非常に攻撃的だったのでそのまま食べるのはちょっと良くないかもしれませんし、生で食べるにしても試合の途中からのオプションという形に納まるのかもしれませんし…。


 ミラー監督がこの攻撃スタイルを今後どう調理するのか、気になりますね。






 ただ、少し気になるのは、もしミラー監督が欧州風にアウェイを意識して、あえて守備的なサッカーを狙っていたのであれば私は心配ですね。
 クゼ監督もそうでしたけどね。
 もっともその頃は守りきろうと思っても守備の基礎が出来ていなかったから、まったく意味はなかったですけど(笑)


 
 中田英寿が「ヨーロッパのチームはアウェイを意識しすぎてしまう、その点では日本の方がいい」というようなことを言っていたことがあります。
 確かに欧州ではアウェイを意識し過ぎて自滅するようなチームもありますし、その点では日本の方が勝っているかもしれません。


 アウェイでは多くの敵サポーター、ピッチや環境問題、移動距離、審判など、様々な問題が待ち構えているのは事実です。
 しかし、だからといって勝てないと決まったわけではない。
 むしろホームの方が、ホーム側の選手にプレッシャーがかかるという問題だってあります。


 そう考えていくと、アウェイだからといって過剰に意識、守備的に行く姿勢はあまり歓迎したくありません。
 欧州ほど日本にホームアドバンテージがないからかもしれないけれど、どちらにしてももう少しアウェイの意識に関しては考え直して欲しいなと私は思います。






 さて、こんなもんで。
 あと細かな話しですけど、新居の悪癖が目立つようになってきましたね。
 確かに審判は細かく笛を吹く方で見ていたほうもイライラしてしまいますが、しかし退場者が1人出ていたことを考えればメリットが大きかったのはこっちのほう。
 もう少し審判への冷静な対応を身に付けて欲しいですね。


 その点では去年の方が良かったなぁ。
 少しずつ成長していると思っていたので、はっきり言って残念です。
 


関連リンク:
ジェフ千葉 1-1 FC東京(ジェフ公式サイト)
アレックス・ミラー監督記者会見コメント(J'sGOAL)
試合後の各選手コメント(J'sGOAL)
城福浩監督記者会見コメント(J'sGOAL)