サポカン議事録の感想

サポーターカンファレンス議事録 その1
サポーターカンファレンス議事録 その2
サポーターカンファレンス議事録 その3
サポーターカンファレンス議事録 その4


 サポーターカンファレンスの議事録が公開になりました。
 まず改めてサポカンをこの時期に開催したこと。
 これに関してはしっかりと評価されるべきだと思います。


 しかし、当然ながらそれと様々な問題は全くの別物。
 サポカンを開催したからといって他の問題が水に流されるわけでもないですし、サポカンを開催したことに対する評価とサポカンの内容への評価もまた別物です。
 サポーターへアピールしたい気持ちは伝わってきますが、フロントが腹を割って話すつもりがなければ、例え宣伝にはなったとしてもサポーターとの“対話”にはなりません。
 お祭り事ではないわけですから、「やることだけに意義がある」とはならないはずです。
 そのあたりをしっかり別けて考えるべきじゃないかと思います。




 内容に関して、気になることは複数あります。
 正直どこから突っ込めばいいやら…といった感じですが。
 まず社長がサッカーに関する内容を分析し、あのように発表するのはどうなのかということ。
 これは今年から社長の意向で「シューター専門ユースコーチ」に大柴を起用したという話しからも疑問だったのですが(サポコミでその後に昼田さんが「FW専門」と言い直しをしていた時から「ん?」と思ってはいたんですけど)、社長がスタミナだの決定力だの専門的な話しに突っ込んだところで、クラブに良い影響を与えるのかどうか。
 社長の分析があっているか間違っているかなどはどうでもいいのですけど、例えば社長がピッチ上に対しての問題を提議したとして、GMや監督が全く違う分析をする可能性だってある。
 社長が積極的にサッカーのスカウティングを始めてしまったら、現場もやりにくくなるんじゃないでしょうか。


 「クラブとしてこういった分析に至った」という話しならばともかく、今回の話しやその他のコメントを読む限り(あるいはサポコミで感じた限り)社長は独自にそういったサッカー分析をする傾向があるようです。
 社長がサッカーを理解しようとすること自体は大変結構だと思うのですが、ジェフはプロのクラブ。
 社長はサッカーに関しては素人で、社長には社長の仕事があり、現場には現場の仕事があるのだから、そこはプロとして線引きをしなければいけないんじゃないでしょうか。
 これは『サカつく』じゃないわけですからね。



 また、「江尻監督が経験不足」に関しての話し。
 コーチとしての実績が十分あるのはみんな知っているわけで。
 問題なのは山のように高いノルマと比較して、江尻監督の経験が不足しているんじゃないかということ。
 ようするに「1年でJ1復帰」や「シーズン途中からのJ1残留」に対して言っているわけであって、社長の「もう少し時間をいただきたい」という話しは見当外れもいいところです。
 自ら「1年でJ1復帰」という短期間での結果を目標として掲げながら、現監督の経験不足に関しては「もう少し時間がかかる」と説明している。
 今シーズンオフの中にその経験不足が解消できるとは到底考えられず、このあたり明らかに矛盾しています。
 もっとも見当(サポーターの聞きたいところ)は理解した上で、あえてごまかしている可能性もありますけども。



 それと「育成コーチの大量解雇(説明はありましたがそれで11人もの解雇となるのかどうか)」、「江尻監督の続投理由」、「J2で数年かけてJ1復帰を目指す計画に対しての反論(「精神的に難しい」っていってますけど…?)」。
 これらに関しては、聞きたいところをあまり話してはくれなかったなと。
 加えて監督選定に関して「Jリーグで外国人でなければダメだという考えは、もうそろそろ考え直すべき」と言われたことに関しては、個人的に非常にショックです。
 もちろん「外国人でなければダメだ」なんてことは思わないし、江尻監督も含む日本人監督にも大いに期待はしています。
(そもそもそんな考えJリーグにあるんでしょうか?日本人監督でも頑張っているところはたくさんあるし、他のクラブに失礼では?)
 けれど、ジェフは「欧州から学ぶべきものはまだまだたくさんある」という方針の下で、成長し結果も残してきたクラブ。
 それに対してジェフの社長が否定とまではいかないのだろうけれども、あえて逆側の意見を言う必要性があったのかどうか。
 確かに欧州から監督を招集し続けるのも難しいのだろうし、社長も言われているようにコミュニケーションも取りやすいことでしょう。
 若い江尻監督なら無理も聞いてくれるのかもしれない。
 けれども、今までのジェフはそういった部分の苦労を理解した上でわざわざ外国人監督を呼び、それらの問題を乗り越えながら戦ってきたわけで。
 そういった問題を乗り越えられないと感じたと、あるいは優秀でジェフとのポリシーが合う外国人監督が呼べなかったと、現フロントの力不足を言えばいいだけなのに、なぜこんな言い方をするのかちょっと理解に苦しみます。

