オシム監督のロジックに関して

 取り上げるのが遅くなりましたが、前回発売のNumberでJリーグ特集が組まれていました。
 「Jリーグ20年記念 歴史を動かした20人」とのことで、その中でイビチャ・オシム監督の記事も掲載されています。
 Number Webの方では、オシム監督の記事の一部が読めるようになっていますので、こちらからどうぞ。


 その中で江尻監督がこんな話をしていたそうです。

ジェフでオシムのアシスタントコーチを務め、現在はU-16日本代表のコーチである江尻篤彦は、「68m×105mというピッチの規格のように、何があっても変わらない真理のような存在」とオシムを評する。
「これからもサッカーは進化していくけど、彼に教わったものはその進化のベースに必ずあるのだろうと思います」

 その通りですよね。
 「現在はオシム監督の頃のサッカーとは変わっている」からとか、「オシム監督は過去の人だから」というような話をする人もいますけど、そう単純なものでもない。
 確かに日本にはもうオシムさんはいませんしジェフの監督でもないわけですけど、オシム監督自身はいなくともオシム監督のロジックというものは色あせないものだと思います。
 そういったベースとなるものを植え付けられる指導者だからこそ、多くの人に感銘を与え、サッカー関係者に対しても「サッカー観を変えた」とも言わしめるほどの影響力を持っていたのだと思います。


 単純に豊富な運動量だけでなく、自分が犠牲になる動きだったり、賢い動き出し。
 攻撃に置いてリスクを冒す勇気。
 判断速度も含むスピードや、攻撃におけるアイディアの重要性。
 体を張ってプレーすることの必要性(「戦う」という言葉をよく使っていましたが)や、全ポジションにおける基本技術の大切さ。
 現状に満足することなく、更なる上を目指すメンタリティ。


 こういったものは、オシム監督が特に何度も指摘していた部分だったと思います。
 こうやって自分の拙い文章力で文字にしてしまうとすごく一般的なものになってしまいますけれども、そういった基本的な部分をすごく大事にする指導者でもあったんだと思います。
 だからこそ、サッカー関係者の中ではオシムさんが代表監督に就任し騒がれた後に「自分も前から同じことを言っていた」、「オシム監督が言っているのは普通のこと」なんて言い出す人達が何人も出てきましたけど、その基本をジェフで追求して形として残したのがオシムさんではないでしょうか。


 オシム監督自身は非常に勉強熱心で最新のトレンドを把握する努力を惜しまずにやっていましたけど、そういった最新のサッカーを学びつつも、自分のロジックに関してはブレなかった。
 それもオシム監督がサッカーの基本を大事にしていたからこそだと思いますし、だからこそオシム監督のロジックや言葉というのは今でも勉強になる部分があるのではないかと思います。
 だから、自分がブログなんかで書く内容を迷った時は、密かに「オシム監督だったらどう考えるだろう」なんてことを考えて打ったりすることもあったりなかったり…。
 もちろんそれはあくまでも考え方のベースであって、そこから先の応用だとかはまた別の話ですけどね。

Sports Graphic Number 2012年 3/8号
Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2012年 3/8号 [雑誌]