ジャイールがUAE2部のエレミーツクラブにレンタル?

 ジェフのジャイールUAEのエレミーツクラブに移籍すると、海外メディアが報じています。
 こちらこちらこちらなどで。
 1年間のレンタル移籍で、WikipediaによるとエレミーツクラブはUAEの2部クラブだそうです。


 ここ数試合はベンチにも入らず、練習にもいなかったようですから、予想の範囲内ではあるのかなと思います。
 韓国語版のWikipediaによると、済州ユナイテッドでもシーズン中に無断でチームを離脱したことがあるようですし、もしかしたらそういうことなのかなぁと。
 まぁ、個人的にはクラブにとっても本人にとっても、移籍でいいんじゃないかなぁと思います。



 もともとそれなりに実績のある選手は、1つのクラブにこだわる必要はないと思っています。
 サッカー選手の寿命は、うまくいっても20年程度そこそこで、10年程度で引退する選手も珍しくない。
 Jリーガーの場合平均引退年齢は25歳程度だそうですから、成功しなければたった数年で辞めることになる。
 そうなると実力はもちろんですが、それまでの身の振り方というのが非常に大事ということになるわけで、ジャイールの場合はKリーグでも実績はあり成長段階の選手というわけでもないはずですから、移籍先でうまくいかなければすぐにでも移籍を考えるのはおかしいことではないと思います。


 例えばこれがクラブと選手に特別なつながりがあって、お互いに強い愛着のある状況なら別だとは思いますけどね。
 しかし、ジャイールの場合、異国の地で戦う助っ人であることは本人も自覚しているでしょうし、ジェフからのステップアップも考えていたかもしれません。
 少なくとも千葉に骨を埋めるような覚悟があったわけでもないでしょうし、それが当然だとも思います。



 クラブとしても戦力になっていない、年俸も他選手と比較して高額であろう選手を抱えておくのは、健全な状況とは思えません。
 一般企業とは違いピッチ上で戦力になる選手の数は限られているわけで、余裕のない強化費の中で戦力を遊ばせているような余裕はないはずです。
 クラブが効率の良い経営が出来ればチーム状況もなかなか良くはならないわけですし、ひいてはそこに在籍する選手本人にとっても幸せな状況にはならない。
 今回はレンタルということで移籍金が受けられるかどうかはわかりませんが、それでも残り期間の年俸が浮くのならそれだけでも大きいはずで。
 そして、ジャイール放出によって外国人枠が空けば、今夏ないしはシーズンオフでの外国人選手補強も期待できることになります。
 今から1年間のレンタルということは、少なくとも来夏まではジェフとの契約が残っていたのではないかと思いますし…。


 また、もし精神的に腐っている選手がいれば、それもチームにとっては良い影響を与えないでしょう。
 若い選手などならそれも仕方ないと周りが思うかもしれませんけど、それなりに経験のある選手ならそうもいかないでしょうし。
 もちろんジャイールがどういった状況なのか、なぜ練習にも姿を見せたなかったのかに関しては、私の知るところではないですが。
 あくまでも、このあたりは一般論として考えた場合。



 戦力としても正直、非常に使いにくい選手でした。
 まず、日本のサッカーに…というか、今年のジェフのサッカーに合わない。
 G大阪戦の1点目を思い出せばわかるように、今期のジェフは2列目の選手が相手の間を取って、前を向いてパスを出すというのが基本的な狙い。
 それを可能にするためにも、2列目の選手はうまく間を取る動きをすること。
 そして、数少ないタッチと素早い判断で、プレーを選択していかなければいけません。
 しかし、ジャイールは基本的にボールを好きなところで受けて、ドリブルを多用するプレースタイル。
 相手の間を取る予備動作も出来ないし、もしうまいことを間をとってもそこから強引にドルブルをスタートしてしまっては、間を取る意味が薄れてしまいます。


