監督人事の前に明確なクラブの方向性を!
昨日のコメントでも書かせていただきましたが、結局最後までフロントからのミラー監督への要求は曖昧なままでした。
ミラー監督の下でどういったチームを作るのか、そしてミラー監督の後も同じ方向性でチームを作っていけるのか…。
そのあたりがはっきりしないまま、ミラー監督体制は終了となってしまいました。
ミラー監督を本当にバックアップするのなら、監督のスタイルから考えて豊富な戦力が必要だったはずです。
しかし、今オフでは戦力的な上積みは作れませんでした。
補強はしたけれどその分放出もしたことで、手持ちのカードは増えていかなかった。
それではミラー監督を最大限にバックアップしたとは言いづらいでしょう。
私はJRのサポートも受け、ミラー監督の下で以前よりも規模の大きいクラブを作っていくつもりなのかな?と思っていました。
若手選手を大量に放出し、その分即戦力の選手を買うような形で…。
けれど、チームは結局どっちつかずの中途半端な形になってしまいました。
ミラー監督に現場の(…延いてはクラブ全体の)方向性を引っ張っていく力がなかったことも、残念な部分ではあります。
オシム監督やフィンケ監督のような人物なら、どんな状況であれクラブの方向性すら変えてしまうほどの指導力を持っているはずです。
しかし、基本的にはクラブの方向性というものはクラブが決めるもの。
監督が長く在籍してくれればいいのでしょうが、そうではないケースの方が多いわけですからね。
オシム監督が去ってほんの数年後で、ジェフからオシム監督らしさというのはほとんど無くなってしまったように、クラブに残る人間がクラブの方向性を決めるべきでしょう。
フロントやサポーターが中心となってどんなクラブを作りたいのかを定め、それを参考に監督選定をしていくのが正しい道筋だと思います。
ですから、重要なのは今のフロントが最終的にどんなクラブ像を描いているのか…ということです。
クラブのビジョンと、そこに至るまでの方向性と。
欧州人監督が指揮する、ビッククラブ風の結果を重視するサッカーなのか。
結果重視だけではなく、魅力あるクラブを目指すのか。
若手育成を主眼に置いた、小さくても地域やサポーターに愛されるチームを作っていくのか…。
そのあたりがサポコミなどで話しを聞いても、はっきりしないままだったように思います。
それを問いたださず、明るい部分ばかりに目を向けてしまったサポーター側にも、責任の一端はあるように思います。
確かにサポから見れば、ミラー監督にも江尻監督にもそれぞれの魅力はあるでしょう。
攻撃的なサッカーにも守備的なサッカーにもそれぞれ良さはあると思います。
しかし、重要なのは「どれもいいよね」と言うだけではなく、ジェフに「どういったクラブを目指してほしいのか」を考えていくこと。
“クラブはサポーターのもの”であると考えるのであれば(もちろんサポーターのものだけだけどサポーターだけのものではないと思うけど)、サポーターもクラブの将来像をしっかりと考えていかなければいけないはずです。
場合によっては聞き分けが良いことも必要なのかもしれませんが、それだけではクラブは良くなっていかないんじゃないでしょうか。
それに対してフロントはどうなのか。
…最近思うのですが、現フロントは少しサポに媚びる方向に行き過ぎていないでしょうか。
ジェフユース出身の中後を獲得したのも、生え抜きの選手達が大量に流出した自尊心を回復するためには、素晴らしい選択でした。
しかし、一方で今のチームにはフィットしているとは思えませんでした。
坂本の復帰にしても、新潟関係者には悲しい思いをさせてしまいました。
坂本の性格を考えれば「チームが危機的状況だから戻ってきてくれ」と言われれば、真剣に悩んでくれるでしょう。
戦力的にも嬉しい復帰ではありましたが、少なからずの遺恨を残してしまいました。
一方でサポーターから受けの悪かった選手達は、簡単に放出されていったように思います。
背番号1つとっても人気の出そうな選手ばかりを優遇しているようにも思わなくもないですし、サポコミなどでも現実的な話しは少なく明るい話題ばかり…。
しかし、実際には今の順位を見ても分かるように、そう甘くはなかったわけです。
