京都戦での選手起用を考える

3人交代しましたが、それぞれの意図、狙いを教えてください。
「まず、サイドの中盤で非常にミスが多かったのとなかなか起点になれなかったということで、疲れている選手、ミスが多くなってしまう選手を代えて活性をはかろうというふうに考えました。ただ、あんまり守備的には行きたくなかったので、攻撃的な選手を投入したいということで、まずは大塚(翔平)を、守りというよりは攻撃のところでミスをしないようにということで投入しました。兵働(昭弘)については同じくやっぱり中盤のところでミスが多かったので、そこを起点にして前線にパスを供給しようということで入れました。それから森本(貴幸)については得点を、ああいう状況だったので1点を狙うということで投入しました」(J's GOAL

 今回はずいぶんと選手交代への質問が多いですね。
 話の流れというのもあったのかもしれないし、森本への注目度が高いというのも影響したのかもしれませんが、エルゴラでもいちいち選手交代に関して指摘されてるそうで意外な印象です。


 基本的には選手交代"だけ"で、いろいろと語るのはどうかと思いますけどね。
 チームのベースはスタメンの11人にあるわけで、選手交代というのはそこからの足し算や引き算でしかないはずで。
 それだけに監督批判において使いやすい材料であるのでしょうけど、そこがチームの本質とは言い難いはずで、監督を批判するにしても浅い内容だなぁと思ってしまうことが多いですが。
 監督としての勝負師の勘的な部分は見えるかもしれないですし、例えばJリーグ全体で見てもそれを期待できる監督がどれほどいるのかと考えると難しい気がしますし。


 オシム監督もジェフの頃は選手交代がすごくうまくいっていましたが、代表に移ってからは選手交代で"当たった"という試合はあまりなかったですし、チーム環境にも大きく左右されるものだと思います。
 ジェフ時代では林、工藤、水野など選手交代も固定メンバーで起用していたことが多く、それだけの選手がいたというのも大きいのでしょう。
 まぁ、オシム監督自身も、監督の仕事はスタメンを決めればほぼ終了というような話をしていましたし、選手交代が成功したときは「偶然だ」と答えるのがお決まりでした。



 少なくとも先日の京都戦での選手交代は大当たりはなかったものの、他に手を打つ方法はあまりなかったように思います。
 まず後半14分に谷澤と大塚を交代。
 この日の谷澤の出来は前半から非常に悪く、パスミスを連発していたので、谷澤の交代は極めて妥当だと思います。
 もっと早くに交代していても良いと思えるほどでしたが、全体的なスタミナ不足を抱えるチームにおいてあまりに早期にカードを切るのは良策とは思えません。


 ハーフタイムを挟んで気持ちを切り替えてくれる可能性を期待したのだけれど、後半に入ってからも状況は変わらなかったので、あの時間帯に交代させたということでしょう。
 そういう意味で、交代のタイミングも納得できるものでした。
 まだ残り時間もある状況で守備堅めをするのではなく(そもそも中盤の守備的な選手が他にいないですが)、これまでレギュラーだった大塚を投入した。
 これも自然な流だったのではないかと思います。
 まず、この試合での采配においてこの谷澤のブレーキが、非常に大きな誤算だったと言えると思いますね。



 続いて田中を兵働に交代。
 田中は本人も「運動量が落ちてしまった」と話していた通り、後半から動きが鈍っていました。
 もともと運動量がウリの選手ですから動けなくなるときついですし、実際交代直前にパスミスをしていて、そこから流れが京都に傾いてしまいました。
 あのミスを見て、交代を決断したのでしょう。


 そこでボールを落ち着かせる役割ということで兵働に期待したのでしょうが、兵働も動きがいまいちでした。
 ただ、田中の交代を前提として考えるとすると、この日は2列目の選手が他にいなかった。
 深井も劣勢の状況では守備面に不安がある上に試合を落ち着かせる役割を任せられる選手ではない。
 町田に関して大塚よりサイドに向いているのではないか?と先日言ってしまいましたけど、あれだけフィジカルで相手に負けてしまうのを見ると、SHで下がっての守備には怖さがある。
 よって、田中を森本に変えて2トップして、町田をSHに起用するのも難しいと思います。


 そう考えると田中の交代はベテランの兵働に期待して劣勢を挽回するか、キムを起用して米倉をSHに上げるかくらいしか考えられる手はありませんでした。
 この時のスコアは1-1でしたので、守備的になってしまう後者ではなく前者を選んだと。



