SBを押し上げる策も裏を取られて敗戦

 今季は開幕直後のスタートダッシュに成功したこともあってか、ここまで観客動員数が好調だったジェフ。
 しかし、昨日の群馬戦ではガクッと動員が減り、8123人となってしまいました。
 やはりチーム状況が悪く成績も下降気味となると、動員にも響いてくるのでしょうか。
 暑さや対戦相手の違いもあるとはいえ、基本的に夏場に向けて動員は増えてくることが多いだけに、今後どう推移していくのか気になります。


 群馬戦も結果から言うと1-2で敗戦。
 こういった試合で勝点を稼いでいけないと、観客も遠のいてしまうかもしれませんね。
■立ち上がりは押し込むもカウンターで失点
 群馬は前節に続いて、野崎がスタメン。
 前回のジェフ戦では1トップで出場し2ゴールをあげた江坂は、左SHでスタートとなりました。
 またアクレイソンが、5月17日の札幌戦以来のスタメンでボランチ出場。
 黄誠秀も6月28日の岐阜戦以来のスタメンとなり、野崎と2トップのような形に。


 ジェフは新加入の安を1トップでいきなり起用し、ペチュニクが右SHに回って水野がスタメンから外れることに。
 CBにも新加入の富沢が入り、栗山がベンチとなりました。
 中村、森本は前節に続いて不在となっていますが、それでも控えには高木、大岩、栗山、健太郎、井出、水野、オナイウといった面々が揃う状況に。
 ベンチからは田中が外れることとなったわけですが、田中がメンバーから外れたのは今季初ということになりました。



 キックオフ直後、ジェフの攻撃。
 後方からの浮き球のボールを安が粘って町田につなぐと、再び安が拾って角度のないところからシュート。
 しかし、シュートはゴール左を逸れます。


 ジェフは前節金沢戦同様、ビルドアップ時にパウリーニョが最終ラインまで下がり、SBを高い位置に押し上げる形を取っていました。
 最終ラインでサイドチェンジをして、サイドの深い位置に起点を作り、相手を押し込んでいく。
 あるいは、単純にロングボールを前線に蹴りこむ。


 安はゴールに背を向けた状況で、うまく体を使ってボールを落とせる選手のようです。
 特に立ち上がりの群馬の守備陣は安のデータがないのか、若干様子見というか、戸惑っている部分があったように見えました。
 ジェフがボールを持つ展開となった序盤でしたが、前節同様にサイドではボールを回せるものの中央には入れられず、シュートまで持ち込めない時間が続きます。



 13分には群馬が左サイドから攻撃。
 スローインからジェフの右サイド裏を突き、そこから中央へつないでいきます。
 最後は吉濱が後方から飛び出していきますが、シュートまでは持ち込めず。
 これが群馬による、初めての目立った攻撃だったと思います。


 ここから、試合は五分五分の流れに。
 23分には、中盤の高い位置で群馬の松下をフリーに。
 ミドルシュートを放たれ、ゴール右隅をかすめる危ないシーンを作られます。



 そして、31分、群馬のカウンター。
 ジェフが左サイドでボールを失うと、吉濱が右から中央方向へ長い距離を持ち込みます。
 吉濱は少しタメを作ってゴール方向へ走りこんでいったアクレイソンにパスを出すと、アクレイソンはそのままシュート。
 シュートの際に金井と接触しボールは左サイドの江坂にわたると、フリーとなった江坂がそのままシュートを放ち先制ゴール。
 

 その直後にも、群馬はカウンターで決定機。
 中盤でボールを奪ったところから、右サイドの黄が完全に裏へ抜け出します。
 黄の中央へのボールは合わなかったものの、再び群馬に拾われファーの野崎がフリーでシュートを放ちますが、ゴールならず。
 短時間に群馬に鋭いカウンターから、二連続で決定機を作られたことになります。



 38分には、谷澤が個人技でチャンスを作ります。
 セカンドボールをペチュニクがヘディングでつなぎ、谷澤が松下の前でボールを受けると反転。
 そのままシュートを放ちますが、ゴール右隅を逸れます。


 43分には富沢が中盤で拾って、そのままシュートもGKがセーブ。
 前半終盤は、若干ジェフの攻撃回数が増えていきました。
 しかし、シュートは距離があるものが多く、確実なチャンスは作れませんでした。
 前半アディショナルタイムには谷澤の浮き球のボールに対して、町田が裏に走りこみダイレクトでシュートを放ちますがそれも決まらず。
 そのまま0-1で前半終了となります。
■FKから同点弾も中盤を捕まえきれず1-2で敗戦
 後半開始直後、左サイドで群馬がパスカットしたボールが谷澤に流れ、町田に縦パス。
 町田が裏を取る形でボールを持ち込みますが、ボールは中央に合わず。


 47分にはジェフが右サイドでボールを奪われたところから、群馬のカウンター。
 勇人が相手を止めて、イエローカードを受けます。
 このシーンでも、ジェフの選手たちの戻りの遅さが気になりました。


