オシム監督が本当に求めるもの


脳こうそくで倒れ、リハビリ中の日本代表前監督のイビチャ・オシム氏(66)に、日本協会がユースから下の世代の責任者への就任を要請することが24日、分かった。
 ベテランの監督が引退して若手を育成するというのは良くあること。
 トップチームでは、どうしても体力的な問題もあるしプレッシャーもある。
 特にオシム監督の場合、再発の恐れもある脳梗塞で倒れられたのだから、このまま表舞台から身を引く可能性も十分あるだろうし、それをドクターと本人が十分に話し合って決めるのであれば、周りは何も言えないでしょう。









 また、オシム監督が『子供を指導したい』と言ったというのも事実なんでしょうし、『日本に貢献したい』という思いもあるんじゃないかと思います。
 加えてオシム監督には「自分の体調のせいでJFAに迷惑をかけてしまった」という気持ちも少なからずあるんじゃないでしょうか。
 だから、川淵氏が何かしらのポジションを提示すれば、簡単には断れないんじゃないかと思います。



 一方、川淵氏としてはオシム監督という世界的にも有名で日本のファンからも根強い人気がある方を、このまま放って置く手はないでしょうね。
 日本サッカー界のためにもなるし、拾い手のない病気明けの監督に仕事場をプレゼントすることになる(実際はそんなことないんだけどね)。
 このまま懐に治められれば、それだけで評価は急上昇でしょう。
 誰が日本に連れてきたのかも忘れて…ね(笑)


 







 けれど、日本サッカー界にとってはどうなんでしょう。
 このような世界的な大物がユースを見て、バランスを崩さないのでしょうか。
 それが非常に心配です。
 

 岡田監督はますますやりづらくなると思いますし(選手選考を見る限り2人の選手の好みは大きく違うようだし)、各ユース年代の監督だってやりづらいでしょう。
 例えば反町監督U-23を見て、そのすぐ上のポジションにオシム監督がいるとなると、選手はどちらの顔色を見るんでしょうね。






 しかも、オシム監督がJFAの内部にいる限り何かある度にマスコミはコメントを求めるでしょうし、“オシム待望論”だって絶対に出てくることでしょう。 
(川淵氏はジーコ監督以降、何かにかけて代表にプレッシャーをかけようとしているように見えます。それが意図的であれば、わざとプレッシャーをかけるためにオシム監督を協会に置いておきたいんでしょうか。)













 そして、何よりオシム監督自身がそれで幸せなのかな?というのが一番心配する点です。
 『子供を指導したい』と言ったのは、正確には『直に選手と触れ合って(短期的ではなく)じっくりとサッカーを教えたい』ということなんじゃないかと思います。



 指導の方向性をどうするとか他の監督に口を出すとか、そういったGM、総監督的仕事ではなく、何よりも現場が大好きな方ですから。
 だからスタジアムに行くのも大好きだし、代表監督になってもちょくちょくジェフの練習も見に来てくれたんだと思います。



 それを考えるとユース年代のGM、総監督というのは、オシム監督が本当に求めるところとはだいぶ違うんじゃないかと私は思います。








 現場復帰が無理なのであれば、JFAとは独立した“オシムアカデミー”みたいなものを作って、そこで静かに若手を育てるのが一番なのかな…なんて思います。
 けれど、それだとJFAアカデミーとモロに被る。
 しかもJFAアカデミーはフランスの息がかかっているわけで(というか無理矢理JFAが息をかけた感じだけど)、今さらオシム監督をそこに入れるのは困難でしょう。





 ともかく、オシム監督が指導したい、JFAがそれをサポートをしたいというのであれば、プレッシャーもマスコミもない静かな環境を整えてあげてほしいと思います。
 たぶん今のままの体制では難しいでしょうから、大幅な変化が求められるのではないかと思いますが。







 なにせ、単純に考えて前日本代表監督を務めていた現日本代表監督より実績が(たぶん影響力も)上の監督を、どんな形であれ下に置こうって言ってるんですからね。
 それは思っているほど、簡単なことではないんじゃないでしょうか。