経営分析法で見る各クラブの経営評価07 その3

4.支出に対する人件費の割合
 人件費を分析する上でもっともポピュラーな分析方法が「労働分配率」だと思います。


 労働分配率 = 人件費 ÷ 粗利益


 しかし、粗利益とは「売上総収入」(営業収入)から「売上原価」を引いたものなのですが、各業種ごとに「売上原価」というのはまちまちで今回のようなクラブ経営においての「売上原価」の定義というがはっきりしません。
(普通に考えればサービス業のように「人件費」=「売上原価」なのかもしれませんが…。)
 そこで、もっと単純に「総支出対人件費比率」を計算してみたいと思います。


 総支出対人件費比率 = 人件費 ÷ 総支出 ×100


  総支出対人件費比率
鹿島   44.2
浦和   36.5
大宮   49.5
千葉   52.3
FC東京  48.0
川崎   55.5
横浜FM  49.0
甲府   50.5
新潟   43.7
清水   38.2
磐田   57.7
名古屋  56.5
京都   50.6
G大阪   52.1
C大阪   49.6
広島   51.1
福岡   46.2
大分   39.9


札幌   51.6
仙台   47.0
山形   59.8
水戸   41.7
山形   30.3
柏    63.2
東京V   51.2
横浜FC  43.7
湘南   49.7
神戸   50.4
徳島   35.5
愛媛   37.8
鳥栖   45.8

 総支出に対して人件費は30%くらいに抑えておきたいと言われいます。
 そう考えると少し高めです。


 しかし、先ほども言ったように、クラブ経営での人件費は「売上原価」と言っていいのかもしれませんから、これくらいの割合でも仕方がないのかもしれません。
 特に人件費の中でもいわゆる補強費だったりとか、選手、監督の年俸だけを取り上げて「売上原価」と考えるのが理想的なのかもしれませんね。
 今のデータでは人件費にはチームスタッフの人件費や移籍金忘却費も含むと書かれていますので、今回発表された人件費をまるまる「売上原価」として考えるのはちょっと違うのかもしれませんが。


 …ということで、もっと細かなデータをください(笑)


 なお、この計算だとプレミアリーグなどでは60%〜70%になっているんだとか。
 移籍金をどう計算するのか、チームスタッフの人件費はどこで計上したのかにもよりますけど、それを考えればJリーグは低めかなと思います。
 まぁ、規模が違いますぎるので、直接比べるのはどうかなぁと思いますが。




 このデータも1つの目安ですね。
 例えば、浦和と清水は同じくらいの値が出ましたけど、単純に人件費だけを見ると浦和が倍以上。
 よって浦和は他の部分での支出が多過ぎるとも分析できるし、清水が人件費をかなり低く抑えていると読み解くことも出来るかもしれません。
 ただし、浦和は他の部分でのデータも優秀。清水は残念ながら利益の方はあまり出ていません。
 利益至上主義という発想は嫌いですけど、健全な経営はどちらかというと浦和の方に軍配が上がると思います。




5.開かれたJリーグ
 ある程度、健全な経営を出来ていればそれでいいと思います。
 もともとスポーツクラブの経営なんて、そんなものでしょう。



 親会社からの補填という悪い面ばかりに目を向けるのもどうでしょうか。
 確かに親会社からの独立は素晴らしいことですし、広義のスポンサーなしでやっていけるのが最大の理想です。


 けれども、どこの世界のどのスポーツを見渡したって、現代スポーツとスポンサーというものは切っても切れない関係になっています。
 逆にいえば、世間の注目を浴びているからこそ、スポンサーというものはつくのです。




 親会社からの独立を目差すのなら、まずはそこからかもしれません。
 親会社関連以外のスポンサーをつけることです。


 そのためには営業努力も必要ですけど、サポーターも含めそのクラブのイメージアップも必要なんじゃないでしょうか。
 新規のスポンサーが「今日も真っ赤に染まったスタジアム」と「今日も少ないサポーターがブーイングを浴びせるスタジアム」のどちらを選ぶか。
 ブーイングだけが悪いわけじゃないですけど、クラブのイメージアップを目差すのならば、サポーターも一緒になってやっていかなければ効果はないと思います。


 営業面で考えると、もっとも怖いのが“Jリーグは閉鎖されたスポーツである”という認識をもたれることではないでしょうか。
 「固定客ばかりで新規の観客が入りづらくなっている」という話しを、よく聞くようになりました。
 こういった類の話しは、敏感な企業経営者の耳にも入るでしょう。
 これはスポンサー確保においても、入場収入においても深刻な話しだと思います。





 サポーターも真剣だからこそそういった傾向にあるのでしょうが、クラブの一員としてもう少しJリーグをオープンな方向に持っていきたいところです。
 …まぁ口で言うのは簡単で、実際にどうすべきかというのが難しいのですが。





 さて、これにて全体の話しは終わり。
 最後にジェフに関して個別に分析したいと思います。
その1その2ジェフ編