村井のアンカー起用と今後への期待

 猛暑で過ごしにくい日々が続いていましたが、先週末は台風の影響もあって涼しく…というかむしろ寒いくらいでしたね。
 ジェフ対札幌戦が行われた23日も比較的涼しく、選手にとってもプレーしやすい気候だったのではないでしょうか。
■決定機が作れない中で、村井が先制ゴール
 ゲッセルが累積警告で出場停止。
 伊藤が負傷したということで、ボランチには村井、右ウイングには林がスタメン出場。
 右SBには前節途中から復帰した坂本が、青木良太の代わりに出場となりました。
 札幌は前節GKイ・ホスンが体調不良で欠場し元ジェフの高木が出場しましたが、今節はイ・ホスンが復帰。
 元ジェフの芳賀は負傷中となっています。



 試合序盤からジェフは猛攻を仕掛けていきます。
 ホームだからコンディションが良いのか、気温のおかげということもあるのか、前節などに比べてジェフの選手の動きが明らかに良く、相手を圧倒していきます。
 特に中盤の選手の攻守の切り替えの速さ、運動量、一歩目のアプローチで優位に立ち、中盤を制圧。
 守備でも素早いチェックで相手のミスを誘い、攻撃でもオーロイへのサポートが素早く、ポストプレーからの展開が作れていました。


 意外と米倉は林との方が相性がいいのかもしれませんね。
 林はオフザボールの動きなどで、どんどんゴール前など前に入って行くので、サイドにも動き回る米倉としては、スペースが出来る分やりやすいのかもしれません。



 しかし、ボール支配率は高く、アタッキングサードまではボールを持ち込め、シュートは打てていたものの、最終ラインを完璧に崩す…というところまでは作れず。
 CKなどセットプレーの回数は非常に多かったですけど、ボールを持てているわりには確実な決定機が作れない時間帯が続いてしまいます。


 前半30分あたりからはジェフの勢いも落ちてきて、このままでは嫌な流れで前半を終了してしまうな…と不安に感じていた、前半ロスタイム。
 それまでも中盤の底からボールをうまく散らしていた村井が、遠目からミドルシュートを放つと、これが相手DFにあたり、再び村井がミドルシュート
 これがゴール右隅に決まって、貴重な先制点が生まれます。


 結局相手のDFラインは崩せませんでしたが、その外から村井が正確なシュートを決めた形となりました。
 いつもなら深井がこういったパターンで決めている展開ですね。
■ロングスローから久々のゴール
 後半もジェフペースのまま試合は続きます。
 ジェフの動きも良かったとは思うのですが、この日は札幌の動きの悪さも目立っていた印象でした。
 オーロイなどもそこまで警戒してなかった印象があったとはいえ、足元にボールが入っても潰しきれないシーンが目立ちましたし、2列目の選手の飛び出しにも後手に回ってばかりでした。
 前節水戸戦で頑張っていましたし、その反動もあったのでしょうか。
 このあたりが中位を抜け出せない問題なのかもしれませんが…。



 逆にジェフは、ここ数試合結果が出ていないこともあって、かなり勝負に徹していた印象でした。
 試合序盤から深い位置のサイドスローは、必ずミリガンがロングスローを投げるように徹底しており、ボールボーイが拭いたボールを使用していました。


 そして、後半14分。
 左サイドからのミリガンのロングスローから、オーロイを超えて、後ろから飛び込んできた竹内が合わせてゴール。
 この瞬間、札幌の守備陣はオーロイに3人も付いていて、その前にもう1人が守るなど、ニアでオーロイが1人に対して4人も選手がいる状況でした。
 ミリガンはそこを超えたボールを狙って、後ろから来た竹内が合わせたことになります。


 セットプレーやロングスローで「オーロイを超えた先」を狙うのはジェフのセオリーとなっていますが、相手もそこを警戒しており、ここ数試合はそれもなかなか決まらなかったわけで、久々の得点パターンとなりました。
 逆に言えば、札幌はそこまで研究してこなかったということでしょうか?
 それとも単純に集中力が切れていたのか…。
 自分の記憶が間違っていなければ、ロングスローからのゴールは5月下旬の熊本戦以来で、その前はFC東京戦ということになると思います。



