ホームフクアリで首位G大阪相手に3-0の大勝

 久々にチケット完売となったフクアリでのジェフ対G大阪戦は、ジェフが首位G大阪相手に3-0で勝利をつかみました。
 印象的にはその盛り上がるシチュエーションによる影響も大きいですけど、今のところ今期ベストゲームではないかと個人的には思います。


 相手の状況やホームでの試合ということもありますが、もちろんジェフの方も確実に積み重ねてきて、チームが成長しているからこそこの試合が出来たという面も十分にあると思います。
 それだけジェフのやりたいサッカーが出来ていたと思いますし、一時の勢いだけではない試合だったんじゃないでしょうか。
 もちろんサポーターの応援も含めてすごく良い雰囲気でしたし、相手チームの状況なども含めて、いつも以上に頑張れた部分も当然あったのでしょうけどね。
■狙い通りの形から2ゴール
 ボールをポゼッションするのはG大阪
 ジェフもパスワークをウリにしているチームで、ボールを長く保持する時間が多いチームですけど、この試合ではボール支配率はG大阪の方が上だったのではないかと思います。
 試合の立ち上りからボランチの遠藤を中心に、パスをつないでいくG大阪
 そして、前方ではFWパウリーニョが前線から少し下がってきて、ドリブルを仕掛けていく。
 前半10分にはパウリーニョミドルシュートが、クロスバーを直撃するシーンもありました。


 しかし、試合が動いたのは前半12分。
 CBキムからのくさびのパスに右サイドの田中が相手MFラインとDFラインの間で受けると、近くにいた大塚にパスを落とし大塚はワンタッチでスルーパス
 くさびのパスが出ていた時点で右サイドを駆け上がっていた米倉に、そのスルーパスが通り米倉がそのままシュート。
 これが決まって先制点をあげます。


 CBからのくさびのパスをMFラインとDFラインで受け、その間に他の選手が飛び出していって、そこにスルーパスを出して、相手の裏を突く。
 まさに、ジェフが狙っている攻撃パターンがうまく作れたシーンでした。



 続く前半20分にも、後方からのパスをケンペスバイタルエリアポストプレー
 これを左サイドの谷澤が受けて、そのまま斜めに持ち込みシュート。
 これはクロスバーに当たってゴールなりませんが、これも理想的な形の1つでしたね。


 そして、前半23分。
 左サイドで高橋が二川と競り合う形でボールを奪い返すと、相手ボランチとCBの間で大塚がボールを受けます。
 そのまま、大塚がミドルシュート
 少し距離のあるシュートでしたがこれが見事に決まり、ジェフが2点目をあげます。


 大塚はこの間で受ける動きがうまいだけでなく、間で受けた後に正確なプレーできるというのが大きいですね。
 相手選手が近くにいても、そこから精度の高いシュートやスルーパスが放てる。
 単純な技術だけでなく、判断力も非常に速く、精神的にも落ち着いてプレーできている。
 それによって難しいポジションで、非常に効果的な動きが出来ているんだと思います。
■粘り強い守備からカウンター
 先制点を奪ったあたりから、試合の流れはジェフに傾きつつありました。
 守備ではしっかりと4×4でボックスを形成して、穴を作らない。
 相手の攻撃のキーマンである遠藤に対しては、無理にボールを奪いに行かず、縦のパスコースをまず消す形。
 強引に奪いに行って抜かれては元も子もないですし、遠藤からの横パスはOKという守り方だったと思います。
 ようするに、初めからある程度相手にポゼッションされるのは仕方ないという判断だったのかなと。


 その分、ボールを受ける選手にスペースを与えない守り方。
 それによって、遠藤からのサイドチェンジや裏へのボールなど、長いボールが増えていきました。
 しかし、それに対してはしっかりとサイドにスライドする、コンパクトに守るという形で十分守れていました。
 1人1人粘り強く守れていましたし危ないシーンもありましたが、GK岡本の冷静な対応も含めて、良いディフェンスが出来ていたと思います。 



 そして、58分。
 ジェフが左サイドで受けたFKを伊藤が蹴ると、山口智がニアで相手に競り勝ちゴール。
 久々にセットプレーでゴールが決まりましたね。
 しかも、これまで守備のセットプレーで課題も見えていた山口智が決めた形になります。
 伊藤のボールも素晴らしかったですけど、しっかりと競り勝てましたし、本人にとっても嬉しいゴールではないでしょうか。
 大塚、山口智と古巣相手へのゴールが続きました。



 そこからもジェフは、しっかりとした守備からカウンターを狙う展開。
 伊藤から高精度のロングパスを谷澤が受けて抜け出しかけたり(惜しくもオフサイド)、相手のパスミスに田中が素早く反応してボールを奪いケンペスにラストパスを出したり(これは相手が何とかカバー)。
 相手も選手交代でフレッシュな選手を投入して、押し込まれる時間帯もありましたけれども、決して防戦一方という感じでもなかったですね。
 G大阪の方も疲れは見えていたと思いますし、そこまでの勢いは感じませんでした。


 ジェフの方も連戦で気温も高く、疲労はあったとは思いますが、以前のようにガクッと足が止まるようなことは減りましたね。
 やはり大塚、伊藤、米倉、高橋、キムなど若い選手たちがしっかりと走ってくれているというのが、チームにとってとても助かっているのかなと。
 加えて途中交代のナムや大岩、勇人なども、しっかり守備で頑張ってくれている。
 チーム戦術がはっきりして、途中出場の選手が入っても遜色ないプレーができる状況になったことも大きいのかなと思います。



