本当の“強さ”を問われた試合
振り返るのも辛い厳しい試合になってしまったかなぁと思います。
個人的には先週のジェフの決算書が非常にショックだったので、ダブルパンチといった感じでした(笑)
もちろん結果の出なかった試合はどの試合も基本あまり振り返りたいとは思わないのですが、それでもチームの現状を知るということは大事なことだと思いますし、ぼちぼちと書いていきたいと思います。
それにしても、岐阜は緑と黄色のユニでパンツが白。
ジェフは白をベースに緑や黄色のライン。
芝もところどころ白くなっていて緑と白で、テレビ観戦だと目が慣れるまで大変でしたね…(笑)
現地までいかれた方、お疲れ様でした。
■攻撃面でのアクセントが課題
ジェフは熊本戦と同じメンバーでした。
前節の後半開始と同時に深井と倉田を変えたことからも、このメンバーでのサッカーには不満があったのかと思ったのですが、そういうわけでもなかったのでしょうか。
まさか「Never change a winning team」ということ?
確かに勝った試合であることには変わりないのですけれど…。
試合序盤、チャンスを作っていたのはジェフの方でした。
前半7分には右サイドで青木良太、山口、工藤などがつなぎ、最後は右に大きく開いた勇人がクロスを上げ、ネットがヘディングシュートを放つも決めきれず。
前半10分には右CBの福元から左サイドに開いていたアレックスの足元にぴたりとはまるロングパス。
最後は深井がシュートを放つも、ゴールならず。
前半14分にも右サイドでパスをつないでから一度下げて、良太からアレックスにサイドチェンジ(惜しくも通らず)。
前半途中までは悪くない流れだったと思います。
右サイドにパスの起点となれる工藤を置き細かくつないでいって、勇人や良太が開きクロスを上げる。
あるいは、良太や福元下げて逆サイドにサイドチェンジ。
あの縦パスばかり強引に狙っていたジェフが戦術的なバックパスからサイドチェンジを狙えるようになったのですから、これは1つの進歩なのではないでしょうか。
ただ、その一歩を作るだけに、どれだけの時間がかかったことか…(笑)
しかし、いい形でボールは動かせても、なかなか完全には崩しきれない時間帯が続きます。
前半15分過ぎには、右サイドから細かくパスをつないでいって、アレックスにボールが入ります。
アレックスがネットにボールを当てて受け直し、工藤につないで、最後はオーバーラップした良太がクロス…といった展開が作れました。
けれども、確かに良い形だったかもしれませんが、パス回しは決して速くなかったですから相手も落ち着いて対処していましたし、そこからの変化や最後の部分での精度に関しては物足りなさも感じてしまいました。
このあたりは前節の熊本戦と同じですね。
このメンバーで戦うとスムーズにボールは動くようになるのだけれど、ラストプレーでの変化や精度に課題が残る。
そのポイントをどこでどのように作り出すのか…。
カウンターサッカーではなく、ポゼッションサッカーで主導権を握ろうとしているだけに、そこからどういったアクセントを加えるのかが重要だと思うのですが、そこが作りきれていないような気がします。
パスワークも含めたスピードなのか、人が動くことによるスペースのコントロールなのか、針の穴を通すような精度なのか…。
あるいは、個人でのドリブル突破などによる打開力か。
ともかく、良い形は作れていたとは思うのですが、攻撃面での工夫が足りず、決め手に欠く試合序盤になってしまっていました。
■プレスが効かず、ラインが下がる
ジェフがなかなか攻撃の打開策を見出せない状況が続くと、徐々に岐阜もジェフのサッカーに慣れていった印象でした。
キックオフからフリーになることが多かったアレックスに、しっかりとマークを付けるようになり、それだけで岐阜の守備は大きく改善されたように思います。
ジェフの方はロングボールを蹴ってもネットが吉本に競り負けることが多かったし、前半途中まではポイントとなっていたアレックスの前が封じられ、ゴール前にもうまく運べなくなっていきます。
また、岐阜による前からのプレスも厳しくなっていきました。
やはり工藤がボランチにいないと、プレスが来たときにオロオロしてしまうシーンが出来てしまうのかなぁと思います。
これによって右サイドでの細かなパスワークも、次第に作れなくなっていきます。
