ジェフ経営情報'11後編 「債務超過」への危機と「負債」の増加

 前編に続き、今回は資産面と言うことになります。

 『繰越利益余剰金』は今まで会社に残っていた損益に、『今期純利益』を足し引きしたものです。
 ジェフの『今期純利益』は3億1200万円の赤字でしたので、『繰越利益余剰金』は6億2000万円の赤字となります。
 ようするに、「累積赤字」というやつですね。


 『繰越利益余剰金』から『資本金』を差し引いた額が、『純資産』となるわけですが、ジェフは前年ユナイテッドパークのオープンに合わせて「増資」を行っております。
 その際、経営データ上にはない「資本準備金」と思われる3億9000万円もプラスとなっているため、「実質の資本金」は8億7000万円となり、『純資産』は2億5900万円となっています。



 心配なのはこの『純資産』が赤字となることで、それは「債務超過」になるということを意味します。
 2013年から導入されるクラブライセンス制度では、「債務超過」のクラブもJFL降格(Jリーグライセンス剥奪)となるという報道が出ています。
 10年度末の『純資産』が2億5900万円で、クラブの赤字額は過去2年間「特別損失」を抜きにしても3億円を超えています。


 今期のチーム運営を見ても規模を縮小しているようには見えないですし、これまでのところ観客動員数でも昨年以上に減少していますから、次の決算時にも「債務超過」に陥る可能性が現実味を帯びてきました。
 クラブとしてはチームの規模は縮小せず、今期でJ1昇格を決めて2012年にJ1で利益を出そうという青写真なのかもしれませんが、『営業利益』、『経常利益』が赤字に転落したのは、まだJ1に在籍中だった09年度から。
 もっと言えば「特別損失」も含めた『当期純利益』で最終赤字となったのはその前の08年度からですから、J1に昇格すれば黒字に戻せる…という考えは安易ではないかと思います。


 経営面を考えれば、より根本的な策が必要となるのではないでしょうか。
 その中で一番に考えられるのはコスト削減・チーム規模の縮小(その分育成などに力を入れると言う意味も含めて)ではないかとJ2降格時にも話していたわけですが(もちろん一度決めたからには今さら引き返せませんが)、フロントはどのような経営方針を考えているんでしょうね。
 まだまだ親会社に頼れる…というのであれば、それはもう外部の者にはわからないところですけど。
 ただ、『広告料収入』に関しては過去6年そこまで大きな変化はないですし、資本面でのサポートも増資してもらったばかりなのだから、大掛かりな補填というのはあまり期待できないのではないかと思うのですが、どうなんでしょう。
 それにクラブが目標と掲げている”自主自立の経営”からは、当然離れてしまうことになるわけですが…。



 最後に計算結果を。

 『総資産』に対する「営業利益率」、「経常利益率」は当然マイナスとなっています。
 また、『純資産』に対する『当期純利益』の計算式である「自己資本利益率」も、厳しい数値が出ていますね。


 そして、今回は「総資本対自己資本比率」も数値が下がっています。
 これは『総資本』の中の『純資産』の割合を計算したもので、数値が高いほど全体の資本の中での「自己資本」の割合が高いこととなり、安定した経営状態であることが言えます。
 10年度のジェフは前年に比べて『純資産(自己資本)』が3億1300万円減少した分、『総負債』が2億7600万円増加してしまいましたので、その分負債に頼った財務状況になっています。
 当然あまり好ましい傾向とは言えません。
 『純資産』を増やすためにも「累積赤字」を解消したいわけで、そのためにはしっかりと『当期純利益』を出せる経営に改善していかなければならないと思います。
 まずはクラブの経営に関する将来のビジョンを聞いてみたいところなのですが、サポコミでも残念ながら話題には上りませんでしたね…。