錦織も少年時代はサッカーを掛け持ちしていた

 「テニスクラシックブレーク」によると、錦織圭も小学5年生までサッカーとテニスを掛け持ちしていたそうで。
 私がサッカーファンだけなら「なんてもったいないことを」と思うところだけれど、残念ながらテニスファンでもあるので「良い選択をしたなぁ」と素直に感じております(笑)
 ただやっぱりあの軽いステップワークや巧みなゲームメイク、正確なフォアハンドでのボールコントロールなどを見ていると、サッカーでも見てみたかったなぁと思う気持ちもちょっぴりありますが。


 想像通り「10番」タイプの選手だったようですね。
 サッカーを選んでいたら、どんな選手になっていたのかなぁ。



 その後、錦織は若くして盛田ファンドのサポートでアメリカへ武者修行に。
 これが錦織にとって大きなポイントだと思うのですが(日本ではあのような個性的な選手は潰れていたんじゃないかという見方も)、でもサッカーだとそういった育成は難しいのかもしれませんね。
 テニスやモータースポーツのような個人スポーツなら、道具さえあれば(モータースポーツの場合それが大変なんだけど)単身で勝負できる。
 けれどサッカーの場合はポンっとその場に留学させられても、仲間との連係などがとれなければ自分の良さはなかなか出せないかもしれないですしね。
 そのあたりが団体スポーツにおいての選手育成の難しさなのかなぁ…?なんて思ったりもします。


 この雑誌で面白かったのは、錦織のトレーナーの話しも出ているのですが、テニス選手も「体の大きさが重要になっている」という話しをしていること(パワーテニスが主流でもありますしね)。
 錦織は体は小さいけれど、その分俊敏性だとかテクニックだとか戦術眼で戦っている選手ですね。
 このあたりはサッカーでも、ヒントになるじゃないでしょうか。




 私は今の日本サッカーに不足しているのは、「10番」タイプの選手なのかなぁ…と思っています。
 個人的にはそういったタイプの選手はあまり好きではないのだけれど、あまりに偏りすぎてしまうのも困りものです。
 去年のジェフなんてそういった「エキストラキッカー」タイプがいなくて、かなり苦労しましたからね(笑)


 北京五輪での日本代表は、フィジカルコンタクトや高さではそこまで劣っていなかったと思います。
 その背景として近年JFAはフィジカルを重視した選手育成を行い、その第一弾が北京世代だったと思うのだけれど、その一方で純粋な「10番」タイプは少なくなってしまった印象があります。



 今まで名波、俊輔、小野、遠藤、憲剛、松井…といった勝負を決める「10番」が、各世代に1人以上はいたと思うのですが(遅咲きの選手もいるけれど)、この年代にはそういった選手がいませんでした。
 もちろん選手選抜の関係もあるし全くそういった選手がいなかったかと言われればそうではないのでしょうけど、「絶対に外せない」レベルの強烈な「10番」はいなかったと思います。


 怪我で選ばれなかった水野や家長も「10番」というよりは、本山や石川のようなタイプだったと思いますし。
 美しいパスを出すよりも自分から仕掛けていくタイプ。
 強いて言えば梶山かもしれないけれど、彼も純粋な「10番」というわけではないでしょう。
 そして、彼もまた「フィジカルが強い」という特徴があるわけですね。



 まぁ、そういった古典的な「10番」は世界的にも減っているのだろうし、時代の流れなのかもしれません。
 ただ、もしも古典的な「10番」に関わらず「チャンスメーカー」が減っているというのであれば、やはりそれは少し心配かなぁと思います。
 Jリーグを見ても、FWだけでなく勝負を決める「10番」タイプも外国人選手だったりするチームも多い(まぁこれは昔からかもしれないけど)。
 そして、そういった選手がいない問題こそが、北京での惨敗の1つの原因だったのではないか、と思うんですが…。

  
 もしかしたら「どのような方向で選手を育てるか?」という問題以上に、1つの方向が示されるとそちらの方向に偏りすぎる傾向にあることの方が、日本の大きな問題だったりして…。
 「フィジカルを大切にする」という方向性自体は、近年のサッカー界においては決して間違ってはいないとは思いますけどね。
 でも、それだけでもダメだということがわかったのが、北京五輪での惨敗なのかもしれませんが。



 ちなみに、私はスポーツ間における有望選手の囲い込みに関しては、さほど心配していないというか、細々と言っても仕方がないことなのかなぁと思います。
 F1ドライバーでサッカーが得意な選手としてミハエル・シューマッハーがすごく有名になってしまいましたけど、現役ドライバーだけでもフィジケラ、ニコ・ロズベルク、トゥルーリアロンソヴェッテル…と、他にもうまい選手はたくさんいるですよね(中島くらい?)。
 しかもみんなサッカー好きだから、チャリティーマッチなんかもたくさんやってる。
 特にフィジケラはミハエルが現役だったころから、F1ドライバー中で一番サッカーが上手いと言われていて、ローマの大ファンということもあって合宿などにも参加していたりするし。
 それだけサッカーというのが、欧州では盛んということなのでしょう。
 いい選手が欲しければ日本におけるサッカーの価値をあげるというか、魅力をもっと高める他はないんじゃないかと。
(ついでにF1ドライバーにはテニスに関してもセミプロレベルの選手達がたくさん。当たり前だけどみんな運動能力は高いわけですからね。)



 でも、この錦織の記事を読んでいても思うのは、若年時代にはいろんなスポーツをやらせてあげるほうがいいんじゃないか…ということ。
 その方が様々な経験が出来るわけだし、なにより可能性が広がる。
 ジェフの大木さんだったか「才能がない子は早くあきらめさせて、他の道に導いてあげるのも私達の仕事」というようなことを言っていましたけど、実際問題として錦織や柔道の鈴木桂治など子供の頃にサッカーを平行していた選手たちが、選んでいたからといって、そこまでの選手になったかどうかは誰にもわからないですしね。


 ちなみに、鈴木桂治国士舘大の柔道部だった友人に聞いたところ、すごくいい人だったそうです。
 上下関係がすんごく厳しく時にはいじめまがいの話しも聞いていた(特に大学の)柔道部において、その友人から「いい人」と聞いた関係者は初めてだったように思います。
 それも若い頃にサッカーで団体行動を学んだから…だったりして(笑)



 若い頃にサッカーをやってそれが現在の錦織に少しでも良いように作用したのであれば、それはそれだけで良かったと言えるんじゃないかな?と私は思います。