 その後もジェフが攻め続けますが、前半同様、中盤は制圧しているものの、やはりなかなかDFラインの裏を取る・相手を混乱させる…というところまでは至らず。
 MFラインまでは崩せているけれど、肝心の最終ラインは崩しきれない…といった印象でした。
 DFライン前まではボールを持ち込めるから、「攻め込めている」印象は強かったし、「シュートも打てる」距離ではあったけれど、そこからの工夫は足りず、相手の4バックのバランスは最後まで保たれたままでした。


 ちょっと”決め手に欠ける”攻撃だったかなと思います。
 試合展開としては終始一方的な流れで、「得点を取る練習」のようになってしまったかなぁと思うのですが、その状況を考えると若干物足りない部分もあったかなと思います。
 試合はそのまま2-0で終了となったわけですが、点を取れたのは遠めからのミドルシュートとロングスローからだけだったということになります。



 試合前にも言ったように、ホーム等の状況を考えれば”押せ押せの展開”は作れると思っていました。
 その中でどれだけ攻撃のアクセント(変化)を作れるか、相手を崩す形を作れるかが注目かなと思っていたのですが…。
 勝てたことはもちろんよかったですが、もう少し量だけなく質の方も高めていかなければ、アウェイの試合や同等のチーム相手には今後も苦戦するのかもしれません。


 J1昇格を目指すためには、ライバルチーム以外には勝つのが前提で(札幌が今後順位を上げてくる可能性はあるでしょうが、少なくともこの日の札幌の内容は悪かったわけで)、それ以外の試合では結果はもとより内容も求めていかなければいけないと思います。
 これが昨年の「教訓」だと思いますしね。
■ドワイト監督のアンカー
 しかし、村井がボランチでプレーして、山口がSBでプレーするなんてことは、少し前までは考えられなかったことですね(笑)
 昨年などは村井をSBで起用することは考えられたと思うのですが、ドワイト監督の場合SBに守備が出来る選手を置くことがポイントだと思いますし、ちょっと状況が変わっていますよね。



 ただ、振り返ってみれば、当初は伊藤のアンカーの方が個人的には意外でした。
 サイズ的にも伊藤の方が小さいですし、経験も村井の方が豊富ですしね。
 伊藤のアンカー起用も村井のアンカー起用も、ロジックとしては同じなのでしょう。


 ドワイト監督のアンカーは守備では単純にCBの前のスペースを消すことをメインとして、広範囲を守ったり、サイドをカバーリングしたりというようなことはしない。
 その分、SBをある程度守備に専念させて、「DFラインの4人で守る」意識を強く持つ。
 そして、中盤全体のバランスに関しては、勇人に任せる。
 勇人はバランサーとしては一流の選手だと思いますしね。



 周りの役割がはっきりしている分、結果的にアンカーなのだけれど『チームの軸』というよりは、ある程度『取り外しのできる』ポジションになっているのかなと感じます。
 ゲッセルの時はロングボールを跳ね返すことと、相手が守りを固めた時に前に出る仕事を。
 伊藤と村井の時はそこからのパスの展開を、期待しているのだと思いますし。



 村井はその展開の部分で、まずまずのプレーを見せていたとは思います。
 ただ、この試合はあまりにも展開が一方的だったわけで、あまり参考にはならないかもしれませんね。
 1つの目安としてではありますが、合計のシュート数もジェフが26に対して、札幌は5だったわけですし。


 例えばボールを散らす仕事を求められる中で、プレッシャーが来た時に素早くパスを回せるのか(ここはゲッセルが苦手としているように感じるし、伊藤が2人よりリードしている部分ではないかと思います)。
 あるいは、守備における一対一の対応はどうか。
 また、運動量はどうか…。



 このあたりはこの試合では判断しきれない部分だったと思いますし、真価を問われるのはまだ先かな、と思います。
 ただ、やはり左足でのロングキックの精度は素晴らしく、セットプレー時などのボールもさすがだったと思いますし、先制点を決めたミドルシュートも見事だったと思います。
 あまり伊藤やゲッセルは、ああいったシュートを打つシーンはなかったと思いますし、攻撃参加するシーンなどは素直にワクワクしました。
 村井が2人にもいい刺激を与えていって、良い競争になっていけば…。
 今後のポジション争いが楽しみです。