<a href=http://footballdog.at.webry.info/200609/article_1.html target=new>宇都宮徹壱氏「オシム監督による『ジーコへのアンチテーゼ』」</a>


なぜ、こんなにオシムは「ブラジル」について頻繁に言及するのだろう。ブラジルの名前を出したほうが、日本人には理解しやすいと考えたからだろうか(意外とこの人、日本の記者のレベルに合わせて話をしてくれる傾向がある)。それとも、バルカン人特有の「ブラジル・フチバル」へのリスペクトゆえであろうか。このとき私は、素直に後者をその理由に考えていた。しかし、その後、同業者と話をする機会があって、どうやらその考えを改めなければならないのではないか、と考えるようになった次第である。
(中略)
ところが、私が尊敬する先輩同業者は、こう反論する。
「オシムがいう『ブラジル』って、実は前任者へのアンチテーゼじゃないかなあ」
 なるほど、そういう見方もあったか!

 ジェフの頃のオシム監督は、スター選手ばかり並べたチームに対しては「レアル・マドリードのようだ」と形容し、守備的過ぎるチームに関しては「アーセナルのようだ」と皮肉っていました。
 それがブラジル代表に変化したのは、自身が代表チームを率いることになったことも、若干関係しているのかもしれません。


 しかし、それだけではないでしょう。
 私は前任監督が日本代表を率いて、ブラジル代表のようなサッカーをしようとしてしまったことへの皮肉だと、以前から確信していました。
 単純に他チームとの比較をするのなら、以前のようにクラブチームの名前を出したって、構わないはずですから。


 それと、Jリーグのクラブチームに対しても、ブラジル路線に走りすぎ何じゃないの?って意味もあるのかもしれません。
 自分のカラーを編み出すべきだ、という意味で…。



 この仮説を立証する上で注目されるのが、今後の三都主の扱いである。


 前任者が最も重用し、ある意味「ジーコ・ジャパンの象徴」でもあった三都主。今のところ、オシムが指揮する4試合で、彼とGK川口だけが「前政権」から続いて連続出場を果たしている。だが、背番号「3」で臨んで2ゴールを挙げた、初戦のトリニダード・トバゴ戦を除けば、その後の3試合で、どれだけ指揮官を満足させるようなプレーを見せてくれただろうか。「考えて走る」わけでも「水を運ぶ」わけでもない三都主に、果たしてオシムは何を求めているのだろう。もしかしたら「ジーコへのアンチテーゼ」として、敢えて彼をフルで使っていたのではないだろうか……そんな疑念さえ、決して否定することはできないくらい、オシムの日本代表は謎めいている。
(中略)
 10月初旬には、次の代表のメンバーが発表されることだろう。そのリストに、三都主の名前があるかないか――私の最大の関心事が、まさに「そこにある」といっても、決して過言ではないのである。


 初め、私はあえて三都主を起用することで、他の選手に対しての反面教師の役をやらせるんだろうと思っていました。


 しかし、実際に代表の試合を見てみると、中東遠征での日本代表は明らかに攻撃面のアイデアを欠いており、チャンスらしいチャンスが作り出せませんでした。
 そこを補う役目が三都主なのかな、との思います。というのも、他に攻撃にアクセントをつかられる選手なんて、あまりいないわけですから。
 その分、守備面では目を瞑らなくてはならないわけですが、幸い来年のアジアカップまではアジアレベルのチームを作ればいいわけで、それほど守備は気にはならないかもしれません。



 個人的には、アジアカップまでは懇親的なプレーが出来る選手を中心に集め、オシム監督の目差す「トータルフットボール」の基盤を作って機が熟してから、松井のような選手を呼ぶんじゃないかな、と思っていたんですけどねぇ。
 それまでは田中達也のドリブルだったり、佐藤勇人や長谷部、羽生あたりの飛び出しだったり、遠藤の右足だったりを攻撃のアクセントにするんだろうと…。


 まぁ、「三都主、反面教師説」が間違っているかどうかは、まだわかりませんけど…。