経営分析法で見る各クラブの経営評価07 ジェフ編
分析方法などについては、その1、その2、その3をどうぞ。
最後にジェフについて、見て行きたいと思います。
■収入と支出
収入、支出共に増えていますね。
05年 06年
営業収入 2722 2887
(広告料) 1279 1316
(入場料) 439 564
(分配金) 426 366
(その他) 578 641
営業費用 2548 2752
(事業費) 2191 2489
(人件費) −− 1436
(管理費) 357 263
営業利益 174 135
経常利益 160 128
純利益 ▲128 88
(単位:百万円)
その中で、総収入に対する広告料の割合がかなり大きいものになっています。
小口も含めてスポンサーが目に見えて増えていることはいいことですし、何より黒字決算を出していることは誇れることです。
ジェフもある程度は親会社に頼っているところがありますが、ジェフ以上に親会社に頼っているチームでも赤字を出しているところはたくさんいますからね。
加えて数年前までは親会社の補填だけで、10億円以上もの額を年間に受け取っていたという噂もあります。
詳しい金額に関しては定かではありませんが、05年に減資を行ったということもありますし、親会社からの独立が少しずつ進んでいるものと思われます。
減資に関しては木村元彦さんが反対していたけど、ほとんどのJクラブにおいて親会社からの独立というものは大きな目標であり、チーム運営を考えてもメリットの大きいことです。
しかし、一方で親会社からの完全独立は、サポコミでも言っていましたがこの数字を見ても難しいものだということが解ります。
広告料のすべてが親会社頼みというわけではないですが、親会社の関連企業も未だに多いですからね。
ジェフは総収入の約45%が広告料。
収入のほぼ半分をスポンサーに頼っている一方で、入場料収入は全体の約20%にも達しません。
しかし、フクアリのキャパを考えると、これ以上の入場収入に関しての伸びは厳しいでしょう。
フクアリのキャパは19781人と公表されてはいますが、実際には17200人程度とのこと。
そして、去年、今年を通じて平均集客人数はリーグ戦で13500人程度。
ほぼ集客率にして80%。
浦和も集客率は同程度ですし、ここからの20%はかなり厳しい道のりだと思います。
気候や開催曜日、キックオフの時間などにも影響されますし、集客率100%というのは不可能な目標です。
唯一、入場料収入で伸びシロがあるのはナビスコ杯の予選です。
ただし、ナビスコ杯予選は平日開催が多いということもあり、全チームが苦戦しているマーケットです。
ジェフは頑張っている方でしょう。
入場料収入で伸びシロがない分、どうしてもスポンサーや親会社に頼る部分が増えてしまいます。
入場者が限られれば当然、グッズ販売での収入も伸びが減っていってしまいます。
そうなってくると、ますますサポーターの声は届かなくなるのも当然…と言う話しになっても仕方がないのかもしれません。
なお、フクアリへの完全移転元年となった06年は05年に比べて、入場料収入が増えています。
しかし、その分事業費の支出も増えています。
「フクアリのほうが臨海に比べて使用料が高い」というのはチームも認めているところなので、多分そのあたりで経費がかさんだのではないでしょうか。
また、「ジェフの年俸は安い」なんて言われ続けてきましたが、他チームと大差のないことがはっきりしました。
Jリーグの平均とほぼ同等の数字になっています。
■資本面について
ここはザクっと。
05年 06年
総資産 646 751
総負債 385 404
純資産 260 347
資本金 100 100
05年と06年を比べると、総負債、純資産ともに大きくなっています。
負債が大きくなると聞くと心配になってしまいますが、利益は出ているのですから資本額も大きくなるのは当然だと考えていいでしょう。
■経営分析法
総資本営業利益率と総資本経常利益率はともに減少しています。
05年 06年
総資本営業利益率 26.9 18.0
総資本経常利益率 24.8 17.0
総資本対自己資本比率 40.2 46.2
総資本回転率 4.21 3.84
これは営業利益にして約4000万円、経常利益にして約3000万円下がったこともあるのですが、先ほど行ったように利益が出ていれば総資産も増えるのでそちらの方が影響が大きいかと思います。
営業利益、経常利益が下がったとはいえ、総収入は1億円以上増えていますので、大きな問題はないと思います。