逆にジェフの選手達は前半25分過ぎから、足が止まっていったように思います。
前半29分、ジェフの右サイドでボールを奪われると中盤中央に持ち込まれ、そこへのチェックが甘く、相手右SBに展開されてフリーでクロスを上げられてしまいます。
失点には結びつかずに済みましたが、この試合のジェフは序盤からプレスが緩いところがあり、前半13分にも相手右SBがフリーになり縦パスを出され、あわや抜け出される(オフサイド)といった展開もありました。
こうなってくると、DFラインも思い切ってラインを上げきれない状況に。
すると前半30分。
相手中盤選手がフリーでボールを持つと、対面したネットが簡単にいなされ、そこから岐阜の右サイドに展開されて、グラウンダーのセンタリング。
櫛野の目の前を通りゴール前で合わせられ、先制点を奪われます。
ネットや櫛野の対応も残念でしたが、プレスが効いていないことでラインも下がっており、ボランチの位置からでの1つのパスで深いところまでボールを持ち込まれてしまいました。
全体的に良くない状況だったと思います。
また、その直後の岐阜の攻撃も左サイドからのクロスに櫛野がファンブル。
あわや2点目というシーンでした。
■畳みかける展開も作れず
その後は停滞状態(ということは岐阜ペース)で、後半へ。
後半が開始しても流れが変わらないジェフは、51分に谷澤に変えて倉田を投入。
そこからは、もう戦術どうこうではなかったと思います(笑)
ともかく強引に何でもいいから、前へ前へとボールを運ぶ。
後半13分には左サイド高い位置からのセットプレーで、グラウンダーのパスから倉田がシュート。
その一分後には山口の縦パスからの展開を深井が拾って、そのままシュート。
後半28分には良太がCKからヘディングシュート。
どれも相手GK野田にセーブされてしまいます。
野田もそうですが、CB2人も含め、岐阜の守備は非常に安定していましたね。
ジェフの方は期待の倉田もあまり良いところはなしで、結局後半もセットプレーでのチャンスばかりでした。
これは前節も同じような展開でした。
やはり倉田は「足元で受けてドリブル」だけでなく、もう少し周りを活かすプレーやオフザボールでの工夫を覚えないと…。
良い素材だと思うだけにもったいない…というか、どうしてコーチ陣ももう少し言ってあげないのかなぁと。
育成年代の選手ならともかく、もうそろそろ賢さも身につけなければいけないなのではないかと思うのですが。
2試合スタメンから外したことが1つメッセージ…とも思いたいですけど、2試合とも困ったところで倉田投入…ですしね(笑)
ともかく、岐阜の守備陣は最後まで集中していました。
ジェフは孝太、太田と攻撃的なカードを切っていきますが、大きな変化は作れず終いでした。
ここがシーズン前半と違うところではないかと思います。
シーズン前半の相手チームは対戦相手がジェフということもあったのか、ジェフが試合終盤に多くの攻撃的なカードを投入すると、それに合わせてラインが下がってくれたところもあったのですが、ここ最近は手の内もばれてきたのか落ち着いて対処されるようになってしまいましたね。
ここ2試合に関しては早めに1枚目のカードを切っている問題もあるのかもしれませんけど、以前のような試合終盤に畳みかける展開は作れなくなってしまっています。
試合終盤まではダメでも最後に選手を大量投入して得点を奪って勝点を確保する…というのが1つのパターンだったジェフにとっては、意外と大きな問題なのではないかと思います。
まぁ、逆にその手が使えなくなった分純粋に「良いチームを作らなければいけない」と思えれば、結果的には良い方向に進む可能性もあったりもするのかもしれませんが…。
後半33分には福元が2枚目のイエローを受けて退場。
これで万事休す…と言いたいところですが、たぶんこの退場があってもなくても大勢は変わらなかったかなぁと思います。
結局0-1で試合終了となりました。
■強いチームを作り上げるためにも
敗因の1つのポイントは選手達のコンディションだと思います。
ホームでは毎試合コンディションが良好で、それに比べるとアウェイでは若干劣ることが多いジェフ。
ただ、若干劣ると言っても相手と比べて酷い状況ではなかったと思いますし、「並」くらいだったのではないでしょうか。
