韓国への借りはW杯で…

 負けたことは当然悔しいし、ストレスのたまる試合でもあったと思います。
 ただ、課題も複数見つかったわけで、それをここからW杯までにどれだけ修正できるかどうかが重要ではないでしょうか。



 気になったことを数点。
 まずは、何よりコンディションの問題。
 あのようなサッカーをやる上で、運動量とアジリティなどコンディションに直結する部分に問題が発生すれば、致命的になるのは当り前のことだと思います。
 06年、日本代表はW杯前に戦ったドイツ代表戦にコンディションを合わせてしまった結果、本番では調子を落としてしまったと言われています。
 今回の試合はキャンプ直後だったわけで、コンディションも合わせにくい時期だったはずです。
 そのあたりのことを考えれば、この試合でコンディションに問題が出てしまうの仕方のないことなのかなと思います。
 怪我ということで数選手が出場しなかったわけですけど、そのあたりから考えても無理にこの試合にチームを合わせるつもりはなかったと見ていいのではないでしょうか。
(俊輔あたりはスポンサー等々の絡みで、簡単には外せなかったのかもしれないですね。)
 予想はされていたことですけど、韓国は日本戦である上、まだ23人が決まっていないということもあってかなり気持ちも入っていて、気持ちの面でもコンディション面でもかなり良かったように見えましたし。
(余計なお世話ながら、韓国は現時点であそこまで動けていると、W杯本番は大丈夫なのかな?とも感じたのですが。)
 ただ、それにしても俊輔、遠藤あたりが動けていなかったのは、ちょっと心配ですが…。
(もしかして俊輔は本田がいることもあって?モチベーションを落としている?)



 試合序盤の韓国代表による猛攻。
 それに対してプレーに硬さの見えた日本代表は耐えきれず失点してしまうわけですけど、こういった戦い方はW杯でも十分ありえるはずです。
 これを日本がやる側になるのか、やられる側になるのかはわかりませんけど、一発勝負の怖さを感じ取ったシーンだったかなと思います。
 このあたりはW杯本番に向けて良い勉強になったのでは。


 その後もなかなか思うようには戦えませんでしたが、序盤の猛攻ほどの苦しい時間帯はなかったかなと思います。
 もちろんそれは早い段階で1点取れたからであって、状況によっては変わったかもしれません。
 しかし、後半からは韓国も明らかに落ちていたと思います。
 それと思った以上に韓国が行くところは行って、守るところは守る…といった緩急の差を使ってきたのが驚きでした。
 なんというか、賢いチームになったな…といった印象でした。



 プレッシングに関して相手の方が勝っていたということ。
 日本もプレッシングサッカーがしたかったはずなのですけど、フィジカルコンタクトとスピード(まぁこのあたりはコンディションの影響も大きい部分ですが)で相手に敗れて、それが出来なかたっということでしょうか。
 それに対してうまく日本代表はボールを散らして対処したかったと思うのですが、なかなかそれが出来ず。
 もっとサイドを広く使うパスワークをしたかったと思うのですが、そのあたりはSHである俊輔などの不調と、SBの内田が出場できなかったが大きかったのかなと思います。
 今野を起用することで(W杯本番も想定して?)相手のウイングを抑え込もうとしたと思うのですが、攻撃時のポジショニングなどを見ると攻撃面ではもう1つだったのかなと。
 内田がどれだけコンディションを戻せるのかどうかという点は、日本において非常に重要なポイントになるかもしれませんね。
 …とはいえ、プレッシングに関しては、あれ以上のチームとW杯で当ることはないだろうとも思いますけど。

 

 いつも通りの問題ではあるのですが、一番の課題は後半韓国も落ちてきて相手のプレスも緩くなり、ボールも持てるようになった状況で、点を取る形が見られなかったことではないでしょうか。
 中盤まではボールを持ち込めたし、時おり中盤でのパスワークからポストを使ってゴール前に進入…という、今までやってきたショートパスをつなぐ形を作れた場面もあったけれど、最後のところで潰されてしまう…あるいはもう一歩のところで相手DFを抜ききれないという場面がありました。
 FWで起用された本田、森本あたりと周りの選手の呼吸が合わなかったところも見えたので、W杯までに連携を改善することでチーム全体が向上していけるのかどうか…。
 チームとしては狙いとして本田を活かす形を作り始めたんだろうなぁとは感じる試合だったので、それがW杯までにどこまで作れるのかが気になるところです。


 ただ、本田、森本あたりを起用すると、その分前からのプレスには課題が出てきてしまうのかな…と。
 本田を使うと今までのような細かなパスワークも出来ていない感じで、やはりそれなりに弊害はあるんでしょうね。
 そのあたりのバランスを残りの時間でうまく、作り上げることが出来るのか。
 このあたりは、今までの期間にゴールの形を作れなかったツケが来ているのかもしれません。
 この試合ではゴール前で相手のフィジカルにつぶされることが多かったと思うのですが、オシム監督はパスサッカーをしても「最後は競り合いになる」と見て、巻などを優先的に起用していたんでしょうね。
(このあたりはtwitterでも話しましたが。)
 もちろんそこで完全に相手に勝てなくとも、少しでも時間を稼げれば…あるいはこぼれ球のボールが作れれば。
 それが唯一の道ではないかもしれないけれど、オシム監督なりの策だったのではないかと思うのです。
(広島の場合はそれがスピードと連動性なのでしょうか?ただ、練習時間の短い代表チームでそこまでの連動性を作れるのかどうか…については気になるところでもありますが。)
 岡田監督の場合はこの試合を見る限りだと、本田や森本など得点能力の期待できる選手を使うことがその策だと考えるようになってきたと。
 昨年まで愚直に組織的なサッカーを貫いてきたけれど、昨年のオランダ戦あたりで最後の部分に限界を感じて、方向を修正したということでしょうか。
 しかし、果たしてそれがうまく行くかどうか…。
 このあたりは、もう少し見ていくしかないのかな?とも思います。
 時間はたくさんあるわけではないですけど、1週間2週間でも変わるチームはあると思いますしね。




 しかし、この試合で何よりも一番に感じたのは個の能力の差でした。
 決して個人での打開力だけでなく、運動量やフィジカル、スピードや技術の面に関しても差を感じてしまいました。
 やはり欧州で多くの韓国人選手が活躍しているのも、偶然ではないのでしょう。
 パク・チソンの先制ゴールなど最後の部分でしっかりと精度の高いシュートを放ち得点を奪ってきたことも、選手の能力差と関係がないとは思えません。
 戦術云々を置いておいても、日本と韓国の差は離れてしまったのかなと感じてしまいました…。



 その韓国代表と今、真剣勝負が出来たのは、よかったことなのかもしれません。
 もしかしたら、日本は世界ばかりに目を向けて、アジアを軽視し過ぎていたのかなぁとも思います。
 韓国は現代表が黄金世代とも言われているそうですけど、日本の黄金世代はもう過ぎ去ってしまいましたしね。
 そして、いつのまにか日本をライバル視する韓国に抜かれてしまった…と。
 実際、昨日の韓国は強かったと思います。
 これがW杯でも出来るのかどうかは別として…。


 しかし、日本も収穫もなかったわけではなく。
 相手が激しく来てくれることによって、日本の選手達も徐々に守備で激しくいけるようになっていったのではないでしょうか。
 もちろん長友や大久保、長谷部など、しっかり試合序盤から気合いの入ったプレーをしてくれた選手もいましたけどね。
 ライバル韓国にそんな基本的なことを教わることになったというのも癪ですけど、この借はぜひともW杯で返したいところです。