継続的なチーム強化が出来るかどうか

 先日も話したように、磐田戦の戦い方は良い内容だったと思います。
 パスをある程度高い位置でつなげたことで、ビルドアップもうまくいっていた。
 チャンスを1つ手前までは何度も作れていたと思います。
(もちろん相手の出来がイマイチだったというところは、差し引いて見なければいけないでしょうけど。)


 確かにそれでもなかなか点は取れなかったのだから、100点満点だったとはいえません。
 細かなパスがつなげたって、綺麗なビルドアップの形ができたって、勝てなければ意味がないとも言えるでしょう。
 しかし、最後の質の部分はどうしても個人能力が大きく出てしまうもの。
 …あるいは、個人能力に頼らずとも組織的な崩しが出来れば点も取れるのでしょうが、ミラー監督はそういった部分の指導に関してはそこまで得意な監督ではないと思いますし。
 けれど、それに関しても仕方のないことだと思います。
 その分ミラー監督には他に良さがあると思いますし。



 だから、ビルドアップの質を高めることで、アタッキングエリアにボールを持ち込む回数を増やすこと。
 ようするに、攻撃に関しては「ラストプレーの質を高めること」よりも、ビルドアップの質を高めることで「ラストプレーの回数を増やすこと」や「ラストプレーをより良い形で行えるようにすること」を今は目差していくべきではないかと思います。
 高質なビルドアップによってラストプレーの質の部分を補うことを、目標として掲げるべきではないだろうか思うのです。
(もちろん最終的には質も量も高めていきたいんですけどね。ただ、このあたりを一緒くたに考えて「攻撃」としてしまうから、「外国人FWが必要だ」って論調になってしまうのかなぁとも思うんですけどね…。別物なんですけどね、本来は。)
 そういう意味で、磐田戦はいい方向に進んだ試合だったと思います。




 もう1つ、ミラー監督というのは、意外と細かなパスをつなぐのが好きな監督なのではないかと思っています。
 そのあたりがミラー監督から感じる“リバプールっぽさ”なんだと思っているのですが、そうなのであれば磐田戦は目差すべきサッカーに1歩近づいたサッカーだったと言えるのかもしれません。


 ミラー監督が常々話している「速い攻撃」と「細かなパスをつなぐこと」はズレがあるようにも感じるかもしれませんが、基本的には別問題でしょう。
 ミラー監督は「速い攻撃を目差す」とは言っていますけど、「攻撃で手数をあまりかけるな」というような指示はあまり聞かれません。
(もちろん「押し込まれたらロングボールを蹴るべきだ」というようなことは言っていますけど、それはサッカーにおいて基礎的な意味合いの話しでしょう。)
 バルセロナやスペイン代表がショートパスをつないでもスピードが衰えているようには感じないように、ショートパスをつなぐサッカーでも「速い攻撃」はできるということ。
 もちろんミラー監督が最終的に目差しているのはバルサやスペインのようなサッカーではなく、基本は守備重視でそこからのショートカウンターで素早くパスをつなぐサッカーなのだとは思うのですが、攻撃に移った際に目差すべき方向はそういったサッカーなのではないかと思います。




 そう考えていくと、ジェフはようやくいい方向に進み始めたのかなぁと思わなくもないです。
 少なくとも山形戦、磐田戦あたりから感じる感想を述べるとするのであれば、その方向に近づいているのではないかと。


 ただし、ミラー監督は“猫の目戦術”と言うべきか、昨年も「内容が良くなった」と思ったら突然アウェイで自陣に退いたサッカーをしてみたり、目差すべきサッカーに一直線にチームを作り上げる監督ではないですので、最終的な目標も見づらく評価も難しいところがあります。
 週単位で実施するサッカーを変更していくのですからある意味で凄い指導力だと思うのですが、それによって目指すサッカーがわからなくなることもあります。



 そのあたりをこれから、ミラー監督がどう判断していくのか。
 今期は昨年ほどアウェイだからといって“アウェイ仕様”の守備的なサッカーはしていない印象がありますし、もしかしたらこれからは少しずつでも着実にチームを作っていくのかもしれない。
 もしかしたら、昨年は残留争いが目の前にあったからこそ、現実を考えてアウェイ仕様のサッカーをしてきたのかもしれない。



 そのあたりを見ていく上で、内容が良かった試合の次の試合…ようするに明日のFC東京戦でミラー監督がどのような戦い方を選ぶのか、注目してみたいと思います。