2013シーズンを振り返る 谷澤達也編

 シーズン序盤の谷澤はトップ下でのプレーが多く、攻撃の軸として期待されていたと思います。
 しかし、谷澤とってかなり悩み苦しんだシーズンだったのではないでしょうか。


 今季当初のトップ下への期待は、バイタルエリアでボールを受けて前を向いてプレーすること。
 トップ下が前を向いてボールを持った状況で、相手CBが前に出てくれば裏を狙うスルーパスを出し、出てこなければミドルシュートを狙う。
 ビルドアップや守備などへの貢献も求められ、クロスに対しての得点力にも期待したい。


 多岐にわたる仕事が求められる中で、当初の第一候補が谷澤だったのではないかと思います。
 兵働あたりではプレッシャーの厳しいトップ下の位置では潰されてしまう可能性も高いし、大塚では運動量が足りない。
 谷澤は技術もあって、相手のプレッシャーがあってもキープが出来て、前への仕掛けも狙える選手ですから、シーズン序盤の段階では理想に最も近いトップ下だったのではな以下と思います



 しかし、谷澤は期待された活躍を果たすことは出来ませんでした。
 攻撃の軸としてのプレッシャーもあったのか、ビルドアップや守備に追われることが多く、うまく前を向ける機会をあまり作れなかった。
 得意としているドリブルでの仕掛けも少なく、もともとワンタッチパスやスピードある攻撃などは得意ではないため、攻撃のブレーキになることも多かった印象です。


 ビルドアップや守備面では効いていたところもあったと思うのですが、攻撃に怖さを発揮することの出来なかった印象で。
 6月末以降、大塚にポジションを譲ってからは守備ができてビルドアップに貢献できるSHといった立ち位置で、チームへの貢献という意味では小さくなかったとは思いますが、トータルでは物足りない出来でシーズンを終えてしまったと思います。



 谷澤本来の良さを期待するのであれば、あまり制約などは与えず自由にプレーさせて、ドリブルなどの仕掛けを積極的にやらせてあげるべきだったのでしょう。
 しかし、谷澤の立場を考えると、攻撃の軸としての活躍を期待したというのは、間違っていなかったのではないかと思います。


 谷澤は一昨年の夏に、FC東京からジェフに復帰という形で移籍してきました。
 J1のチームからJ2のチームへ、シーズン途中に自ら望んでのステップダウン。
 自身のわがままとも捉えらかねない経緯で、前所属チームに戻ったことになります。
 まぁ、それでも本人のキャラクターとFC東京でそこまでの戦力になっていなかったことで許されたところはあったのでしょうけど、見方によっては納得のいかない移籍と思われても仕方がないケースだったと思います。
 ですから、天皇杯でのブーイングも、当然だろうと私は感じていたのですが…。


 それでもジェフに戻った理由を強引に正当化するのであれば、FC東京での立場以上のものを任されて活躍することではないかと。
 それが『攻撃の軸』という役割であり、チームを引っ張って行こうという立場だったのではないかと思います。
 実際、谷澤自身のコメントを読んでも、鈴木監督の求めるタスクを真剣にとらえて実行しようという意欲を感じました。
 プレーに関しても自分が得意としていないタスクも含めてこなそうとしており、チーム全体を考えながら戦おうという意識があったのではないかと思います。



 しかし、それが花開くところまではいかなかった。
 自由奔放さが良さだっただけに、真面目に考えすぎたことによって、本来の良さも消えてしまった。
 一言でいうのであれば、残酷ですがキャパシティーオーバーということだったのかもしれません。


 攻撃の軸としてプレーして、その中で自分の良さも発揮する…。
 その壁を越えさえすれば谷澤はもう一段階上の選手になれたはずだと思いますし、そこを目標とするのは決して間違いではなかったと私は思います。
 いつまでも自由にプレーするだけでは厳しいプロの世界で長くは生き残れないと思いますし、このチャレンジへの意欲は買いたいと私は思うのですけど、現実問題として実力がもう1つ足りなかった。
 複数のタスクをこなせるだけの余裕がなかったということだと思います。



 しかし、これは他のベテラン選手にも、同じようなことが言えることなんじゃないでしょうか。
 実績のある選手は多いのですから、チームの軸になってJ1昇格を達成してほしいところですけど、誰をとってもそこまでの強力な軸になりきれてはいない。
 谷澤はそこで更なる進化を目指して自身が軸となるチャレンジをしたのではないかと思いますから、結果的に成功とは言えなかったかもしれませんけど、その気持ちは素晴らしいものだったのではないかと思います。


 今年から背番号も『8』に変更。
 個人的には意外な印象を受けましたが、これもジェフというクラブにおいて中心選手となり、チームを引っ張って行こうという気持ちの表れなのかもしれません。
 結果的に昨年はそれによって悩んでしまった印象もありますが、今年はその壁を突破してブレイクできることを期待したいと思います。