弱点はアウェイゲーム
しっかりと守備ブロックを形成し、相手の弱点を突くカウンターを繰り出す。
岡山は特別に変わったことをしたわけでも飛び抜けて強かったという印象もなかったけれど、しっかりとミスなくやるべきことをやっていました。
それに対してジェフは、やはりその守備ブロックを崩す術を身につけていなかった。
そういった印象の試合でしたです。
ここまで3連勝で岡山に乗り込んできたジェフですけど、率直に言って過去3戦の相手はそのやるべきことすら出来ていなかったと思います。
非常にミスが多く、相手から崩れていってくれていました。
岡山はそうではなく、しっかりと自分達のサッカーを90分間やり遂げていました。
先制点の奪われても気持ちが切れることがなかった。
勝利に値する頑張りだったと思います。
■ジェフを研究した岡山の戦い方
岡山はしっかりとジェフを研究してきた印象でした。
その背景には、やはり間瀬コーチの存在も大きいのではないでしょうか。
もちろん今年のジェフは追われる側なのですから、研究されて当然といった存在なのですが…。
ビルドアップの第一ターゲットは、ジェフ1ボランチ付近へのロングフィード。
山口はカバーリング能力は優れていますが高さがある選手ではないし、1ボランチの脇のスペースは空いてることが多く、特にジェフが攻め込んだ後はボランチとCBの間のギャップも出来ていることが多い。
そこをカバーすべくCBが跳ね返そうとして下がっていく相手FWについてくると、DFラインが凸凹になり、中盤で拾った後にチャンスが生まれやすい…という考え方だったんだと思います。
次にジェフCBの裏のスペースへ向けたロングパス。
裏への走りだしに対してジェフのDFは一歩出遅れることが多く、前節の横浜FCも意図的にそこを狙っていました。
特にフリーになりがちなSBから、斜めのロングパスを意識的にやってきた印象でした。
そして最後に、FWへのグラウンダーのくさびのパス。
ジェフは中盤の選手とCBでポストプレーヤーを挟む意識が少ないから、CBにさえ潰されなければ楽に中盤にボールを落とすことが出来る…と。
そして、それらを起点に、サイドを攻略する。
特にジェフのウイングは守備への戻りが遅れがちだから、SBのオーバーラップを有効に使いたいという発想だったのではないかと思います。
岡山の守備に関しては、オーソドックスにDFラインのMFのラインをなるべく等間隔にしてコンパクトに守ると。
特にDFラインのコントロールが綺麗に出来ていた印象です。
その中で、ネットに対しても十分な研究をしてきた印象ですね。
ともかくなるべくスペースを与えない。
前を向かせてもいいから間合いを詰めること。
そうすれば、ネットはキチンとした準備が出来ていなくても、強引に前を向こうとする。
それでも間合いさえ詰めておけば、小技はないからドリブルで抜かれることもない。
逆にネットとの間隔を空けてしまうと、スピードに乗ってしまうし、大きな展開もある。
このあたりも間瀬さん効果が大きかったのかなと思います。
結果的に岡山がスペースをしっかりと管理できていた前半は、ネットのところでボールを失ってしまうシーンが多かったように思います。
ネットは今年に入ってゴールに背を向けたプレーもうまくなってきましたから、その選択肢をもっと有効に使えればいいと思うのですが…。
対するジェフは相変わらず、試合開始からロングボールが多いサッカーでした。
こう毎試合同じような展開だと、意図的な何かがあるのかな?と思うのですが、私にはこれがそこまで有効的な策のようには今のところ見えません。
「試合序盤は様子を見て…」ということなのかもしれませんけど、攻撃には流れがあります。
一度そちら方向に流れてしまった攻撃のリズムは、そう簡単には変えることが出来ない。
少なくとも今のジェフには、そう簡単に攻撃の流れを変える力はないと思います。
何かきっかけでもあれば。
…というところで、その“何か”があったのが、横浜FC戦。
相手の対処ミスによって先制点を奪うことができました。
その大きなきっかけで、それまで相手の蹴り合いに合わせてしまっていたジェフが大きく変わり、ショートパスを細かくつなぐ本来狙うべきサッカーになっていきました。
しかし、この日の岡山は、そういったミスをなかなか見せてくれませんでした。
それによってずるずると、ロングボールの多い時間帯が続く展開になります。
■相手を崩せず逆転負け
後半から、徐々に岡山のDFラインが下がっていきます。
それまでコンパクトに守れていた岡山でしたが、運動量も落ち中盤にスペースが出来てきます。
そして、後半7分。
中盤のハーフウェイライン近くからフリーのになった勇人がロングパス。
アレックスをめがけたボールは相手DFに当り、前を向いたネットが相手DFを振り払ってゴール。
決して綺麗な展開ではありませんでしたが、パワープレイ気味の形で先制します。
その後も勇人などがフリーになることが多く、この時間帯は相手を押し込む展開になってきます。
しかし、そこでも有効な崩しが作れない。
