青木良太のオーバラップがゴールに結びつく

 全国的に真夏のように非常に暑い日が続いているここ数日。
 皆さん、体調はいかがでしょうか?
 私は既にバテ気味です(笑)
 選手にとってもこの暑さは、さすがに応える部分があるんじゃないでしょうか。


 そんな中で、ジェフのスタメンは前節から出場停止明けのオーロイが久保に変わって復帰したのみ。
 基本的に今のレギュラーは、このメンバーということなんでしょうね。
 あとは何人かの怪我人が回復してどうか…といったところですけど、ベンチ入りメンバーも固まってきている印象です。
■退いて守ってきた湘南
 試合序盤から、湘南は思ったよりも前に来ませんでしたね。
 ここ2日間、全国的に気温がかなり高く、週の真ん中のアウェイゲームになったということで、抑え気味に戦おうという意識もあったんでしょうか。
 思ったよりも前からの激しいプレッシングはなく、むしろ引いて守るサッカーになっていました。
 他チームと同様、オーロイの周りにCBとボランチを設置して、周りのスペースを消す守備でしたね。


 攻撃に関しては、田原を狙ったロングボールが多く、アジエル等の中盤の選手がそれを狙うパターン。
 ジェフもオーロイをめがけたボールが多く、開始直後はボールが落ち着かない状況となりました。


 ボールの支配率はジェフが高い状況だったものの、このあたりは湘南も狙い通りの展開ではあったんだと思います。
 後半24分には田原が後方からのロングパスに対して、強さとスピードを駆使してミリガンを振り切って倒され、あわやPKというシーンも…。
 ジェフの方は、セットプレーのこぼれ球を狙ってシュート…という攻撃が多い展開でした。



 試合が動いたのは前半38分。
 右サイド深い位置で勇人が粘った結果ミスを誘い、相手のクリアがオーロイへの浮き玉のパスのような形となります。
 それを落として、米倉が裏に抜けだし、シュート。
 これは相手に跳ね返されますが、こぼれ球を深井がうまく合わせてジェフが先制します。


 相手のクリアミスも問題だと思いますが、この時間帯、湘南は全体のラインが下がりがちな印象でした。
 その前に深井が左サイドで縦に鋭いドリブルを仕掛けたことで、相手が退いてしまったんでしょうか。


 それを抜きにしても、湘南は試合序盤から全体が下がりやすい傾向があったように思います。
 ジェフ対策として、オーロイとその周りを潰すためにボランチ2人が低めに構えるのは良く見られるパターンですが、最終ラインはなんとか頑張ってある程度の高さをキープすることが重要となるはずで。
 最終ラインが下がってしまっては、オーロイの周りの密集度を高めることが出来なくなってしまいまからね。
 このあたりからも、この試合の湘南は上手くいっていないのかなぁと感じました。
■良太の攻撃参加が効果的に機能
 オーロイが前半のプレーで負傷したようで、後半開始から久保が投入されます。
 この交代によりジェフは絶対的な高さはなくなりましたが、その分運動量が増した印象でしたね。


 愛媛戦から感じていたのですが、オーロイが1トップの時はオーロイがいる場所か少しゴールから離れたあたり(ジェフの中盤方向)にロングボールを出す傾向がありますが、久保が1トップの時は逆に若干ゴールに向かうボールや左右に動きを付けたボールを出す傾向があるように感じます。
 この試合では湘南が深く守ってきたので、あまりゴール方向のロングボールは出せませんでしたけど、このあたりからも工夫しようという意図は少しずつ感じられるのかなぁと思います。
 ただ、その分受ける側にとっても難しく、湘南戦での空中戦では久保も苦労していた印象もあります。



 後半12分。
 左サイドの攻撃から良太がボールを持ち、深井にパスを回すと、米倉が相手の選手と選手の間でボールを受けます。
 米倉がボールを持った瞬間、良太がサイドを駆け上がって相手SBを押し込み、米倉がフリーに。
 そこから中央へのパスを選択すると、久保がスルーし、最後は後方から走り込んできた勇人がゴール。
 今期のジェフにとっては珍しく、4人、5人と複数の選手が絡んでのゴールで、非常に良い展開だったと思います。


 湘南は基本的にはアジエルが右SHとなるはずですが、そこから自由に中盤を動き回っていきます。
 これにより守備時にサイドが右SB臼井だけになることが多く、前半から深井にとっては非常にやりやすい状況でした。
 このシーンではそのアジエルの穴を埋めるため、中盤の永木が相手から見て右に寄ってきたわけですが、ジェフは左サイドに米倉が流れただけでなく、良太も攻撃参加したため、深井と3人で数的優位が作れました。
 その後の米倉の前の相手を釣るオーバーラップも含め、良太の攻撃参加が効果的に機能した2点目だったと思います。



