2010シーズン前半を振り返る その2 スタイル編

 その1に続いて、その2ではサッカーのスタイル。
 2010シーズンにおけるジェフのこれまでの戦い方を振り返ってみたいと思います。
ちばぎんカップでのサイドでタメを作る形
 今期のジェフのスタートとなったちばぎんカップでは、非常に期待の持てるサッカーを疲労してくれました。
 工藤と勇人のトップ下2人が両サイドに流れてSBと3人でトライアングルを形成しタメを作って、そこから裏を狙う同サイドのウイングにスルーパスを出したり、トップ下2人が流れたことによってできたスペースに逆サイドのウイングが入ってきたり、巻をめがけたアーリークロスを狙う攻撃もあってバリエーションも多く、組織的な狙いのはっきりとした良い攻撃が出来ていたと思います。



 しかし、シーズンが開幕するとその形はほとんど作れず。
 開幕戦の序盤からショートパスではなくロングボールが増えてしまい、サイドに人数をかける形も見られなくなってしまいました。


 原因はいろいろ考えられるのかな、と思います。
 例えばトップ下2人への負担が強くなりすぎると言うことで、あえてやめたということ。
 あるいは、トップ下がサイドに流れることで、中央が開いてしまう守備の問題。
 または、工藤、勇人といったビルドアップが得意な選手をサイドの高い位置に流れさせることで、そこまでボールを持っていけなくなってしまったという理由。
(それでもトップ下だけでなく、ウイングなどをうまくからませてトライアングルを作る形は出来るのではないかと期待していたのですが…。)



 さまざまな理由はあったのかもしれませんが、何にしろこのスタイルはちばぎんカップだけでしか見ることができませんでした。
 中盤が流動的に動いて、それにあわせてウイングもいろんな狙いを見せて、相手もジェフの攻撃をつかみにくい状況が作れていたのではないかと思うのですが…。
 このサッカーを強化していくことが出来れば、(相手のミスや疲労を待つのではなく)自発的に相手を崩すサッカーが見れるのではないか…と期待していたので、今振り返っても残念に思います。
■ネット、倉田、アレックスの3トップ
 開幕序盤は苦しみ戦い方も不透明な部分が多かったジェフですが、4月からは徐々にメンバーが固定化されて行きます。


 前線には1トップにネット、左ウイングに倉田、右ウイングにアレックスを起用。
 倉田が左サイドから切り込んで、ネットとアレックスが近い位置で連携をとり、右SBの鎌田、左SBの渡邊がオーバラップするサッカーが形成されていきます。
 個々の連携も熟成してきたのが4月中旬でしょうか。
 

 しかし、このあたりから相手もジェフ対策を取ってきます。
 考え方は単純で、DFとMFの2ラインを狭くしてスペースを消す守備をするということ。
 そして、特に攻撃のスタートである倉田にマークを厳しくつけるということ(あるいはボールを受けた瞬間にフィジカルで止めて、前を向かせないこと)。
 これだけでジェフの攻撃は選択肢がかなり狭まっていってしまいました。


 左ウイングの倉田が切り込む、右ウイングのアレックスがネットに近づくということは、前の3人が中央にかたまると言うことになります。
(右ウイングで起用された当初のアレックスはサイドで開いてたことも多かったのですが、ネットと個別にコミュニケーションをとって徐々に近づきすぎる場面が増えていったように感じます。)
 それに対して、相手チームはボランチの2枚とCBの2枚で、しっかりと小さな四角形をキープする守備をしてきたということですね。
 いくら個人技のある選手達でも2人、3人を同時に抜けるわけではないですし、3人ともいい形でボールを持てば個人での打開力はありますが、フリーランニングでスペースを作るとか周りを活かすプレーはあまり得意ではなく、前線の流れが停滞することが増えていってしまいました。



 加えて、チーム全体でのビルドアップに関してもあまり工夫を感じず、後方でパスはつなげてもそこから大きな展開やポストプレーを使う展開などは作れず、高い位置で前を向いてボールを持つ場面はなかなか作れずにいました。
 前線の動きだけでなく、チーム全体としてのボールの運び方にも問題があったように思います。


 それと、サイドでアップダウンできる渡邊の負傷も痛かったかもしれないですね。
 ボールを持った後のプレーには課題の感じる渡邊ですが、渡邊がタイミングよくタッチライン際をオーバーラップすることで、攻撃のキーマンである倉田へのマークが分散されるシーンも多かったわけで…。




 なお、開幕から1ボランチ、2トップ下で前線からの組織的なプレッシングをウリにしていたジェフですが、シーズン途中から工藤と山口(あるいは中後)の2ボランチと勇人の1トップ下に徐々に変わっていきました。
 開幕直後から1ボランチの脇を相手に使われることが多くその穴を埋められずにいましたし、工藤が高い位置にいると後方からショートパスをつなくことができないという問題もありました。
 その2つを解決するための2ボランチへの変更だと思います。
 問題はある程度解決されたと思うのですが、逆に高い位置で人数をかけるプレッシングは少しずつ弱まっていきました。
 どちらをとるのかは難しいですが、最終的には両方を共存させていきたいのではないでしょうか。
■愛媛戦での変化と甲府戦での苦戦
 対戦相手からも厳しいマークを受け攻撃がなかなか組織的に機能していなくなっていたジェフですが、それでも他チームとの選手層優位さははっきりとしており(特に攻撃的ポジションにおいて優位にあり、その結果選手交代で一気にたたみかけるパターンが出来ていました)勝点は奪えていました。
 しかし、5月29日の第15節水戸戦でついに敗戦。


 すると、次節の愛媛戦ではネットの出場停止の影響もあり、勇人と工藤をダブルボランチにして、1トップを巻、トップ下を米倉、右ウイングを太田…と大幅にメンバーを変更してきました。
 巻、米倉がロングボールのターゲットになり、そこを中盤の選手が拾う。
 多少強引ではありますが、今までにはなかった(空中戦での)ポストプレーから中盤の選手が高い位置で前を向く形が作れるようになりました。
 また、巻がサイドに流れる動きもすることによってゴール前に中盤の選手が飛び込むスペースができていたし、サイドでポストプレーをすることで倉田などが良い形でボールを受けられるように。
 加えて、太田が開いて受けることによって、前線の混雑も緩和されていました。
 そして、守備面でも巻と米倉が激しくチェイシングに行くことによって、前からのプレッシングが再び機能するようになりました。



 しかし、続く甲府戦では、CBダニエルの前に巻へのロングボールが通用せず。
 米倉も好調を維持できず、良いところはなく終ってしまいます。
 また、このチーム一番の武器であったはずの中盤の争いに関しても攻守において相手に先手を取られる展開になり、前線へのフォローも遅れてしまいました。



 この試合でも豊富な選手層を活かした選手交代によってなんとか2-2の引き分けに持ち込みましたが、シーズン後半に向かって不安を残す試合になってしまいました。