ボールを持てるけれども、(疲れもあって)引いてしまった相手に対してチームとして共通理解が出来ているとは思えず、「とにかく強引に前へ」という意識ばかりを強く感じてしまいました。
すると後半17分、相手コーナーから失点。
セットプレー時の弱さが、結果となって表れてしまいました。
身長の低い選手が多いとはいえ、攻守において大きな課題ですね。
特に守備時のセットプレーに関しては、昨年から巻に頼っていた代償がここにきて出てしまっているのでしょうか…。
これで少し岡山が息を吹き返しますが、その後も基本的にはジェフがボールを支配する展開。
けれども、強引な個人技での突破が増え、そこをつぶされる展開が増えてしまいます。
そして、後半42分。
ジェフのCKが跳ね返されたところを茶野がつなごうとするもミスをし、カウンターから失点。
1-2とされてしまいます。
勝利が見えた岡山は完全に復活。
残りの時間はラインもしっかりと押し上げることが出来、そのまま試合終了となってしまいました。
■パスサッカーを目標とするのであれば
負けてはしまいましたが、ジェフがこれまでの試合から何か大きく変わったわけではないと思います。
相手が自分達の立場において、与えられたタスクをミスなくしっかりと遂行したということ。
それが、過去3戦との大きな違いでしょう。
でも、「だから今のままでいいんだ」というわけではなく、むしろ「だからこそまずい」と思うわけです。
このブログでは何度も取り上げてきましたけど、やはりしっかりと守備を形成する相手(私は「引いた相手」とはあまり言いたくないですが)に対する崩しがチームとして作れていない。
それがはっきりと表れた試合だったと思います。
確かに渡邊や鎌田が思い切りよくオーバーラップをすることで、広いエリアを使えるようになった。
倉田のドリブルもいいし、アレックスの運動量によって、そのエリアで数的優位も作れることになります。
けれども、それらが有機的に動いてはいかない。
なかなか、前方に自分を犠牲にしてでもスペースを作るような動きをする選手がおらず、連動した動きが見えてこない。
そして、結局カウンター頼り、相手ミス頼りのサッカーになってしまう。
例えば中盤でパスをつないでいる間に勇人が相手CBとSBの間を突いたフリーランなどをしても、なかなかそこを使うプレーはできていなかったし、後半には(これは以前にも指摘しましたが)人数が多いところに敢えて縦パスを出し、結局相手に跳ね返されるなんて展開も何度かありました。
逆サイドに振ればもっとスペースはあるはずなのに、それが出来ていない。
これは確かに個人の意識の問題かもしれませんが、効果的なサイドチェンジをするためにはどうしてもチームとしての連携が必要になってくる場合もあります。
けれども、チームとしての共通意識がほとんどみられていないということです。
唯一ジェフが前節と違うと感じた部分があるとすれば、コンディションの問題です。
引き分けに終わった熊本戦も、徳島戦もアウェイゲームでした。
そして、この試合もアウェイ。
ジェフはアウェイ遠征時のコンディショニンの調整に、苦しんでいるのではないかと思います。
現在のジェフのサッカーは、コンディションによって大きく出来が左右されるサッカーなのではないかと思います。
プレスを行うための運動量と攻守の切り替え、カウンター時のドリブルのキレ、相手の息切れを待つためのスタミナ…。
それらはすべてコンディションによって大きく差が出る要素だと思います。
この試合も、熊本戦・徳島戦も相手とのコンディションで差で、大きく相手より劣っていたとは思いません。
というよりも、むしろ今まで勝ってきた試合がジェフのコンディションの良さで相手を圧倒してきた試合であり、この3試合でのコンディショニングの出来は『並』くらいだったのではではないでしょうか。
それでもジェフとしては厳しい内容になってしまう。
それほどまでに、コンディションが肝となるサッカーになってしまっているということではないかということです。
そうなってくると今後において心配なのは、気温も湿度も上がってくる夏場です。
例えホームであっても夏場は、コンディショニングに苦しむことになるかもしれませんからね。
そういった状況でジェフが苦労しないためには、どう戦うのか。
やはり私はパスワークで連動して相手を自主的に崩すサッカーをつくっていくしかないのではないかと思います。
キックオフからロングボールを蹴る時間帯をなくし、しっかりとボールをつなぐことで、余計な体力消耗を減らすこと。
そして、パスワークで自主的に崩せるようになることで、相手のスタミナ切れやミス待ち状態をなくすこと。
これが一番なのではないかと思います。
どうしても厳しい論調になってしまいますが、やはりパスサッカーを目標とするのであれば、連動して相手守備ブロックを崩す形を作らなければいけないし、J1昇格を目指すのであれば、こんなところで躓いていてはいけない。
そういう意味で、もっと頑張らなければいけないと私は思います。