経営分析法で見る各クラブの経営評価07 その2

3.「総資本経常利益率」と「総資本営業利益率」
 去年は「営業収入や純利益だけで騙されるな」と言いましたけど、基本的には営業収入や純利益の大きいことはいいことです。
 あくまでも去年の計算方式は「健全な経営ができているかどうか」であり、経営の規模に関して指示したものではありません。
 投資したって回収できていないチームが多い中で、やっぱり浦和あたりは素晴らしい結果を出していると思います。
 営業収入や純利益は特別に計算する必要もないと思うので、各々で見てください。



 ただし、だからといって単純に営業収入や純利益を並べて、比べてみたり順位をつけるとかはどうかなと思います。
 あるチームは親会社(ほとんど)なしで小口スポンサーをたくさん集めて広告収入が2億円だった。他方であるチームは親会社から大きな補填を受けて広告収入は5億円だった。純利益は同じく5億円だった。
 という2つのチームがあったとしたら、この2チームの純利益を数字だけで並べるのはよくないと思います。
 また、もしかしたら親会社によっては広告収入で補填しないで、チケットを大量に買って入場収入で補填しているところもあるかもしれません。
 それを公表してくれているのならばいいのですが、もし陰でそういうことをしているチームがあるのなら、入場収入を比べることもあまり意味がなくなってしまいます。
 あるいはチームによっては、「その他」の収入で補填しているところもあるかもしれません。
 だから、一概にどうこう比べて順位付けするのはどうかと思います。



 話しは少し反れましたけど営業収入や純利益を見た上で、1年でかかった経費と収入に加えその中でバランスが取れるかどうかが、経営のセンスを問われる指標になるわけです。
 その目安の1つが、去年も行った総資本経常利益率」と「総資本営業利益率」の計算方法です。
 計算方法については去年の説明を見てください。


 小さいクラブでも資本金に対してこのバランスがよければ、いわゆる『優良企業』といわれるようになるわけです。
 逆に営業収入が大きくても規模と比べると大した額が出ていなければ、ダメな企業といことになります。
 昨日も言ったように小さな町やスタジアムでは市場が限られているわけで、まずは工夫して経営していくしかないのです。
 ですから収益の大きさも重要ですけど、そのあたりも含めて評価してあげるべきではないかと思います。




 その1では「会社の規模と資本金のバランスが取れていないところもあるのではないか」と話しました。
 けれど、会社を経営する上でのお金の基盤は、資本金となるわけです。
 その資本金に対して、どれだけ利益を出しているかを計算してみたいと思います。



 両値がが3〜5%以上ならまずまずの企業。10%以上なら優良企業と言った感じでしょうか。
 本来は各業界で違うものなので、目安が出ていないスポーツ業界というのは、なかなか難しいですけどね。


     総資本営業利益率    総資本経常利益率
鹿島   00.0 → −08.2   00.1 → −07.6
浦和   14.7 →  10.0   15.3 →  11.3
大宮   01.3 → −23.2   01.2 → −23.0
千葉   26.9 →  18.0   24.8 →  17.0 
FC東京  11.6 → −06.3   11.3 → −06.7 
川崎   12.3 →  01.5   11.2 →  03.6
横浜FM  00.3 →  02.1   0.00 →  0.19
甲府   32.7 →  43.6   33.5 →  44.3(J1昇格)
新潟  −03.3 → −04.9   06.6 →  02.5
清水  −08.0 → −00.9  −07.9 → −01.2
磐田  −14.9 → −23.2  −08.6 → −32.9
名古屋  13.0 → −35.0   15.0 → −32.0
京都   22.8 →  11.9   25.5 →  10.3(J1昇格)
G大阪  −07.6 →  19.0   01.4 →  07.7
C大阪   06.2 → −66.9   0.60 → −65.6
広島  −18.1 → −81.6  −17.6 → −81.6
福岡  −05.1 → −19.2  −04.2 → −20.8(J1昇格)
大分  −14.2 → −07.8  −13.1 →  05.5


札幌  −12.1 → −35.6   05.1 → −15.7
仙台  −34.9 → −08.4  −16.6 →  03.0 
山形  −24.6 →  04.5  −24.6 →  04.5
水戸   11.1 →  02.4   25.0 → −01.6 
草津  −57.1 →  44.0  −53.0 →  47.4
柏    01.2 → −28.8   0.04 → −26.6(J2降格)
東京V   01.0 → −147.5   0.39 → −148.6(J2降格)
横浜FC −80.8 → −00.5  −64.4 →  01.4
湘南   01.0 → −62.7   01.0 → −60.5
神戸  −36.3 → −23.8  −31.1 → −17.2(J2降格)
徳島   09.1 →  03.2   07.0 →  03.2
愛媛   −− →  01.6   −− →  01.6
鳥栖  −181.5 → −37.2  −180.1 → −35.9

 あれ?W杯って何だっけ?(笑)
 実は06年はW杯イヤーでした。
 そのためJリーグの景気も少しは上向くのかな?と思ったのですが、むしろ逆でした。
 黒字を出していたところが大幅な赤字を出してしたり、利益率が下がっていたり…。
 かなり苦しんでいるな、という印象です。


 意外と頑張っているのが草津とか山形あたりですかね。G大阪も良くなっています。
 一昨年は酷かった鳥栖ですが、だいぶ赤字が減ったようです。


 もっとも酷いのが東京V。見事に資本金を食い尽くしてしまいました。
 柏も一気に赤字になっています。
 これを見ると「一度J2に落ちて出直すべき」なんてことは、恐ろしくていえません。
 出直す前に、チームが消滅してしまうかもしれません…(笑)




 経営面で見ても、J2の方が色々と面白いですね。
 赤字が多いのはいただけませんけど…。
 特にJ1からJ2に降格してしまったチームの経営は興味深いものがあります。
 なにせ一昨年は徳島と草津Jリーグに加盟した年だったため、降格したチームのデータはなし。
 当然、比べようもなかったわけですからね。




 まぁ、この数字だけで判断されるのもよくないですけどね。
 例えば横浜FMはこの2つの数値だと上がっているように見えますが、純利益はかなりの赤字になっています。
 大きな特別損失が出たということでしょう。深くは言いますまい…。


 逆にジェフはこの表では数値が下がっていますが、純利益は増えています。
 2005年はフクアリへの移転があったり広域化に伴うチーム名の変更などがあったため、特別損失が出ていたのではないかと思います。
 Jリーグが公表したデータとともに、総合的に判断することが重要かと思います。




 さて、昨年は総資本対自己資本比率の計算をしましたが、さほど大きな変動はないでしょうから今回は行いません。
 かわりに、せっかく公表されたのだから、その3では人件費について少し見てみたいと思います。 



 ちなみに、もう1つポピュラーな「総資本回転率」というものもあります。
 総資本回転率 = 売上高 ÷ 総資本
 簡単に言うと、企業の大きさ(資本)に対して年間でどれだけの売り上げを出せたかと言う計算式です。
 効率よく資本が回っているかと言うことです。


 ただし、ネックなのが売上に対してのみの計算式だということ。
 コストに関しては考えに入っていないため、分析方法としてどうなのかという方も多くいらっしゃいます。


 こと営業費用が多く赤字経営が多数あるJリーグのクラブを分析する上では、あまり適切ではないように思います。
 黒字を出していることが、この分析方法の条件になってくるのではないかと思うので。




 ということで、黒字を出しているチームは各自で分析してみてもいいかもしれませんね。
その1その3ジェフ編