 後半23分には伊藤からの正確なクロスにヘディングシュート、その直後にもミドルシュートと、久保が2つ続けて湘南ゴールを襲いますが、得点とはいかず。
 久保は公式戦の出場も慣れ、足元でのシュートや飛び込みも持っていると思うのですが、そろそろゴール前のプレーの質も問われてくるのかなと思います。
 もう少し落ち着いて打てればいいのでしょうけど、そのあたりはやはり経験なのでしょうか。
 個人的にはオーロイを脅かすほどの存在になってほしいと思うのですが。


 その後もジェフ優勢で試合は続き、2-0のまま試合終了となりました。
■相性も良かった湘南戦
 0-2、0-4、0-4の3連敗をしている湘南は、やはりそれなりにチームに問題を抱えている印象を受けましたね。
 この試合に関しては連戦ということもあったのかもしれませんけど、そもそも選手達が全く動けていなかった印象です。
 後半は1点を返そうと前に出ようとする意識は感じましたが、そこに至るまでの動きのキレを感じられず。
 選手の判断も遅く、動き出しも鈍くて、見ていて「きつそう」な印象を受けました。


 逆にジェフとしては、何をするにしてもやりやすい状況。
 相性も良かった気がしますね。


 アジエルが自由に動くことで、守備時に右SHが空く状況で、深井へのボールが入りやすく、左からの攻撃がやりやすかったこと。
 湘南の攻撃はFWが落して中盤が受けるパターンが攻撃のスイッチになり、そこからサイドへの展開などを織り交ぜてくるわけですが、ジェフは基本的にSBも絞りボランチもCBの前を消す(他のカバーにはあまり行かない)中央を固める守備なため、起点をつぶしやすい状況にあったこと。
 湘南の動きが悪いことが一番の問題点だとは思うのですが、戦術的にもかみ合わせの良い相手だったと言えると思います。



 そんな中でホームとはいえ、あの暑さの中、中2日の試合であれだけ走れたのは立派だと思います。
 一番バテそうなオーロイが栃木戦出場停止のためお休みで、この試合でも45分で交代したのは、結果的に良かったのかもしれませんね。
 ドワイト監督は多少状況が悪くとも選手交代のタイミングを引っ張るタイプの監督ですし、早期に交代の踏ん切りがついたという意味でも良かったのかもしれません(笑)


 それとこの試合では前半から両SBが積極的にオーバーラップをしかけ、サイドからの攻撃に厚みを作っていていました。
 相手が引き気味の状態で前が空いており、SBが攻撃参加しやすい状況だったことは差し引いて考えなければいけないと思いますが、これまで後方の選手が飛び出していって攻撃に厚みを作る…という形はほとんど作れていなかったジェフなだけに(SBの攻撃参加は徐々に増えていたものの機能しているとは言い難かった)、非常に良い傾向ではないでしょうか。
 2点目は良太の攻撃参加が大きく作用した形ですし、SBの攻撃参加が結果として良い方向に表れた…という点も大きいんじゃないかと思います。
 これによってチームとしても、監督としても、SBの攻撃参加の有効性がはっきりした、ということになりますからね。
 まぁ、問題はまともな状況の相手でもこれがうまくいくかどうかですけど、良太は前節あたりから吹っ切れたプレーが増えていると思いますし、自信も戻ってきたのかな?とも思います。
(湘南にとっては失礼な言い方かもしれませんが、もっと出来る相手だと思うだけに今回の試合の出来は「まともではない」状況だと私は思います。)



 すでに中央を起点とした攻撃は各チームに警戒されていますし、1トップがターゲットとなってサイドからウイングが攻める攻撃だけではなく、サイドからチャンスを作ってゴール前の選手が合わせる形も作れればいいですね(そうなってくると、今度は中の合せる動きが重要になってくる気もしますが)。
 そうすれば中央のスペースも空いてくるでしょうし、結果的に前線も活性化されるかもしれない。
 けれども、SBが攻撃参加すればその分リスクも出てきますから、そこへのリスクケアと攻撃参加する勇気が(SBだけでなくチームとしての勇気も)必要になってくるんだと思います。
 SBの攻撃参加の形をチームとしてしっかりと作れていけるかどうか。
 今後に期待したいと思います。