Jリーグ、大分へ6億円の融資


Jリーグは17日、東京・文京区のJFAハウスで理事会を開き、来季のJ2降格が決まった大分に、来年1月末までに公式試合安定開催基金から6億円を融資することを決めた。過去、J2の草津(6000万円)と岐阜(5000万円)が融資を受けたが、ケタ違いの史上最高額となった。
Jリーグによると、大分は慢性的な資金難と今季のスポンサー収入と入場料収入が大幅に減ったことで、来年1月末までで借入金が12億円にも上るという。そこで、今季残り主催2試合を無事に運営するために3・5億円。来年1月末までに支払期限の来る選手の給料などに対し2・5億円を貸し出し、救済することを決めた。会見した鬼武健二チェアマン(70)は「深刻な経営危機。存続に強い要望が出ていることから支援を決めた。地元が一体となって再建支援をしていただかないと」と厳しい表情で話した。返済期限はないが規定により、完済しない限りはJ1に昇格できない。(報知
 広瀬県知事が明かした状況以上に、実際は悪化していたのかもしれませんね…。


 大分の08年度の経営データを見ると、収入が21億円でほぼ支出と同額。
 今期の分配金はたぶんそこから3億近く下がり、昨年末の主力選手の維持ですでにかなりの費用を使い、来季はマルハンもなしとなると、それだけで相当な酷い状況になりそうです。
 来季は入場者収入も下がる可能性が高いでしょうし(今期も下がってる?)、累積赤字も約11億円。
 Jリーグが6億円を融資しなければ、1月の決算時に潰れていたんでしょうね…。
 たぶんどこも今以上の融資は出してくれなかったのでしょうし。
 普通なら怖くて出せないですもんね(笑)
 出せるところはもう出しているんでしょうし。


 こうなってしまうと昨年末選手を売却してでも、チームを活性化すべきだったのかなぁと思わなくもないですね。
 サポーターなどは怒るでしょうけど、選手を残すことがチームにとってもクラブにとっても幸せだとは限らないですから…。



 東京Vには厳しい基準を出しておいて、大分には甘すぎると思う部分もあります。
 スポニチの記事でも「大甘」と書かれていますが、その直後の一文がポイントなのでしょうね。


「大分のようなクラブをJに残すべきなのか」と問われた鬼武チェアマンは地元政財界などからクラブ存続の希望があったことを明かし、「地域に根ざしてきたクラブをつぶすわけにはいかない」と説明した。
 大分はこの地元政財界に未だに借金があるんじゃないかと推測します。
 しかし、今潰してしまったら、そこにお金も戻らない可能性が出てくる。
 それはJリーグのクラブが借金を踏み倒すという、悪しき前例を作ってしまうことに繋がります。
 しかも地域密着を掲げておいて、地元政財界に対し恩を仇で返す形になるわけですね。



 東京Vの場合は会社が変わるわけですから、新会社には借金がない。
 そもそも日テレが赤字の補填をバンバンやっていたわけですし、前会社の借金分は親会社である日テレが支払うことになるはずです。
 だから、会社の倒産ではないにしても、チームのJリーグ不参加はありえたのかもしれません。
 実際にはめでたく承諾となりましたが。
 一方の大分に関しては会社が存続できなければ、チーム自体も消滅していたのではないでしょうか…。


 「Jリーグのクラブにお金を貸しても帰ってこない」という評判が出てしまっては、他のクラブにも影響が出てくるかもしれません。
 そもそも担保になるような資産も少ないサッカークラブの運営ですから(自前のスタジアムもほとんどないですし)、資金調達は簡単ではないはずです。
 加えて、大分は昨年のナビスコ杯王者。
 これでは投資家に「Jリーグは(実際にはカップ戦ですけど)優勝してもメリットがない大会」と評価されてしまうかもしれない。



 そういった様々な要素を考えると、コツコツと貯めてきた10億円のうち6億円を投資してでも、立て直してもらわなければいけない…と考えたのかもしれませんねぇ。
 もちろん関係者からは良く思われないところもあるでしょうか、存続か、消滅かの二択で周りへの影響を考えれば後者を選ばざるを得なかったと。
 「Jリーグの甘い対応が悪しき前例になる」という見方もあるでしょうが、どちらにしても“悪しき前例”になるのは避けられず、それならばJリーグの内側からの目線(関係者)よりもJリーグの外側からの目線(投資家など)を選んだということではないでしょうか。
 内部からの目線に関してはある程度コントロールできたとしたって、外部からの目線に関してはどうしようもないでしょうからね。
 恨むのなら大分さんの経営陣を恨んでくれよ…ということなのかもしれません。



 しかし、こうなってくると、Jリーグが全クラブの経営面に対してもっと厳しい目線で見ていかなければいけないようにも思うのだけれど、それも実際には難しいのでしょうか。
 経営面で安定しているクラブの多くは、親会社のサポートを受けているわけですし、親会社を抜きにしたら一気に厳しくなるクラブがほとんどでしょう。
 その一番の例が今までの東京Vとなるわけで、だからジェフにも自主自立の経営を期待していたのですが…。
 でも、今回のことでそんなことも言ってはおられず、Jリーグ主導の下、経営面に関してもっと厳しい監査をしていかないといけないかもしれませんね。



 大分としてはJリーグのメンツにかけても、再起しなければいけません。
 九州石油ドーム命名権が延長されずJ2への降格もあって契約料を下げて再募集をかけたというニュースもありますが、もともと九州石油新日本石油に吸収合併され、その後1年しか契約を延長しなかった時点である程度この結末は見えていたんじゃないかと思いますしね。
 ともかくJリーグから派遣される熊地氏と共に、頑張ってほしいと思います。