09年前半反省会 その2『主な問題点』

 どこに問題があってうまく行かなかったのか。
 細かな部分を取り上げていくとキリがないので、主だった部分を考察して見ました。

■補強動向の失敗
 08-09オフの補強は今のところ失敗と言わざるを得ないでしょう。
 アレックス、中後、佐伯など同じポジションに似通った選手を集めた一方で、攻撃と肝となるSH(アタッカー)はレイナウド、根本、苔口、松本憲などの選手を放出したにもかかわらず、そのポジションに補強がされませんでした。


 その新戦力のボランチに関しても、ミラー監督の戦術にピッタリあっているとはいえないように思います。
 ミラー監督のサッカーは何よりもプレッシングが肝です。
 プレッシングを実行するためには、ボールへの一歩目の反応が早く、素早く相手のマークにつけて、危機管理能力も高く、一対一の守備にも強い、運動量豊富なダイナモ(ハードワーカー)タイプが必要だったはずです。
 …にもかかわらずそのタイプの戸田を放出し、プレッシングが得意ではないタイプの選手達ばかりを獲得してしまいました。
 獲得した選手達がよくないというわけではないのですが、補強に際して重要なのは何よりもチームにフィットするかどうかですからね。


 和田の補強は成功だったと思いますが、トータルで判断すると昨年末の戦力から比べればマイナスのシーズンオフだったと思います。
 


 では、いったいなぜそうなってしまったのか。
 結局はフロントがどんなサッカーを目差していきたいのか、ミラー監督とどんなチームを作って行きたいのか、曖昧な部分が未だにあるからではないでしょうか。
 現在のフロントには選手個々の能力を見るばかりで、全体をオーガナイズできていないように感じる部分があります。
 それではいくら選手を補強しても、なかなか上積みはできていきません。
 選手を見る目も重要ですが、それ以上に重要なのがチーム全体を把握する力ではないかと思います。


■戦術が定まらない
 今シーズン開幕直後の戦術はボロボロでした。
 DFラインを低く設定し、FWまで守備のため低い位置に下げる、引きこもりサッカーでした。
 例えて言うのであれば、明らかに格上の日本代表に対して東南アジアの国が引き分け狙いでやってくるようなサッカーで(そう言うのも失礼でしょうか)、見るも無残な内容だったと思います。


 この3月の戦い方に関しては、仕方のない部分もあったのかもしれません。
 ちばぎんカップで見た限り、ミラー監督は昨年の戦術の延長線上にあるラインを高く設定し、前からのプレスを積極的にかけるサッカーをしようとしていたのでしょう。
 しかし、中盤のプレスがうまく行かないこともあって、開幕直前にレベルの低いサッカーに訂正したのではないかと思われます。
 そのプレスがうまく行かなかった要因の1つに、前著の補強の失敗があるのではないかと思うからです。



 4月に入って4-4-2から4-5-1にしたことで、中盤が厚くなりプレスも機能するようになりビルドアップも多少は向上していきました。
 そこまでは、決して悪くない状況だったんじゃないかと思います。
 問題なのはその後です。
 4-5-1を熟成していくと思いきや、5月に入ってまた4-4-2に戻しチームは一歩後退してしまいます。
 6月に入って選手達が4-4-2に慣れてきたこともあって少しずつ良くなっては来ましたけど、「少し進んではまた壊し…」という展開が昨年からずっと続いています。


 ミラー監督としては現在の戦力でベストとなる戦術を模索しながら戦っていこうとしているのかもしれませんが、その結果チームの軸となる部分がなかなか太く、強くなっていかない問題が発生しているように思います。
 システムやポジションを変えてもぶれない軸を形成できるような器用な選手達がいれば、そういった方法も可能なのかもしれませんが少なくとも今のジェフにはそんな力量はありません。
 加えて、様々な戦術をテストしても昨年後半ほどの選手層はいないため、新たな発見は極めて少なくテストも頭打ちに終わっているように感じます。



 思うに、ミラー監督は相手の分析能力が高いタイプのコーチなのではないでしょうか。
 テレビ番組でCL決勝を予想していたことありましたが、そこでも相手をどう潰すかを念頭に置きながら説明していました。
 アシスタントコーチを務めたリバプールでも、そういった役割を任されていたのではないでしょうか。
 監督が自チームを見て、アシスタントコーチに対戦相手を分析させるというのは良くある手段です。
 相手を分析することをメインで考えるから状況に応じた対応をしてしまって、逆に自分達の戦い方が確立できない状況にあるのではないかと思います。


 状況に応じた戦い方も重要なのですが、まずは自分達がどういったサッカーを貫くのか、そこを作ってからではないとチームはなかなか成長していかないでしょう。
 そのあたりに問題の1つがあるように思います。


■コンディショニングの失敗
 昨年からも見られた問題ですが、選手のスタミナ不足が目立つように思います。
 日頃からのコンディショニングの問題もあるのかもしれませんが、オフ中のキャンプにも問題があったんじゃないでしょうか。


 大分は2月にパンパシフィック選手権に出場しコンディショニングに失敗して、シーズン中に選手が動けなくなってしまったという問題が発生しているようです。
(考えて見れば謙虚に物事を分析して、しっかりと問題点を洗い出そうという大分の姿勢は素晴らしいものがあるように思います。ジェフは果たしてどうなんでしょう…。)


 ジェフもこのオフのトレーニングでは、かなり練習試合数が少なかったですね(日頃のトレーニングから練習試合は少ないように感じますが)。
 オシム監督時代はトルコにまで行って、物凄い数の試合をこなしていました。
 移動時間が問題になってトルコキャンプはなくなったということですけど、オシム監督も祖母井さんもそのあたりの問題点を把握した上でそれ以上にトルコキャンプを張るメリットを見出していたはずです。
 あの2人が、そんな単純な問題点を見過ごすとは到底思えないですからね。


 もちろん場所はトルコに限らずですが、この時期に多くの試合を組んで選手のコンディションも含めてチーム全体を追い込めなかったのは、その後に響いているのではないでしょうか。
 コンディションの問題だけではなく、3月のボロボロだった頃の問題も、2月にしっかりと試合を組んでさえいればもっと早くに解決できたのではないでしょうか。
 ちばぎんカップ前後の試合でプレスがかからずに敗戦し続け、開幕直前に引き篭もりサッカーに帆を狭めたのだと思うのですが、早い段階で「プレスがかからない」という問題がわかっていれば、開幕前に解決できていたのではないかとも思います。
 まるで、今年のジェフは3月に練習試合を組んで、4月に開幕したように感じましたからね。


 
 新体制によって様々なことが変わるのは当然なことだと思いますが、今までの部分にも良い箇所があったからこそ続いていたものがたくさんあるはずで、ダメな箇所だけを見るのではなくしっかりと両面を分析して良い方向に進めていって欲しいですね。
 新生ジェフとはいえ、今までの経験をまったくの無にする必要はないはずです。
 旧体制でも問題点はたくさんありましたが、大いなる成功を果たしたことも事実なのですから。
 そのあたりをもう一度振り返ってみて欲しいなぁと思います。