 


 「監督交代時の問題(残留争い真っ只中で新米監督を起用してしまったこと・ミラー監督の意向に沿った補強直後に解任したこと・新人監督に長期政権を約束したこと)」、「強化責任者交代の経緯と理由」、「08-09オフの失敗の反省」…。
 このあたりに関しては、具体的な話しすら出なかったのが非常に残念です。
 ピッチ上の話しなんて、社長から聞いても仕方がないと思っています。
 社長から聞きたいのは運営の問題、具体的な方向性のあり方と進捗状況に関してなどであって、サッカーの話しは監督や選手にでも聞けばいいわけですから。
 強化部の責任者もいなかったわけですし。



 議事録の中で一番不安に思うのは、やはり社長が言うような「発展途上」のクラブが「1年でJ1復帰」を目指せるのかどうかということ。
 「発展途上」といったって、別に選手だけが「発展途上」なわけじゃない。
 クラブ全体が「発展途上」、あるいは今後、伸びるかどうかだってわからない。
 選手を育てる側も「発展途上」(あるいはスタッフ入れ替えによる準備時間も考えられます)なのだから、例え将来有望な選手がいたとしてもうまく育つとも限りません。
 だから単純に若い選手が育つのを待てばいいというわけでもないはずです。
 「若手も育ってきている」というけれど、実際に計算できるのは米倉と福元だけ。
 金沢も益山も孝太だって、来季戦力になれるかどうかはまだ未知数です。
 そして、現段階で「発展途上」のクラブが開幕まで数か月で“ホンモノ”になれるのかどうか。
 もちろんシーズン中の伸びにも期待したいけれど、本気でJ1復帰を目指すのなら開幕戦に標準を合わせなければいけないはずですから。


 「1年でJ1復帰」と「若手育成」を同時に目指す。
 それはサポーターにとってウケのいい話しで、世界中のどのクラブも結果と育成の両面を目指しているはずです。
 けれども、現実も見なければいけません。
 クラブ全体が「発展途上」の状況で、その両方を目指すことが可能なのか。
 ここまで言ったからには、ノルマが達成できなければ社長や監督の責任問題になるのは確実でしょう。
 それが、長期ビジョンを崩すことにならないのか。


 J2に落ちれば予算や選手獲得などの面で、どうしてもリソースは限られてくる。
 そういった部分を踏まえて現実を捉えた上で方向性を打ち出すことが、J2にクラブを落としてしまった者の責任ではないかと私は思うのですが。


 社長の話によると、2つの目標に「優先順位はない」とのことです。
 しかし、具体的に考えると、例えば今オフ30歳を越えた外国人監督を取ろうとする。
 経験豊富で来季1年を考えれば絶対に戦力になるけれど、2年後、3年後を考えると衰えが来るかもしれない。
 逆に20代中盤で同ポジションの若い選手がリストにいたとする。
 1年目は苦労するかもしれないけど、2年後、3年後の伸びは大いに期待できる。
 そういった時に、どういった判断で“意思決定”をするのか。
 曖昧な意思決定は、チーム全体に悪影響を及ぼします。
 そのためにも優先順位の確立というのは非常に重要なことであり、これはサッカークラブに限らず組織において欠かせないことでしょう。



 今回の議事録に関して全体を評価すると、言い訳の多い内容だったかなと思います。
 多数の問題を消化しないままサポカンを開催したため、逆に穴ばかりが見え個人的にはますます不安を感じてしまいました。


 もう現実的に考えれば、「1年でJ1復帰」の大ノルマを変えることはできないでしょう。
 賛成はしづらいですけど、いつまでも言っていても仕方がない。
 このあたりで一度この話しには区切りをつけたいと思います。



 …ところで、ミラー監督に対しての問題の責任を負わせるような発言はどうなんでしょうね。
 確かに言ってることは間違いじゃないかもしれないけれども、そのミラー監督を選んだのも続投したのもジェフなわけで。
 ああいったコメントが増えてくると、今いる監督やスタッフもやりにくさを感じてしまうんじゃないでしょうか。


 ただ、両親会社の問題を指摘され、強く否定した部分。
 それに関しては個人的に好印象を受けました。