自己資本比率が上がっていることでもわかるように、自己資本の割合は増えています。
先ほど総負債、純資産が共に増えたといいましたが、純資産の方が増えた割り合いが大きいということですね。
総資本回転率は1回転すればいいといわれている中で4回転前後もしているのですから、総資産に対して大きな収入を出しているということになります。
総資本営業利益率と総資本経常利益率は10%以上だと優秀、総資本対自己資本比率も30%以上あれば健全であるといわれているので、分析法からすれば非常に優秀な企業と見ていいと思います。
■ジェフのこれから
少ないデータを分析しただけなので迂闊なことはいえませんが、今後入場料収入が伸びにくくなることは確かだと思います。
それに伴いグッズ収入もあまり増えないのではないかと思います。そんな中で多くの人にグッズを買ってもらうのではなく、同じ顧客に複数のグッズを買ってもらうために、新商品の積極的な開発やMIZUNOからKAPPAへ移ったことは素晴らしい策だと思います。
広告料収入と資本的な部分を見ると、今のジェフは半分以上を親会社とスポンサーに頼っていることになるのではないでしょうか。
入場料収入などが伸びないことを考えれば仕方がないのですが、悪影響もあると思います。
例えば社長がサポコミで今期の目標に「リーグ優勝」を掲げましたが、これもサポーターに言ったというよりスポンサーに言わざるをえなかったのではないかと思います。
サポーターに言う目標とスポンサーに言う目標が違ったら、それこそ大問題になります。
現実的な目標ではなかったと思いますが、イビチャ・オシム監督も指摘しているように「日本人はなんでも1位を目差す」のが美徳だと考えられているところがあり、特にサッカーを詳しく知らないスポンサーに対してはそう言うしかなかったのでしょう。
他のチームを見ても、「(今年は変革の年だから)上位○チームを目指す」という話をしたフロントはあまり聞いたことがありません(欧州リーグのように優勝以外のカップ戦枠がないのも影響があると思うけど)。
「リーグ優勝を目差す」か、「降格だけは逃れる」という目標ばかりであって、特に後者はJ1昇格して間もないチームでしか聞かれません。
一方、降格したチームは皆同じように「1年でJ1復帰」を掲げますが、こちらも現実的ではないことの方が多いように感じます。これもスポンサーへの配慮でしょう。
現場の監督や選手が違う目標を言うのはよくあることですけど、フロントにはフロントへの見えないプレッシャーがあるということです。
こういった問題を回避し、地に足をついたチーム強化、経営をするためには、小口でもスポンサーを増やしていくしかないのではないかと思います。
スポンサーを増やして、1つ1つのスポンサー(あるいは親会社)の影響力を下げていく。
これにより、1つのスポンサーが何らかの事情で撤退となっても、ジェフが一気に傾く可能性は低くなります。
そういう意味でUNITEDパートナーズなどは大切にしていきたいところです。
他に収入を伸ばすところが少ないという点でも、こういったスポンサー募集活動は大きな意味を持ってくると思います。
収入が増えないのであれば、コストを削減すればいいという考え方もあるかもしれません。
しかし、そういった行為はジェフのような小さな組織ではリスクが大きすぎると思います。
コストを減らすことばかりを考えていると、収入まで減る可能性が出てきます。
例えば昨年度に比べてコストを200万円減らし収入を100万円減らせば結果だけ見るといい方向に進んだように見えますけど、ますますジェフというチームの規模が小さくなってしまうことになります。
大企業ならばそれでもいいのかもしれませんが、今、ジェフが選択すべき方向はそちらではないでしょう。
例えコストが若干増えても新たなチャレンジをして、少しずつ規模を大きくしていくべきです。
経営面に関しては、いい方向に進んでいると思います。
あえてサポーターの話しをするのなら、もっとフロントに文句を言いたいクラブをサポートしたいのであれば、ナビスコ予選にも頑張って足を運ぶことではないでしょうか(笑)
今年のリーグ戦の平均がだいたい13500人なのに対し、ナビスコ予選はたった7000人とちょっと。
日曜日の開催もあったのに、ほぼ半分しかスタジアムが埋まっていません(まぁ今年は天候も悪かったですけど)。
もっともナビスコ予選3試合が満員になっただけでは、あまり変わらないかもしれませんけど。