 そして、最後にケンペスに変えて森本を投入。
 これに対して記者会見では、町田に変えて森本で2トップでも良かったのではないかという質問が出ていました。
 しかし、ケンペスがあれほど守備で動けていない状況で、そこを起点としてビルドアップをされていましたし、その影響もあって全体のラインもズルズルと下がっていました上ポストプレーでも起点になれていなかったですから、あれを見ているとケンペスを変えたくなる気持ちも十分にわかります。
 対する町田の方は最後まで守備で動けていましたし、他の選手のスタミナ切れまで考えると、守備で動きの止まったケンペスを残しておきたくなかったと。。


 結果的には森本投入直後に勝ち越し点を奪われてしまったので、ケンペスと森本の2トップのほうが良かったのではないかということになりますけど、それこそ結果論。
 こういうことが起こるので、選手交代は「早く動けばいい」という意見には反対なわけですが。
 もし先に失点していればケンペスではなく町田と交代して2トップにして、リスクをおかしてでも攻撃へ…となったかもしれませんしね。



 それでも監督のミスを考えるとするのであれば、谷澤と兵働のコンディションを見誤ったということでしょうか。
 ただ、谷澤自身も前半終了直後に首を傾げていたそうで、予測は難しかったのではないかと。
 また、先ほども言ったように、2列目の選手が他にいなかったという問題も大きかったはずです。
 この試合の根本は「ベンチに選手がいないこと」と「チーム全体のスタミナ切れ」が大きな問題であり、あれだけ選手たちの足が早期に止まってしまった状況を見て、選手交代でどうにかなったはずだと考える方が驚きだなぁと思います。


 健太郎が出場停止で山口慶も負傷ということで、ボランチは伊藤と勇人で変えられなかったため、伊藤をSHに起用することは出来なかったことも大きかったと思います。
 谷澤ではなく大塚を左SHのスタメンで起用するパターンも考えられたかもしれませんけど、個人的にはあまりSHでの大塚についてはそこまでいいイメージがない。
 スタートからの2トップも予想されはしましたが、天皇杯でも森本は90分間持たなかったようですしね。
 他にもスタミナ切れを起こす選手が多いことを考えると、両者90分持たない森本・ケンペスの2トップはリスクが大きすぎる。


 まぁ、それならばケンペスに変えて、森本スタメンというのも考えられるのかもしれません。
 ただ、ケンペスのフィジカルの強さが、引いてくる守備に対しては有効なイメージもあります。
 森本もゴールに背を向けたポストプレーを見ると、フィジカルというか体の使い方はうまいと思いますけど、ゴールに向かうプレーではどちらかというとスペースに飛び込んでいくイメージで。
 ケンペスは前を向いた時のパワーが強みの選手なので、ある程度スペースがなくても競り勝てるという部分が評価されているのではないかなと。
 逆に考えると、森本としてはスペースがない状況でのゴールパターンというのを見せてほしいところではないかなと思うのですが、今のところまだジェフでのゴールパターンというのは見えてこないですから、FWの2番手になっているのも仕方がないのかなと個人的には思います。



 もう1つ采配への私的という意味では町田のスタメンが正しかったのか、という点は言えるのではないかと思います。
 町田が特に先制点までの時間帯でハイテンポでプレーしすぎてしまった。
 それに引っ張られる形で、他の選手も飛ばし過ぎてしまったために早い時間帯でスタミナが切れてしまったということは言えるのでしょうし。
 まぁ、町田に単純に引っ張られてしまう周りのベテランも、どうかと思うのですが…。


 ただ、町田のスタメン起用に関しては、ポジティブな意見の方が多いのではないかと思います。
 個人的にもそういった積極的な起用は前向きに見ていきたいところだと思いますし、実際に少なくとも前半は良い部分も見られたはずで。
 終わってみれば大塚スタメンの方が無難に戦えたのかなとは思ってしまうわけですけど、試合後だからこそ言えることだと思いますしね。
 鈴木監督はどちらかと言えば無難な選手起用が多いと思うだけに、むしろ京都戦での選手起用は町田も含めれば前向きに考えられる方なのではないかなぁと思いますけどね。
 町田がここでスタメン起用したことによって、今後起用しやすくなる部分もあるかもしれないですし、町田本人の将来を考えても可能性は見せてくれたはずですから。