アタッキングサードの量と質と

 ジェフはベンチこそ違うメンバーですがスタメンは前節と同じ。
 対する横浜FCはホームにもかかわらず、ベンチ入りメンバーが6人しか入っていませんでした。
 何か問題でもあったのかな?と思ったのですが、どうも怪我人が多いことが原因だったようです。


 前節鳥栖戦で2ゴールを挙げたカイオが出場停止、前節試合に出場している柳沢や根占も怪我。
 4月のジェフ戦で攻撃のアクセントになっていた寺田も負傷中で、大黒もFC東京に移籍。
 台所事情はかなり厳しい状況なのでしょうね。
 それでもしっかりとジェフを研究し、良いサッカーをしてきたと思います。
■リズムをつかめなかった前半
 試合序盤、ジェフは前節と同じように、ネット目掛けたロングボールが中心になっていました。
 しかし、前節と同じようにそこで相手に競り負けてしまう。
 ネットのコンディションもベストではないのでしょうけど、これはシーズン序盤からの課題ですからね。
 落下点へ入るのが一歩遅く、その時点で不利になってしまうシーンが目立っていました。


 しかし、チームもそれはわかっているはずなのに、そこばかり狙うというのは如何なものでしょう。
 試合序盤は低い位置でボールを失うリスクを避けるために、FW目掛けたロングボールを蹴る…。
 これはJFAのコーチの方達は良くやる手の1つだと思うのですが、逆にそこでボールを失ってばかりではリズムが悪くなるように思うのですが。
 岸野監督もネットのところを狙えと指示を出していたようですしね。
 実際、なかなか競り勝てずイライラの募ったネットは前半10分に、相手のジャンプ時に手をかけてイエローを受けてしまいます。



 前半15分あたりからは細かくパスを繋ぐようになっていき、前半20分には素晴らしい攻撃も。
 後方の山口から相手CBの前を斜めに入ってきた倉田に向けたロングボールがぴたりと入り、そこから左前方に飛び出したアレックスにスルーパス
 そのままアレックスが放った角度のないところからのシュートは決まりませんでしたが、流れるような攻撃だったと思います。


 横浜FCはラインを下げてジェフの攻撃を受けようという意識が強かったですから、中盤にスペースが出来ることが多かったと思います。
 しかし、その分守備においてのフィジカルは強く、なかなかそういったプレーも増えていかない。
 前線でネットがポストプレーになりきれないことや、オフザボールで走りまわる選手が少ないこともあって、この試合でも攻撃が単発になっていた印象でした。
 相手の守備がスペースではなく人に付くために「一人抜けばスペースがある」と思ってしまうのか、攻撃が強引になってしまっていたように見えました。
 前半20分の倉田のようなオフザボールでボールを受ける動きがもっとあれば、効果的な攻撃が出来るんじゃないかと感じていたのですが…。



 一方の横浜FCもなかなか攻撃でリズムが作れずにいました。
 序盤はセットプレーで決定的なシーンも作っていましたが、その後は危険な位置でのセットプレーも減っていきます。
 ボールを持ってもポストプレーからその狭いエリアを突破…という狙いばかりで、窮屈な攻撃になっていた印象です。
 大黒がいれば、この狭いエリアでもポストを受けてくれるんだろうけど…と思いながら、見ていました。


 しかし、後半44分。
 センタリングからの展開で、ジェフが失点してしまいます。 
 このゴールシーンでは横浜FCが久々にジェフの薄いところを突いてきたと思います。
 後方からのロングボールに難波がジェフから見て右サイドを駆け上がり、素早くクロスを上げて西田がヘッドでゴールと言うシーンでした。
■高い位置にボールは持ち込むものの…
 後半開始と同時に、ジェフは伊藤に変えて谷澤を投入。
 谷澤が前線で動き回りながらくさびのボールを受けることで、前線に1つポイントが作れるようになっていきます。
 谷澤はフィジカルがしっかりしていますから、相手のハードなマークに合っても十分対応できていましたね。
 開始直後にはその谷澤が絡んで左サイドを突破。
 倉田のシュートがゴールネットを揺らすも、オフサイドでした。
 この時間帯は開始直後ということもあって、少し横浜FCの守備も動きが止まっていたかなと思います。



