ジェフらしいクラブ作りとは

 ようやくサポコミの議事録がアップされましたので、自分なりの感想をまとめておきたいと思います。
 その(1) その(2) その(3) その(4)
 
■『クラブビジョン』のブレイクダウン

 こういった図がクラブから発表されたわけではなく、私なりの解釈では…ということになります。
 サポコミでの話しやクラブからの発表などを聞く限り、大まかに図にするとこういうことなのかなぁと。


 クラブのビジョンとして第一に掲げているのが『魅力あるクラブ』。
 その『魅力あるクラブ』作りに必要なのが、「タイトルを目差すこと」と「エキサイティングなサッカー」を見せるということ。
 これは言い換えれば、チームの『強化』ではないかと思います。
 「選手にとっても『魅力あるクラブ』を作る」ともおっしゃられていましたが、これも大きく括ると『強化』の一貫として考えていいのではないかと思います。
 ちょっと強引かもしれませんが、選手に愛着のあるクラブを作ることでチームの質を高めていこうという発想なのではないかと。
 また、『育成』も『魅力あるクラブ』作りにおいての一要素になるという話しをされていました。
 そして、チームを『強化』し結果を残すことで、『スタジアム』を盛り上げることも『魅力あるクラブ』作りにつながるという考えのようです。


 しかし、これらはピッチ上での話し。
 ピッチ上では相手もあることだし、必ずしも確約できるものではありません。
 そのため、次に重要なのが『地域密着』であるということですね。



 そして、それらによって『魅力あるクラブ』作りを進めて行き、クラブの価値を高めることで収入を増やしていく。
 一方でそれらで集めた資金によって、『魅力あるクラブ』作りのための投資を行う。
 ようするに『魅力あるクラブ』作りと『経営の安定』は、相互関係にあるということではないかと思います。
 


 これら全てをまとめたものが、大まかな『クラブビジョン』の話しだったのではないかと思います。

■ジェフの『コアコンピタンス』とは
 『コアコンピタンス』とは、簡単に言えば「ライバルには真似できない自社の核となる技術・能力」のことです。
 娯楽が多くライバルの多い日本国内でのサッカークラブ運営。
 その中で生き抜いていくためには、独自性のあるクラブの特徴・強み、あるいは魅力というものが必要になってくるはずです。
 それが『コアコンピタンス』ですね。


 『ビジョン』が『目標』であり『方向性』がそこに行き着くまでの『道筋』ならば、『コアコンピタンス』はそれを支える『柱』だったり『軸』になるべきものでしょう。
 例えばオシム監督のサッカーならば、『ビジョン』は「トータルフットボール」だったり「人とボールが動くサッカー」となりますが、『コアコンピタンス』は運動量豊富で応用力の高い選手達だったりそういった選手を育てることが出来るオシム監督の育成能力なのではないかと思います。
 『ビジョン』として「人とボールが動くサッカー」を掲げる国内の監督は多いですが、実際に実現できるケースというのは稀です。
 ですから、重要なのは『ビジョン』を掲げることだけでなく、どのようにして『ビジョン』に近づくのか…その『軸』となる部分だと思います。


 ではジェフの場合はどうか。
 クラブのビジョンは『魅力あるクラブ』ということだけれど、それを支えるべき『軸』や『柱』はいったいどこにあるのか。
 方法論がなければいくら立派な『ビジョン』を建てても、いつまで経っても夢や幻のままで終わってしまいます。



 三木社長が今回のサポコミで話された内容と言うのは、非常に一般的な“理想のクラブ”についてだったように思います。
 『魅力あるクラブ』を作りたいのは当然どこも同じでしょう。
 そのためにチームを『強化』し結果を残したい。
 チーム『強化』のために『育成』を頑張りたいと言う話しも、今ではどのクラブでも(ビッククラブですらも)言うようになってしまいました。
 チームを『強化』し結果を出して『サポーター』を盛り上げ相乗効果を生み出したい。
 けれど、ピッチ上は予測が建てにくいからそれがダメなら『地域密着』。
 そうやって『魅力あるクラブ』を作って利益を出して『経営の安定化』を目差し、その利益をまた『魅力あるクラブ』作りに反映させる…。


 これらはどのクラブも目差している目標であり、一般的な理想のクラブということになります。
 フロントなら誰もが「タイトル争いをしたい」と思うでしょうし、「サポーターを大事にしたい」と言うでしょう。
 そして、それらを達成するためにより良い人材を集めたいという話しになるはずです。
 しかし、それはどこも同じことをやっているはずですが、実際には現場の成績でも人気の面でも各クラブで大きな差が出てくるのです。
 では、いったい何が違うのか。
 その差はなんなのかといったところで、『コアコンピタンス』なのです。


 他には真似できない自社の優れた強みだとか他にはない特徴・魅力の部分で、ライバルとの差別化を計りクラブの特徴を産み出していくことが重要になってくるはずです。
 ようするに「ジェフらしさとはなんなのか?」を明確にして、強みを活かした『魅力あるクラブ』作りが重要になってくるはずです。
 その辺りについてのお話しをもう少し聞きたかったなぁと思います。




