熊本戦で感じた新たな起用法と兵働、谷澤の課題

今季初先発を飾ったジェフユナイテッド千葉のMF兵働昭弘は、「もどかしい1カ月だった。試合に出たい気持ちはもちろんありましたが、自分に何かが足りないからだと思っていたし、日々の練習から自分の出せるものを出せていけるようにと考えていました」とベンチを温めた日々を振り返った。(ゲキサカ

 「何かが足りないからだと思っていた」とのことですが、実際ちばぎんカップでの内容はあまり良くなかったですよね。
 個人的には昨シーズン終盤の兵働の動きは素晴らしいものだったと思っていましたし、ジェフでは数少ない攻撃面で大きな変化を作ることができる選手として、今季の開幕前から期待していました。
 期待が高かっただけにちばぎんカップでの出来は残念だったのですが、単純にコンディションが悪かったという部分もあったのかもしれませんね。
 昨年も夏場に負傷しその後調子が上がらなかったもののプレーオフに合わせこんできた兵働ですから、今年も開幕前後にピークを合わせようとしていたところがあったのかもしれません。


 しかし、開幕戦からのジェフは選手起用において、昨年とは少し異なる手法を取っている印象を受けます。
 それが「2列目に走れるアタッカータイプを積極的に使っていこう」というやり方ですね。
 開幕からここまでの2列目のメンバーを振り返ると、町田、山中、田中、谷澤、井出…と前に仕掛けられる選手が多い。


 逆にパサータイプの兵働はリーグ戦では2列目で起用されておらず、同じく大塚も怪我による出遅れの影響もあったのかもしれませんが、開幕戦以来ベンチにも入っていません。
 当初は単純に怪我人やコンディションの問題もあったのかとも思っていたのですが、熊本戦で山中が負傷したにもかかわらず兵働ではなく谷澤や井出が起用されたところを見ると、少なくとも現状では2列目にアタッカータイプを優先する方向でチームを作っているのではないかと感じます。
 昨年のままなら、兵働が使われていたところだと思いますしね。



 兵働や大塚などのコンディションが上がらず、山中のポテンシャルが高かったこともあって、開幕前に急遽変更となったのか。
 それとも、ある程度初めから考えられていたパターンなのか。


 ちばぎんカップの段階では兵働が2列目でしたから普通に考えれば前者かなと思うのですが、この2列目の組み合せを成り立たせるにはボランチの積極的な攻撃参加が必要なのではないかと思います。
 ボランチが前に出ていって高い位置でパサーとしてのタスクを果たすことによって、2列目にはアタッカータイプの選手を起用することができる。
 この2つのチャレンジはそれぞれ別のものではなく、セットとしてトータルで考えられているのではないか…とも考えられます。
 そして、そのボランチの前への飛び出しという新たなチャレンジは、ちばぎんカップの時点ですでに見られていたものでした。
 そう考えていくと、2列目にアタッカーを積極的に使っていく方針というのは、決してそこまで突発的なものではないのかなとも推測できなくもありません。


 2列目に走れるアタッカーを起用することで、前への飛び出しなども含め仕掛けの部分が増えることと、プレスがかけられるようになり攻撃にスピードが増してショートカウンターが狙いやすくなるというメリットがあると思います。
 鈴木監督は昨年から「前から守備をして素早く攻める」という話をしておりましたが、実際には走れて守れる選手があまりいないこともあってか、実現できてはいませんでした。
 今季は山中も入って、森本も馴染んできて、町田、井出あたりも成長したことによって、それが可能となったという側面もあるのかもしれません。


 もちろん昨年の反省も踏まえて、ショートカウンターの比重を増やそうとしているという面もあるのかもしれません。
 また、高橋が抜けたこともあってじっくりとしたビルドアップがやりにくくなったから、このような形にシフトしたという部分もあるのかなとも考えられるように思います。
 ただ、一方で昨年に比べてパスワークの部分はもう1つかなとも思いますが、そのような考えだとそれも致し方ない部分があるのかもしれません。



 今季のボランチは前に出た時のプレーが求められますが、それだけではなく当然攻守のバランス感覚なども重要になる。
 前に上がればトップ下的な役割を求められるれるため、健太郎が苦しんでいる部分もあるように思います。
 山形時代からアンカーとしてのプレー経験が長く、低い位置からパスを出す仕事をしてきた健太郎にとっては、同じボランチでもかなり状況が異なる印象があるのではないでしょうか。


 逆に兵働としては2列目よりもプレッシャーが厳しくないボランチの位置から上がっていく動きは、やりやすい部分があるのかもしれません。
 実際、今季のボランチ兵働は、かなりトップ下に近い動きをしている印象があります。
 ただ、相手の調子の悪かった熊本戦や途中出場で相手が疲労状態に陥っている状況だから、守備など苦手な部分が大きな問題にならなかった部分もあるのかもしれません。
 熊本戦でも局面での守備はあやしいところがありましたし、兵働が前に出ていくからいつも以上に山口慶の守備での負担が大きくなっていた印象も受けました。
 運動量も含めて、守備時にどれだけ貢献できるか。
 攻撃面も警戒され守備でも狙われる可能性がありますから、そこからが本当の勝負ですね。


 それともう1つの課題は、コンディションの安定だと思います。
 ボランチはできればシーズンを通して変更したくないポジションではないかと思いますし、それもあってスタメン兵働がここまで引っ張られてきた部分があるのではないでしょうか。
 健太郎の方が波は少ないと思いますし、そういった点では兵働は不安な部分があると思います。



 同じくプレーに波が激しいのが、熊本戦で好調だった谷澤ですね。
 谷澤の場合、1試合すごく良くても次の試合で大きく落ちる可能性があるのが、起用する側としては難しいところではないでしょうか。
 2列目にアタッカータイプを並べるからこそ、仕掛けられるだけでなくちょっとしたタメも作れる谷澤への期待は大きいのかもしれません。
 特に中村の前にはタメを作れる選手を置いたほうが良さそうですし、そういった意味では今後にも期待したいのですが、この調子が毎試合続くとは限らないのが難しいところで。
 まぁ、2人とも開幕時に比べれば、体は絞れてきているのかなとは感じましたが…(笑)



 2人とも相手の動きが悪かった熊本戦だけの活躍なら決して驚くべきものではないはずで、問題はこれがどれだけ続けられるかでしょう。
 町田、井出、山中など若い選手も増えつつあるだけに、今年は正念場。
 これから気温が高くなっていきますし、体調管理が大事になってくるのではないでしょうか。


 …まぁ、あともう少し審判に対して冷静にプレーしてほしいところですけどね。
 熊本戦でレフリングの問題があったにせよ、2人の審判への異議はあの試合に限らないわけで、あれが続けば雰囲気が悪くなるのも当然。
 審判への異議は3年程前に厳しく取ると変更になったにもかかわらず、変化が見えないというのはちょっと残念な印象があります。
 2人ともベテランの域に入るわけですから、チーム全体のことを考えた行動をとってほしいところではないかと思います。