引いた3バックを崩す難しさ

 先々週J2首位神戸に逆転勝利し、先週はJ1FC東京相手に120分の死闘の末、PK戦まで縺れ込みました。
 2戦とも試合内容も良くシーズン終盤、そしてプレーオフに向けて、希望の持てる試合だったと思います。


 上位チームには勝てるけれども、中位から下位チームには苦戦するジェフ。
 1つには気持ちの問題というのもあるのでしょう。
 しかし、全試合トーナメント決勝のようなメンタルで戦えるかというと、現実問題として難しい部分があると思います。
 かといって、中位・下位チーム相手に全力で戦わなくても圧倒できるほどの戦力はない。
 そこがここ数年、ジェフがJ2で苦しんできた大きな要因とも言えるのかもしれません。


 格上チーム以下に苦しむもう1つの理由として、戦術的な問題もあるはずだと思います。
 神戸戦もFC東京戦もそうでしたが、相手が前に出てきてくれるからスペースが空いてくるという部分は非常に大きい。
 第2期の岡田監督やオシム監督の頃の日本代表においてのアジアでの試合でもそうでしたが、やはり現代サッカーにおいて引いてくるサッカーをこじ開けるというのはすごく難しいところがあるのだと思います。
 現在の日本代表はそんな相手を力技で押し通すだけの戦力があるようにも見えます。
 J2で言えば柏だったりFC東京だったり今年のG大阪、神戸などが、そのレベルにあるのかもしれませんね。



 具体的に見ていくと、次節の熊本も現在18位ですが、3バックで戦っています。
 J2の下位チームは、守備を重視してカウンターを狙うという戦い方が多いように思います。
 そのために両ウイングバックともに後方に人数を固めて、その中でも特にゴール前を3人で守る3バックが有効であると言うことなのかなと思いますし、実際にジェフが苦手とする形になってきますね。


 例えばですが、FC東京戦のジェフのゴールシーン。
 町田が最前線で斜め前に走り出すことによって、相手CBを引きつけることが出来た。
 これによって最終ラインにスペースを作り出したわけですから、パスサッカーで崩す攻撃を築き上げるにおいて、非常に重要な動きだったと思います。

 
 しかし、3バック相手だと、そううまくはいかなかったかもしれない。
 例えストッパー一人を釣ったとしても、真ん中にはリベロ(スウィーパー)がいてストッパーのカバーをするわけですから、そう簡単には前にスペースが作れない。
 おまけにJ2の下位チームはジェフなど上位相手だと、その前のボランチも引いてくることが多い。
 あの得点シーンで中盤から飛び出しゴールを決めた深井は、右サイドでのパスワークから大塚が良い状態でボールを持った瞬間にターンして前に走り出しています。
 その瞬間に相手ボランチは後追いになったわけですけど、全体が引いてボランチも後方に下がってくると、ボランチが後追いの姿勢になりにくいということにもなると思います。


 まぁ、熊本がどう戦ってくるかはまだわかりませんけど、このあたりもジェフが中位・下位チームに苦しむ理由であって、精神論だけで片付けられるようなものでもないと思います。
 端的に言えば相手は引き分けでもいいサッカーをしてくる中で、こちらは勝たなければいけないわけですから、それだけ考えても不利な状況になりやすいと。
 戦力や規模的な部分ではJ1よりもJ2の方が上位から下位の差は開いている印象もありますから、その分下位チームは極端なサッカーをしやすいはずですしね。



 熊本戦では山口智が出場停止。
 竹内が代わりということになるのでしょうか。
 昨年も言いましたが、個人的には山口智は能力以上にメンタル的な部分でのチームへの影響力が強いのかなと思う部分があります。
 まぁ、今年の場合は昨年以上に竹内の状態が良くないように見えるので、そういった意味でマイナス面は大きいのかもしれませんが。


 しかし、FC東京戦ではキムが欠場し、ベンチからも外れています。
 スピードもあって体の強い数少ないCBであるキムは大事な戦力になっていましたが、怪我ということになれば次戦も出場できないのかもしれません。
 キムが出場できないということになれば大岩ということになるのでしょうが、CBではほとんど公式戦に出ていませんし不安は大きい。
 まぁ、熊本もジェフからレンタル移籍中の青木良太がレギュラーとなっていましたが、ジェフ戦には出場出来ないとはいえ、ジェフは一気にレギュラーCB2人が欠場するかもしれませんから、その穴を埋める形の2人の出来がすごく大事になってきますね。



 一方でFC東京戦では山口慶が久々のスタメンとなり、深井もここ数試合キレのある動きを見せています。
 町田、大塚などのプレー内容は単純な勢いなどでなく、本物になりつつあるように思いますし、ここにきて新戦力も増えつつあります。


 これが過去2試合においてのもう1つの成功理由ではないでしょうか。
 山口慶の起用に関しては鈴木監督も「思い切って使ってみようと思った」と話していますが、実際にその積極的な起用法が成功した言うことになります。
 今期は怪我もあった山口慶ですが、昨シーズンもリーグ戦ではスタメンで2試合しか出場しておらずどちらの試合でも途中交代するような状況でしたし、このタイミングでのスタメン起用というのはサプライズだった思います。


 個人的に鈴木監督を支持している1つの理由は、この辺りの起用法にもあります。
 戦術的な軸は維持しながら、積極的な起用法を見せている。
 他サポなどによると以前はメンバーを固定する傾向にあったようですけど、少なくともジェフではそうは見えません。
 まぁ、時に上手くいかない選手を頑固に使い続けることもありましたけど、少なくともここ数戦の積極的な選手起用は良い方向に進んでいると思います。
 2トップなどのテストもありましたけど、あれ以降は2トップをやっていないというのが、すごく重要なことですよね。



 ともかく、2試合良い試合はしましたけど、これを続けていくことが何よりも大事だと思います。
 相手が守備を固めた状態での攻略に関しては難しさもありますが、それでも町田や大塚といった細かいエリアで決定的なプレーのできる選手が出てきたことによって、少しずつでも攻略の糸口が見えてくる可能性はあるかもしれない。
 そこをベテラン選手たち含めて周りがうまくサポートしていく状況を作ることが、現在の目標なのかなと思います。