 しかし、私自身はジェフが特徴のあるクラブ運営が出来ていないわけではないと思います。
 『強化』では「(東欧ではなくなったが)欧州の監督を呼び日本国内で欧州サッカーを魅せ続けるチームをやっていく」。
 『育成』では「ユース年代は選手の確保が難しくなってしまったが、他チームでレギュラーを確保できていない若手選手を獲得しジェフで育てていく」。
 『経営の安定』に関しては「自立経営に関しては景気の悪化で後退してしまったが、親会社が二社あるメリットを活かし一社だけに頼らない経営をしながら収入の安定化を計る」…など。


 けれど、これらに関して今後も特徴だとか強みとして関して活用し、これからも育てて行くつもりがあるのかどうか。
 どれを『軸』として『魅力あるクラブ』を作っていくのかについて、今回のサポコミでははっきりしなかったように思います。
 上で挙げた特徴も一時期的なものとしてそうなっていたのか、それともクラブ主導で今後も積極的に取り組んでいくのかどうか…。
 そのあたりのクラブ独自の特徴に関して、もう少し聞きたかったように思います。



 確かに今回の目玉だった新練習場の話しに関しては、独自の魅力といっていいのかもしれません。
 ただ、天然芝2面、人工芝2面は姉崎から比べると向上したけどJ1ではようやく平均レベル。
 地理的にはフクアリの近くということで来場客にとっては素晴らしいかもしれないけれど、これでどれだけライバルに差をつけられるか…には疑問があるように思います。


■“ジェフらしいクラブ”とは
 三木社長の人柄の良さも伝わってきたし、どのようなクラブを理想として描いているのかもある程度わかりました。
 「クラブ経営とは何たるか」を事細かに説明してくださり、サポーター初心者にもわかりやすい内容だったと思います。
 昼田さんによるチームの裏話的なお話しも非常に面白く、サッカー雑誌に載せれば高い評価を受けるんだろうなぁと思います。
 この巧みな話術で日本人選手(新人も含めて)を口説いてきたんだろうなぁと。
 そして、新練習場はクラブハウスの一部も利用できるとあって、サポーター目線では非常にワクワクする内容でした。
 そういった部分で、収穫は少なくなかったとは思います。


 しかし、全体的に見ると長期的視点にたった具体的なプランだとか、『方向性』の進め方に関しての話は少なかったように思います。
(まぁ、フロントにとって今年は新練習場オープンが目玉で業務的にも重要な要素を占めることになるのでしょうから、そちらに話しの大筋が行ってしまうのは仕方のないのかなぁとも思いますが…。)


 一番わかりやすい話しは、『強化』の部分でしょう。
 例えば今シーズンをどのように捉えているのか。
 上位を目差すのか、残留が成功すればいいのか、若手を育てる年なのか、とにかく勝つことが第一なのか…。
 今年は我慢の年だというのであれば、いつ優勝を目差すのか。
 逆に上位を目差すのなら、それに見合うだけの準備が本当に出来ているのか。
 そして、今シーズンの位置付けとリンクして、2、3年後…5年後、10年後の青写真をどのように描いているのか。


 これは『強化』だからわかりやすいですけど、他の部分でも大きくは変わらなかったと思います。



 何度も言うように、クラブを運営していくためには、長期的な計画が必要不可欠です。
 理想的な『ビジョン』を掲げたとしても、それが1年やそこらで実現できるはずもありません。
 少しずつ段階を踏んで、成長していくしかないわけですから。
 けれど、だからといって闇雲に『ビジョン』を目差していけば、達成できるというほど簡単なものではないでしょう。
 一歩一歩着実に前に進むためには、しっかりとした計画が作られていなければ積み重ねを作るのは難しい。
 手探りで『ビジョン』に到達できるほどサッカークラブと言うものは簡単ではないでしょう(いや、サッカークラブに限らずですが)。 




 最後に。
 社長も変わり、強化部のトップも変わり、監督のタイプも親会社の姿勢も変わり、現在のジェフは非常に重要な過渡期にいるはずです。
 その中で、三木社長は“現状維持”を強調していたように思います。
 しかし、現実問題として、クラブは大きく変化しているように感じます。
 もちろんその変化はいい方向である部分も多いとは、私も思っています。


 けれども、クラブのやり方に関して変化があるのであれば、それははっきりと内外に示しておくべきことでしょう。
 突然やり方を大きく変えるとか、後からなぜそうなったのかとかいう話しにならないように、フロント、サポーターなど利害関係者の中でしっかりと共通理解を深めておくことが重要になります。
 それがサポコミを実施する一番の理由でしょう。
 何よりも、ジェフに関係する全ての人が同じ方向を向いていることが、『魅力あるクラブ』作りにおいて、重要なのではないでしょうか。


 ようするに、“新生ジェフはこれから時間をかけてどのように『魅力あるクラブ』作りに取り組んでいくのか”。
 “ジェフらしいクラブ”とはなんなのか。
 残された課題として、サポーターも含めてジェフという1つのクラブが、真剣に向き合っていかなければいない部分ではないかと私は思います。