だから、ここまではアウェイで負けてもあまりコンディションを言い訳には出来ないのではないかと思っていたのですが(逆に言うとコンディションが良好でなければ勝てないということになってしまいますし)、今回は本当に酷かったような気がします。
もしかしたらホームにコンディションを合わせているから、その分アウェイで悪い状態になってしまっているのでしょうか。
もちろん気温の暑さとか、移動の問題などもあるでしょうけど。
ともかく、今日のジェフは選手達が動けていない、体が重い印象でした。
基本的にはプレッシングが根底にあるチームですから、選手が動けていないとどうしようもない部分があるということでしょう。
けれども、J1昇格を目指すのであれば、当然そんなことは言い訳には出来ないわけで。
今日はチームとしての本当の“強さ”を問われた試合だったような気がします。
じゃあ、その“強さ”とは何なのか…というと、非常に難しいテーマになってしまうのですけど(笑)
個人的には、ちょっとくらいチームのどこかに問題が生じても、結果を残してしまう力ではないかと思います。
この試合だと選手のコンディションが悪くても、例えば選手層で補って勝点1を確保するだとか。
戦術的に1人が厳しくマークされても、その分他の選手を使ってチャンスを作るとか。
出場できな選手がいても、他の選手が穴を埋められるだとか。
単純にパワーがダメならスピードでとか、完全に崩せなければセットプレーでとか、基本的にはサッカーにはいろいろな可能性が考えられるわけで。
大括りでのチームのポリバレント性というか、総合力で問題点をカバーしあえる力が、サッカーにおける“強さ”なのかなぁと。
チームとしての“強さ”をそうやって考えるとすれば、今のジェフは良い状況でなければ、いい試合をすることが出来てない。
ホームであり、選手のコンディションが良く、戦術的にうまく相手にはまらないと、結果が残せていない。
ようするに、“強さ”が足りないんだろうなぁ…とこの試合を見ていて感じました。
チーム作りに関して考えると、なんだか全く違う2チームを作っているような印象すら感じますね。
1つは前半途中までのような人も動いてパスをつないで良い形までは作れるけれど、攻撃の最後のアクセントが作れていないチーム。
もう1つは後半途中から倉田のような選手が入って、個人技での突破を強く意識したチーム。
最終的に2つがうまく融合出来ればいいのでしょうけど、熊本戦、岐阜戦と2試合を見た限りでは、チームが違いすぎて少なくとも早期にまとめ上げるのは至難の業ではないかと思います。
2つのチームが出来てしまっている分チーム作りも遅くなってしまっているのが問題…というか、実際のところは「個人での突破に重きを置いたチーム」に限界が来てしまったから、そこからチームを変えざるを得なくなってしまったのではないかと。
前半の戦い方で攻撃のアクセントが作れなかった…というのも、これまでその部分を個の能力ばかりに頼ってしまっていたから、それ以外で攻撃のアクセントを作るところがおざなりになってしまっていたのではないでしょうか。
ある意味でクラブ全体の慢心と言ってもいいのかもしれません。
じゃあ、「今から頑張りましょう」と言ってもそういった部分に関してはそう簡単に作れるものでもないでしょうし、だからこそ戦力差で何とか勝点を獲得していた頃から慢心せず、チームとして(選手としてではなく)どういったサッカーを作るかを明確にしていなければいけないと思っていたのですが、もう後戻りはできないですしね。
今後、前半のような戦い方を今から作っていくのか、後半のような個の能力に頼ったサッカーをより推し進めていくのか。
(多分後者に対しては「そういったサッカーをしていますよね?」といってもチーム関係者は認めないでしょう。でも、目指していなくても実際にはそうなっている。そのあたりから既にチーム作りにおいてのギャップがあるんじゃないでしょうか。)
今まで不明確だった部分を、そろそろはっきりとさせて行かなければいけないのではないかと思います。
逆に言うとそのあたりの軸や方向性が明確にならない限りは、当然強いチームも作り上げることはできないんじゃないでしょうか。
軸がしっかりしていないから、何かを変えようとするとガクッと一気に全てがぶれてしまう。
臨機応変に対応できない。
この辺りはクラブの運営も同じなのかもしれませんし、ジェフというクラブにとって大きな課題なのかもしれませんね。