なんだかまるで、スポンサーやマスコミ受けばかり優先して、うまく強化の出来ない日本代表のようだなぁとすら思ってしまいます。
もちろんサポーターからの支持を取り付けることも非常に重要だと思うのですが、それだけではクラブは進歩していかないように思います。
改めて方向性に目を向けると、果たしてこのままでいいのでしょうか。
タイミングから考えれば、欧州から新たな監督を補強することも可能性としてはありえたはずです。
そんな中で、江尻さんが新監督で本当にいいのかどうか。
私は江尻さんには指導者として、大きな期待を寄せています。
オシム監督などの指導も受け、祖母井からの評価も高く、新潟でも反町監督の片腕として活躍し、五輪代表コーチも経験しました。
世間では北京五輪チームの評価は低かったようですが、私はすごく面白いサッカーをしていると思いましたから。
結果は散々でしたが、反町さんが現在湘南で素晴らしい活躍をしているように、指導の方向性は大きくずれてはいなかったように思います。
だから、私は監督の経験はなくとも、江尻さんの指導力に関してはそこまで心配はしていません。
オシム流とまではいかないにしても、それに近い指導法を試してくれるのであれば、個人的にもとても興味深いものがあります。
けれども、クラブの方向性として江尻さんでいいのかどうか。
順序的に、先にクラブの方向性があって、江尻さんの監督就任になったのかどうか。
昼田さんが強化部のトップになってからも欧州人監督を優先してリストアップしてきたということは、それなりに欧州人監督にこだわりがあったはずでしょう。
その流れを変えてしまうことに関して、一言もないというのはどういうことなのか。
ますますフロントがどういったヴィジョンを掲げているのか、わかりにくくなってしまいました。
もしかしたら江尻さんのも、サポーターからの信頼が厚いからという意味もあって選ばれたのかなぁ…と勘ぐってしまいます。
人柄も素晴らしいし、選手としてもジェフを経験したコーチの監督就任に対して、反対するサポーターは少ないのではないでしょう。
私自身も江尻さんの監督就任は、とても嬉しく思っている部分があります。
しかし、行き当たりばったりで江尻さんを監督に就任させ、新米の監督に長期政権を考えているというようなことを言われて(三木社長は「長期的な視点でチームの将来を託すことのできる指導者」とコメントしているし、2年半契約という報道もある)、それを納得していいのかどうか。
江尻さんの監督就任を喜ぶ半面、それとは別にどうして江尻さんなのか、江尻さんの下でどういったチームを作っていくつもりなのか、チームの方向性に関する明確な説明を求めたいところではないでしょうか。
これは、ミラー監督就任時と同様のことが言えるはずです。
最後に改めて。
確かにミラー監督とジェフでは相性は悪かった。
それは確かなので、監督交代は致し方ない部分もあると思います。
しかし、ではなぜ合わない監督を連れてきてしまったのか。
合わない監督でも最大限の努力をしたのかどうか。
そして、今のジェフに合う監督とはどういった監督なのか。
その定義をはっきりとするためには、クラブの方向性をクラブの人間が明確にしなければいけません。
方向性が定まらない限りはジェフに合う監督を見極めるのは不可能なわけで、例え実績のある優秀な監督を見つけてきたとしても、相性が合わなければ無駄だということです。
これは選手補強など、その他のチーム運営の部分に関しても全く同じことが言えるはずです。
そうなっていけば、当然万全なサポートも期待できません。
確かに今は江尻さんの言う通り「やるしかない」状況。
しかし、なぜそこまで追い詰められた状況になってしまったのか。
そこをはっきりとしない限りは、何年たっても「やるしかない」状況は脱せないのではないでしょうか。
…もしも、その方向性に関しても、成績や試合内容に関しても、まだ監督としては若い江尻さんに全てを“押し付ける”ようなことを考えているのであれば…。
もうこのクラブは終わりかもわかりませんね。
ともかく若い監督が就任したのだから、しっかりと周りが江尻監督をサポートしたいところです。
その万全なサポートを実施するためにも、まずは明確なビジョンと方向性を定めることが必要なのではないでしょうか。