経営分析法で見る各クラブの経営評価07 その1

 さて、今年もやってまいりました。Jクラブ経営状況の開示資料。
 とはいえ、去年やった計算方法が分析の基本ですので、大きく変わるところはありません。


 若干の変化があったのは、任意だった人件費の公表が全チーム強制になったことくらいでしょうか。
 それと、今年の発表で2年間のデータが集まったことですね。これで2年間の推移はわかることになります。
 しかし、それもたかが2年間。Jリーグも15年間やってきたわけですから2年間のデータを見比べただけでは、整合性が取れないことの方が多いと思います。


 一応今回は、「その3」までエントリを作ろうと思います。
 基礎は昨年話したので、そちらを見ていただければ。
経営分析法で見る各クラブの経営評価 その1
経営分析法で見る各クラブの経営評価 その2


1.公表データについて
 去年も言ったようにもっと公表する項目を増やしてくれればやりようもあるのですが、これだけのデータだと分析方法も限られて来てしまいます。


 もともとJリーグのチームは三者三様です。
 J2で本当にギリギリの経営をしているところもあれば、多額の資金を使って選手を獲得するトップチームもあり、独立した経営をしざるをえないチームもあれば、親会社から多額のサポートを受けているチームもあります。
 それにあるチームは練習場や大型グッズショップを作るなど支出の多い時期だったりするかもしれませんし、逆に投資は終って回収時期に入っているチームもあるかもしれません(もっとも、投資を回収できるかどうかが重要なわけですが)。


 チームごとに様々な拝啓があるのでしょうから、基本的にはチームの現状況を詳しく知っているサポーターが、自分のチームを分析するのが理想なのではないかと思います。



 今のように全チームの大まかなデータをまとめてアップされる形より、それぞれのチームが貸借対照表などの細かな経営データを発表し、そこからデータを読み解いていくのが理想なんじゃないかなと。
 小さくても地元密着のチームと、大掛かりなチームを比べてしまったりすると、変に誤解を生じる可能性もあります。


 もちろんパッと見で他チームと比べられるのはいいことなんですけど、同業者であろうとも規模やバックボーンが違うデータを見比べてもあまり意味はないですからね。
 それならばいっそ公表項目を統一しなくてももっと細かなデータを出して欲しいなぁと思うわけです。



 そして、その細かなデータからサポコミなどで、経営の部分についても話し合うべきではないかと。
 公開されている各クラブのサポコミの議事録などを見ても、今のサポーターはクラブの経営面について無頓着なようにも感じますし。


 今のように貧乏クラブと言われていても優秀な収益を出しているチームが「もっと頑張れ」と言われたり(ジェフのことですけど)、逆に親会社のあからさまな補填がある上で赤字になっているのにさほど深刻な話しになっていなかったりという状況が続くと、根本的な部分でのクラブの発展が難しくなってくるかもしれません。
 もちろんチームの戦力面が気になるのはよくわかりますけど、元手がなければ健全な運営なんて不可能ですから。




 ということで以下の文章で、各チームの分析の手助けになれればと思います。


2.クラブの規模を知ることと伸びシロについて
 昨年も少し言った気がするクラブの規模について。
 クラブの規模が小さいならば小さいなりにやりくりを考えるべきで、大きなクラブと比べても仕方がありませんよという話し。
 同じ業種であっても例えば世界の巨人トヨタと、オリジナリティ溢れる車を作ることで有名な光岡自動車を比べたって、両者の狙いは明らかに違うわけです。


 昨年はその規模を数値的に表しているのが資本金である、ということを言いました。
 一番わかりやすいですし、実際に経営学の面では資本金=会社の規模なわけです。




 それに加えて、数値では表せないので計算式で分析するとかは不可能ですが、例えばホームタウンの大きさなどもチームの規模に関わってくるのではないかと思います。
 「100万都市にあることがビッククラブの条件である」とおっしゃっていたジャーナリストの方もいたように、ホームタウンの人口や交通網の整備はチームにとって重要な要素だと思います。
 特にスタジアムの付近が発展しているかがポイントになります。


 また、同様にスタジアムのキャパシティもクラブの規模を計る上で大きな要素となります。
 例えばレッズがいくら平均5万人近く集めていても、もしいきなり1万人のスタジアムに移転となればキャパの限界数しか人は集められなくなるわけです。まぁありえない話しですけど(笑)



 一方でホームのキャパが小さい柏、千葉、磐田、仙台あたりはもしかしたらもっと大きなスタジアムに移転すれば、観客動員数は伸び収入も増えるかもしれません。
 けれども、仙台には宮城スタジアムが柏は柏の葉が(まぁ規模はそんなに変わらないか)あったけれど、そちらへ移転するには至らなかったわけです。
 これらのチームは、収入よりもまずは顧客満足度を考えたということなのかもしれません。


 それは観客にとってもサッカーというスポーツにとっても素晴らしいことだと思うけど、経営の面では伸びシロがかなり狭まってしまったことになります。
 入場料収入とそれに関連するグッズ収入に関しては、これ以上伸びにくくなってしまったわけですから、スポンサーをこつこつと増やしていくところにポイントを置いて見ていかなければいけないかも知れません。
 放送権がもっと高く売れるようになれば、各クラブの経営も楽になるんですけどね…(笑)



 いくら資本金があっても、顧客がいなければ入場収入やグッズ収入などが増えるわけではありません。
 しかも、各クラブは基本的にスタジアムやホームタウンを選べる立場にはない。
 しかし、本来であればそのあたりの規模によって資本金が縮小していくことが多いのですが、Jリーグの多くのチームは親会社がサポートしているので規模が小さくならず、結果的にバランスが不釣合いになっているように思います。


 とはいえ、経営的に見ればそれが免罪符になって「資本金をうまく回せていないこと」の言い訳にはならないところが難しいところですけどね。
 お金の話だけ見れば資本金がその会社の規模で、それに見合った経済活動を出来ていなければ、健全な経営とはいえないわけですから。



 逆にスタジアムもホームタウンも大きい横浜FMFC東京、神戸あたりは、まだまだ伸びシロがある見ていいでしょう。
 J2のチームでも伸びシロがありそうなところはありますけど、一昨年J2に落ちた柏、東京Vあたりが厳しい決算をはじき出しているところを見ると、J1に定着しない限り経済面での伸びは期待できないと考えていいと思います。
 ここ2年で素晴らしい数値を出している甲府も、もし降格となるとかなり厳しくなるのではないかと…。 



 ともかくまずは自分のチームがどの規模にあるのかを分析してみることが重要だと思います。
 そうすることで、自ずとチームの目差す方向性がわかってくるはずです。
 それを根底においた分析をしなければ、いくら数字を見ても状況を見極めることは出来ないでしょう。
 全てのチームが5万人規模のスタジアムを持つクラブの経営を目差すわけにはいかないですから。
その2その3ジェフ編