3バックの不発と個々の可能性

 昨夜はキリンチャレンジカップベトナム戦が行われました。
 ベトナムは守備に関してはまずまず安定していたと思いますし、W杯アジア予選等を考えれば悪くない強化相手だったのかもしれませんね。


 日本代表は3-4-3でスタート。
 これまでも3バックを試してきた日本代表ですけど、今回は単純に本田の代わりが見つからないという面も大きかったのかなと思います。
 これまでの日本代表はボランチ2人からパスを出し、フィジカルのある本田がもう1つ高い位置で受けて、ゲームを作っていた印象で。
 しかし、その本田が負傷し代わりも見つからないため、3バックにしてDFラインからのビルドアップとサイド攻撃を狙うつもりだったのかなと思います。
 3バックにすることで、最終ラインでのパス回しの距離が広くなりパスワークのスピードを増すことができるし、ストッパーがパス出しの起点になることもできると。



 しかし、この3-4-3、守備の方がかなり拙かったですね。
 相手が遅攻してきた際は4バックにもなる3.5バック気味のフォーメーションでしたが、両サイドバックが最終ラインに戻ることを気にかけた結果、5バック気味になることも多くなってしまいました。
 また、一方のサイドでサイドバックやウイングなどとうまくプレスを掛けられたとしても、逆サイドバックの選手は最終ラインに戻らなければならないため、逆ウイングのポジショニングが中途半端で。
 逆ウイングはサイドのスペースも消さなければいけないし、トップ下がいない分中盤も埋めなければいけないし…という状況となり、サイドから展開されると他が薄い状況になっていたように感じます。


 守備のポジションバランスが悪いことで攻撃にも影響が出ており、特にサイドバックの思い切った攻撃参加が出来ていませんでした。
 ウイングも中に入るのか外を縦に攻めるのか、迷いながらのプレーといった印象でしたね。
 一方のサイドバックが攻めているときは逆サイドバックは攻めないという約束事だったのか、サイドが広く使えず中央にばかり選手が固まることも。
 これで「攻撃的3バック」と言っては(まぁ、ザッケローニ監督自身が言ったわけではないかもしれませんが)、オシム監督に笑われてしまいますね(笑)



 後半は今までの4-2-3-1に戻して、一気にポジションバランスが安定していきました。
 本田不在の中での4-2-3-1でしたが、トップ下には中村憲剛が入ってパスワークのポイントを作ることで、攻撃のリズムを作ることができていたと思います。
 本田はトップ下で体を使って受けるプレーが効いていたと思いますが、憲剛は素早く状況判断をし正確にパスをつなぐことで、中盤の起点となっていたんじゃないでしょうか。


 しかし、ボランチには阿部・細貝が起用され、いつもの遠藤・長谷部に比べると後方からのパス出しの点で物足りない状況でした。
 特に遠藤がいないことで攻撃のアクセントが作れなかった印象で、憲剛のスルーパスのみに頼った攻撃になっていたと思います。
 また、本田に比べて憲剛は前線で競れないという部分がありますし(それでも飛び出しなどで頑張っていたと思いますが)、岡崎が不在でウイングから飛び込んでいく選手がいないこともあって、前線の薄さ・迫力不足を感じました。
 1トップ全盛時代ですから、やはり岡崎や山岸、この前のジェフで言えば青木孝太のように、後ろから飛び込んでいけるフィジカルタイプの選手がいないと、前線の厚み不足を感じますね。
 そのあたりがパスはつなげても、ゴールは遠かったことに関する1つの問題だったのかなと思います。



 全体的に見るとグダグダな試合ではありましたけど、それぞれ収穫はあったんじゃないでしょうか。
 憲剛は(パワー系の本田と比較して)テクニカルなトップ下としての可能性を感じましたし、藤本は飛び出しだけでなくロングパスも出せるウイングとして結果も出してくれたし、原口の思い切りの良さも良かったと思います。
 それぞれ決して層の厚くはないポジションの選手達ですし、上手く融合していくことができれば面白いんじゃないでしょうか。
 特に藤本の活躍は新たなタイプのウイングとして、可能性を見せてくれたんじゃないでしょうか。
 オシム監督の頃に藤本を前目で使って「藤本はパサータイプなのに、使い方がわかってない」と言っていたサッカージャーナリスト達は、どう思っているんでしょうね。


 それとあまり可能性を否定したくはないですけど、これでようやく3バックに諦めがついたんじゃないかな?という点も大きいんじゃないかと思います(笑)
 「チームとして最終的に何をやりたいのか」を基本として、選手の人選やシステムが決まってくるはずですが、何を求めて3バックにしたいのか…という部分がなかなか見えてきません。
 当初は長友を走らせてグイグイとドリブルを仕掛けさせる戦術なのかと思ったのですが、ベトナム戦を見ると長友を攻めさせるために前を空けるとか、ボールを展開をするという形も見えなくなってしまい、結局前の選手が強引なドリブルを仕掛けるだけのシステムになっていました。


 3バック時にあれほど酷かったポジションバランスが4バックにした途端良くなったことを考えても、選手個々の問題ではなくチームとしてうまく整理整頓ができていないということなのでしょう。
 時間をかけて作っていけば形になる可能性もあるのでしょうが(3.5バックではなくシンプルな3バックにすれば話は早い気もしますが)、4バックが安定しているのなら無理にそこから変える必要性も感じませんし。
 代表の活動時間はあまり取れない状況なだけに、しっかりとクリティカルパスを見定めていかなければいけないはずです。
 …それともザッケローニ監督自身に引き出しがあまりないから、3バックにすることでとにかく可能性を広げてみたいということなんでしょうか?



 ともかく、「終盤にハーフナーを投入して放り込み、それっぽい形を強引に作ってなんとなく雰囲気だけ良く終わった」というような試合にだけはならなくて良かったなぁと思います。
 あれ?それってどこかのJ2チームとあんまり変わ(以下略)