監督へ非難が集中することへの危険性

　以前のジェフにも見られた傾向ですが、クラブの首脳（監督や社長・会長）ばかりに責任を追及する声が増えてしまうこと。
　これはチームの将来にとって、心配な状況ではないかと思います。
（なんとなく雰囲気も当時のジェフと似ているところがあるような気もします。）
　北京五輪も近いケースだったかなと思うのですが。

　確かに監督などにも問題があったとは思うし、責任の一端があるのは事実です。
　しかし、そこばかりに目が行ってしまうと、今度は細部の問題がないがしろにされがちになってしまう。
　そうなると日本代表にとっても、決して良い状況ではないと思います。

　言うまでもなく、W杯は4年に1度きりとなる日本代表の力を世界に試す重要なチャンスです。
　その大会でどんなことが起ころうとも全て「岡田だからどうしようもない」とまとめられてしまう方向に傾きつつあるのであれば、これは由々しき問題なのではないかと。

　正直に言ってしまえば、私も岡田監督はあまり好きではないです（笑）
　監督としての実力は評価していますけど、加地や巻などの例を見ると選手達のケアを細部まで出来ているのか？という点で疑問が残ります。
（もちろんケアというのは出場機会を与えるとか選び続けるというだけの問題ではなくて。）
　しかし、それが監督評価にあたっての根本的な部分ではないと思うし、監督の評価とチーム全体の評価はまた別に考えなければいけないことだと思います。

　大枠で括ればコンセプトに関しては私は間違っていないと思うし（細部に関しては不満も多いけれどそこは結局人それぞれということになってしまうし）、昨年あたりからチームの完成度は高まっている印象です。
（正直、私もそれまでのチーム作りに関しては多くの疑問を感じていましたが。）
　ジーコ時代のように毎試合のパフォーマンスがルーレットのように変わるというのもどうかと思いますし、サッカー的にはチームが安定している（＝選手の固定化というわけではないですが）というのは決して悪くないことではないでしょうか。

　ただし、完成度が高まった分、これ以上このチームに大きな可能性を感じなくなってしまったのも事実なのかなと。
　それこそが、一番の不満につながっているのかな…とも思います。
　実際問題としてサッカーがつまらないとか、見ていてわくわくしてこないとかそういった感性に訴えかける部分が少ないという問題も大きいのでしょうけど。

　しかし、では誰ならばこの日本代表のリミッターを解除できるのか…となると難しいところではないかと。
　オシム監督ですらもアジア杯の戦い方に関してはうまく行かなかった部分があったと思いますし（3バックの頃は可能性を感じていたし、スイス遠征などでは希望も戻ってきた感はあったのですが）、今の日本代表の地位を考えれば世界的な名将を呼ぶというのもそう簡単ではないと思います。

　現実問題として考えれば南アフリカW杯までに時間がなく、今から日本のことを理解した監督を呼ぶのは難しいという問題も出てくるでしょう。
　かといって、国内に短い時間でチームをまとめ上げられる優秀な監督が残っているかというと、それもまた疑問です。
　現在Jリーグのクラブを指揮している監督を“強奪”するなんて意見は論外。
　個人的な感情で言えばそんな話、聞きたくもありません（笑）

　監督批判もサッカー観戦の醍醐味の1つだと考えれば（私はその発想は好きではないですけど）、岡田監督への批判が起こるのも当然のことなのかもしれません。
　しかし、そこばかりがヒートアップしてしまっては困りもので、今後の日本サッカー界のためにも今の代表を評価するのであれば、監督への文句もちくちく言いつつ、しっかりと監督以外の問題にも目を向けていく必要があるんじゃないでしょうか。

　こういった傾向にあるのは、ドイツW杯の頃からJリーグクラブのファンが増えて、代表ファンが減ったことも微妙に関係しているのかなぁと思います。
　多くのサッカーファンがマイチームを持つようになったことで、日本代表への関心は薄れているのかなと
　それによって代表への見方（主にエンターテイメントとして）も厳しく…あるいは極端な物になってしまったのかなと。
　それと、前任であるオシム監督人気の影響もあるのかもしれませんね。
　これはアマル監督も同様でしたけど、どうしても後任はオシム監督と比べられてしまう傾向があります。
　しかも、オシム監督はジェフも日本代表も、未完成のまま終わってしまった。
　だからこそ、それ以上があったのではないかという期待だけが残ってしまったのではないかと。
　もっとも、残念ながら日本代表では大きな成功を遂げたとは言えない状況だったと思いますが。

　現在の日本代表は“飛び抜けた日本代表”ではないとは思うけれど、“大きくおかしな日本代表”でもないと思います。
　ですから、世界との差を計る上では、悪くないチームなのではないでしょうか。
　様々なフラストレーションを感じるのも事実ですが、今は周囲も我慢のしどころなのかなぁなんて思っています。