 その後は攻めるジェフ、守る横浜FCという構図に。
 しかし、谷澤の投入でようやく高い位置まではボールを持ち込めるようになりましたが、そこからアタッキングサードの質に関しては、あまり工夫が感じられませんでした。
 一発のあるネットなどへは厳しくマークが付いていましたし、結局アタッキングサードで苦しむ試合展開だったように思います。


 結局、ラストプレーの量を増やすことを目標にするにしても、最後のパス、シュートをどう放つかが明確でなければ、量も増えていかないということではないでしょうか。
 アタッキングサードにボールを持ち込めば自動的にラストパス、シュートに持ち込めるかというとそうではないわけで、結局無駄なボールポゼッションの時間ばかりになってしまいます。
 カウンターを狙っているのであればそのままシュートという展開もあるでしょうけど、ジェフのサッカーを見るとカウンターを重視しているわけでもないのでしょうし。
 その結果、ボールを持つ時間はジェフの方が長かったと思うのですが、シュート数は7本、横浜FCは10本。
 ボールはもてていても、実際にはラストパスの量でも敗れたということになります。



 ボールを持ってもなかなか相手が揺さぶれない、相手の守備がずれていかない…。
 そんな時間帯が続き惜しいシーンもなかったわけではないですが、決定的なゴールチャンスというのは多くなく、そのまま0-1で試合終了となってしまいました。
■窮屈なシュートになる原因
 水戸戦は1-0で勝利。
 横浜FC戦は0-1で敗戦。
 試合の結果は違いますが、ジェフの出来は大きく変わらなかったように思います。


 結局のところ、水戸戦はネットの一発で勝った。
 個人技で勝った試合だったと思います。
 それに対して横浜FCは早川、渡邉、ホベルトなどフィジカルの強い選手を中心に人に付くサッカーをして、ジェフの個の部分を止めたと。
 それだけの違いだったんじゃないかと思います。



 ネットがマンマークに弱いことは以前からわかっていたこと。
 昨シーズンもJ1の寄せの厳しさに苦しんでいましたし、今年もJ2屈指のマンマーカーであろう土屋に完封させらててしまったことがあります。
 厳しいマークがついたときに自分は犠牲になってスペースを作り周りを活かす…といった選手ではないから、一体一で負けてしまうと一気に苦しくなる。
 だから、ネットの一発ばかりに期待するのはどうなのかな…という不安は以前からありましたが、大事なこの時期になってそれが出てしまったということになります。


 加えてネットがあの位置で潰されると、前線のど真ん中が機能を停止してしまうという大きな問題もあります。
 相手をひきつけてそこで蓋になられるとゴール前にスペースがなくなってしまいますから、ネット以外がゴール前に入っていけたとしても完全にフリーな状況で受けるのは難しくなってしまう…。
 加えて、倉田や深井も動かずに受ける傾向の強い選手だと思うので、ますます交通渋滞が起きてしまう。
 その結果、ゴールの外からのシュートや窮屈なシュートシーンばかり(あるいはボールを保持していてもシュートが打てない)になってしまうんじゃないかなと。
 例えばオシム監督はこういう状況になるのが嫌だから、前線で走って周りを活かせる選手を好んで使っていたのではないかと思うのですが。



 この試合の敗因がそれだけとは言えないでしょうし相手をうまく揺さぶれない問題も大きいと思うのですが、それは以前からも見られていた問題だけに、今回はそこが目立って見えてしまいました。
 ネットを起用する判断においては、J2の相手チーム(特に下位チーム)にマンマークでネットを止められるだけのCBがいるかどうかという現実的な部分もあるのでしょうけど、ここからは下位チームに勝てばいいだけではなく全戦全勝するつもりで戦わなければいけないわけですしね。


 ネットだけの問題ではないですが、次節からネットは累積警告で2試合の出場停止。
 これでネットに頼るサッカーというのはできなくなるわけですし、そうでなくとも負ければスタメンを交代するのがセオリーのようになっていますので、何かしら変化があるのは確実だと思います。
 その中でチーム全体が良い方向に変わっていけるかどうか。
 この敗戦で厳しい状況になってしまいましたが、まずは次節までの準備が非常に重要になってくるのではないでしょうか。 
 ともかく、最後まで気持ちだけは落とさずに頑張っていきたいですね。