 ラストプレーはジェフゴール前でのFK。
 遠藤が直接狙ったのですけど、ゴールを外れ試合終了のホイッスルが鳴りました。
 遠藤は試合初めのサイドからのFKでも、一枚目の壁を越えられなかったですし、疲れもあったんですかね。
 それでも時折見せる技術はさすがでしたが…。
■間から前を狙うだけでなく
 ジェフからすれば、非常にいいサッカーが出来た試合だったと思います。
 チームとしての成長も感じられる試合だったのではないでしょうか。
 しっかりと勝ち点を伸ばせている要因は、やはりチームの戦い方がより明確になってきたことが大きいと思います。
 CBやボランチから相手MFラインとDFラインの間を付く縦パスを出して、FWや2列目の選手が受け、その間に他の選手が飛び出していく形が1つ。


 しかし、シーズン序盤はそれでFWや2列目の選手が前を向けられなければ、そのままボールを戻しやり直す…という単発の攻撃にしかなっていなかったように思います。
 現在はその攻撃だけでなく、FWや2列目の選手が前を向けなくとも、縦パスの落としをボランチなどが近くで受けて、そこからサイドチェンジを狙っていくという形ができるようになってきました。
 1点目の形も大塚がボールを奪ったところから始まり、ケンペスポストプレーをし、伊藤がボールを受けて、左サイドにサイドチェンジ。
 これによって左サイドに相手選手が引きつけたところから、再び右サイドにボールを戻したことで、キムの前が空き、キム、田中、大塚、米倉と続きました。
 この田中と大塚もそうですけど、距離間が非常に良くなっていると思います。


 こうして、縦パスに対して上手くサポートに入る形。
 そして、縦パスから前を向けなければ近くの選手に落として、そこからサイドチェンジを狙っていく形もできるようになって、ボールがより動くようになり攻撃にリズムも生まれ、サイド攻撃も増えるということで攻撃の幅も広がっていく…と。
 このあたりのボール回しにおいて、スムーズに連動した動きが出来ようになったことが、何よりも大きいんじゃないかなと思います。
 これを可能にしているのも、あまり目立たないかもしれないですけど、伊藤の存在というのが大きいのかなと。
 それとサイドのボールを受けるという意味で、この試合では高橋も良い動きをしていましたね。


 連動したオートマティックなサッカーが出来ているから、前節富山戦のようにコンディションが悪くても、それなりに結果を残すことができる。
 これが個人技ばかりに頼ったサッカーでは、コンディションにダイレクトに左右されるチームになってしまうはずで。
 正直G大阪も同じような狙いを持っていたんじゃないかと思います。
 しかし、個人能力はもちろん高いですけど、遠藤から先の攻撃の連動性においてはこの試合を見る限りだとジェフの方が上だったのかなと。
 まぁ、レアンドロや倉田がいないというのも大きかったのでしょうが。



 しかし、この試合では攻撃より守備の頑張りが効いていた印象があります。
 G大阪は岐阜戦でも8点はとったものの、2点取りかえされているように、やはりどちらかと言えば攻撃がウリなチームのはずで。
 実際MFラインとDFラインの間へのリスクケアは、緩かったと思います。
 たぶんジェフへの対策を怠っていたというか、油断していたところもあったのではないかなと。
 他チーム相手だともっとジェフ対策ということで間を消してくるチームやポストプレーに激しくマークしてくる相手が多いですけど、この日は比較的楽に間を取れていましたしね。


 その相手に危ないシーンを何度か作られながらも、粘り強く戦えていたこと。
 しっかりと、4×4のポジションバランスを大事にして、スペースを作らなかったことというのが非常に大きいですね。
 相手はG大阪であり、一瞬でも穴を作ってしまえば、遠藤などからそこにパスが通ってくるチームだっただけに。
 山口智もキムという強い選手がパートナーになったことで、キムをうまく使って自分はカバーという関係ができ、自分のプレーも良くなってきたと思います。
 また米倉もSBでのプレーが慣れてきて、ここ数試合はメキメキと守備能力も成長している印象で、伊藤も守備で頑張っていましたね。



 これだけ激しく粘り強い守備が出来たのはいつ以来かなと思ったのですけど、振り返ってみれば6月上旬の神戸戦でも良い守備をしていました。
 やはり格上チーム相手には、気持ちが強く戦えていると(笑)
 「やればできる」とも言えるのかもしれませんけど、格上ではない相手となれば、守備を固めても前には出てこないでしょうから、そこからカウンターを狙うというのも難しいですしね。


 もしかしたらジェフは富山戦の内容は悪かったですがこの試合に調子を合わせてきていたのかもしれませんし、逆にG大阪は岐阜相手に8-2の後で油断していた部分もあったのかもしれません。
 そう考えていくとジェフは、この試合での出来の良さは想定の範囲内であり、今後の試合でもしっかりと気を抜かずに戦うこと。
 この試合で自信をつけてほしいとは思いますけど、それが慢心にならないように気を付けなければいけませんね。
 良い試合だったのは事実ですけど、それでも勝点3。
 他のライバルチームも勝ち続けていますし、この1勝だけでなくこの1勝を弾みとして勝点を積み重ね続けることが、何よりも大事だと思います。