 それでもクロスだとかスルーパスなどの精度に関しては目を見張るものがあり、鈴木監督としても攻撃に変化を与えるという意味で期待していたのだと思います。
 しかし、ドリブルも奪われはしなかったもののキレはそこまでではなく、相手を抜き去るというより避けているような印象がありました(相手の間をドリブルしていくような状況となり、結果的にジェフの狙うスペースを消してしまうような形に)。
 そして、ボールの受け方も足元が多く、近くの選手をうまく使えない(信頼していない?)ため、ジャイールのところで攻撃のスピードが落ちチーム全体の攻撃面に悪影響を与えていました。


 そして、何よりも守備の問題。
 シーズン序盤はまったくサイドの位置に戻らず、相手のサイドハーフサイドバックをどフリーにする場面が目立ちました。
 特に逆サイドからの攻撃に対して、対面のサイドバックをフリーにする問題は深刻で、左SBの選手はどうしようもないような状況になっていたと思います。


 スタメンを一時的に外され再び戻ることになった5月3日の愛媛戦では、練習から指摘されたのかようやくポジションに戻るようになりましたが(それでもゴール前まで戻らないことが多かったですが)、今度はポジションに戻っても簡単に相手に抜かれてしまう場面が目立つようになります。
 そこまでの試合ではトップ下のナムなどがジャイールの左サイドに戻るジャイールシステムで対応していましたが、それではどうしても遅れが目立つし今度はジャイールが攻め残った中央が守備の穴になってしまう。
 鈴木監督としてはジャイールのスタメン起用に関して万策を尽くした印象ですけど、それでもダメだったと。
 むしろ無理にこだわり過ぎなんじゃないかという印象が強かったですけどね…。
 まぁ、開幕当初はまだ間を取る攻撃もそこまでうまく出来ていなかったから、ジャイールに頼りたかったという部分もあったのでしょう。



 どう使えばよかったのか、今でも悩む選手ですね。
 数十年前のサッカーならこういった選手も輝けたのかもしれませんけど、現代サッカーにはなかなか合わない。
 オフサイドルールが導入されてどのチームもコンパクトなサッカーを求められた結果、DFによるチャンスメイクも当たり前になった。
 そうなると今度は攻撃陣にも守備能力が求められ、FWに守備能力が欠けていればそこからピンチを作られることになる。


 韓国ではそこまで守備を求められなかったという話をしていたと思いますけど、ジャイールシステムで助けられていた時期の発言だっただけに、あれ以上守備を求められないというのはどんな感じだったんでしょう。
 もう完全にジャイールサッカーをやっていたんですかね…。
 FWに起用して、周りの選手が懸命に走って…?
 最後は監督の構想外だったというような報道もあった気がしますけどそれも納得というか、それだけ良い面と悪い面がはっきりした選手だと思います。
 ある意味ではオーロイ以上でもろ刃の剣というか、よく欧州人監督が表現する「サーカス的なプレー」というのはこういうことを言うのかなと思いました。


 ジェフでスタメンを外した後の「相手が疲れてきて守備もあまり求められず、かつ点を取りたい状況でだけ使う」という起用方法が、一番間違いはなかったように思います。
 しかし、そんな状況は限られていますし、ジェフ全体のスタミナにも課題があり、劣勢の状況を挽回できるほどの選手でもなかったと思います。
 むしろチームにも勢いのある、ノリノリの状況で活きるタイプであり、1人で何とかできる選手ではなかった。
 しかも、ジャイールを使ってしまえばチームのメインスタイルも諦めざるを得ない状況でしたから、ジャイールの個人技はプラスになっても、戦術的にはマイナスになってしまう…。
 それならば若い大塚、ナム、今ならば町田などにチャンスを与えてほしいと思ってしまいますしね。
 現在は負傷中ではありますけど、兵働や深井などもいるわけですし。



 ジェフに合わなかったというよりも、守備面での成長がほとんど見られなかった。
 それが移籍する以前に、もっとも残念なところだと思います。 
 まだ比較的若い選手ですからこれからでも改善できると思いますし、ぜひ守備を勉強して海外で一花咲かせてほしいと思います。
 今のままではどこに行っても厳しいんじゃないかと思いますし、ジャイールに成功してほしいと思うからこそ、ここからジャイールが変われるように祈りたいと思います。