 50分にも群馬のカウンター。
 パウリーニョの縦パスが精度を欠いたところから、野崎に縦パス。
 黄がつないで、右サイドの江坂に展開。
 江坂が仕掛けて中央に合わせたボールは、ジェフDFにあたってGK岡本がキャッチ。



 後半もジェフがボールを持つものの、良い形でシュートまでは持ち込めません。
 前半のジェフは右サイドに持ち込むことが多かったですが、後半からは左サイドから攻めが増えていました。
 しかし、大外からのクロスばかりで、群馬のブロック内にボールが入っていかない展開に。


 61分、ジェフはパウリーニョに代えて健太郎を投入。
 パウリーニョに何かアクシデントがあったのか。
 それとも後方に下がってのビルドアップがメインなら、健太郎の方が良いと見たのでしょうか。


 63分、ジェフの攻撃。
 左サイド奥のFKを健太郎が蹴るとファーの安が触って、ニアのペチュニクへ。
 ペチュニクがヘディングであわせ、ゴールを決めます。
 あまり良い流れには思えていなかったのですが、流れとは関係ないところでゴールを決めました。
 安が折り返したことで、ニアでペチュニクが完全にフリーになっていましたね。



 これで1-1の同点としたジェフ。
 さらに追加点を狙っていきたいところですが、66分には黄が左サイドでボールを持ち、ゴール前を斜め前に走りこんできた江坂にパス。
 オフボールの動きでうまく守備を交わした江坂が、ダイレクトでシュートを放ちますがGK岡本の正面。


 67分には金井が左足でクロスを上げ、安が胸で落とすと勇人が長めのミドルシュート
 しかし、GK富居が足元で反応。
 その直後には富沢のクリアが安につながって、そのままシュートまで持ち込むもGK富居がセーブ。



 試合が動いたのは73分。
 右サイドでジェフが吉濱にボールを奪われたところから、吉濱に中央へボールを運ばれます。
 すると、ジェフの守備陣は吉濱にチェックに行けず、思い切ったミドルシュートを放たれ、これをゴール右隅に決められてしまいます。

 
 ジェフは前半23分にも松下をフリーにして、中盤の高い位置からミドルシュートを放たれています。
 この失点シーンの前にも吉濱が2度、中盤でボールをもってスルーパスを狙われる形を作られましたが、そこでも吉濱を抑えきれていませんでした。
 中盤の守備の問題もあるでしょうが、全体のラインが低いのでボランチも前に行けず、相手を捕まえきれない状況が目立っていたように思います。



 75分、ジェフは谷澤に代わって井出を投入。
 78分、群馬は野崎に代えてベテランの永井。
 江坂が中央に移って、永井が右に入ったようです。


 82分、ジェフのビックチャンス。
 金井の上げたクロスは安に合わなかったものの、こぼれたボールをペチュニクが拾ってシュート。
 しかし、GK富居の正面でゴールならず。


 85分、ジェフは町田に代えて水野を投入。
 水野を右サイドにして、ペチュニクと安の2トップに代えたようです。
 88分、群馬は足のつった吉濱に代えて坂井を起用。


 後半アディショナルタイムに入っても、ジェフはクロスやセットプレーで同点ゴールを狙いますが、ゴールは遠く…。
 1-2でジェフの敗戦となってしまいました。
■前に人数をかけるも根本的な解決とはいかず
 パウリーニョが後方に下がって、SBを極端に高い位置まで上げ、サイドチェンジで相手を揺さぶっていく。
 サイドチェンジによって相手のブロックを広げるだけでなく、サイドで高い位置を取ることで相手を押し込む。
 これまでにもボランチを後に下げる形は局面で実施してきた関塚監督ですが、ここまではっきりとしたサイドチェンジ狙いとSBの押し上げはやってこなかったと思います。
 前節は金沢対策、あるいは中村不在による新たな狙いなのかと思っていたのですが、富沢を起用してサイドチェンジを積極的に狙っていったことを考えると、今後狙っていきたい攻撃ということでもあるのかもしれません。



 しかし、群馬戦の前半で、いきなりそのサッカーの穴が出てしまった。
 SBが極めて高い位置を取り、SHも高いポジションにいるので、どうしても後方の人数が少なくなる。
 見方によっては、攻撃に3-1-1-5のようなフォーメーションになってしまう。


 その裏を取られてやられたのが、最初の失点のシーンだったと思います。
 後方に人数が少ないため、どうしても後ろ向きの守備が増えて、吉濱を遅らせられなかった。
 失点直後のカウンターでも、金井の裏を黄に完全に取られて危ない形を作られています。



 これがジェフの新たな戦略なのであれば、開始2試合目にしていきなりその穴をつかれてやられてしまったということになります。
 もちろんこれから修正されていく可能性は十分にあるのでしょうし、この試合でも後半からは若干SBのポジショニングが下がった印象があります。
 しかし、SBが極めて高い位置を取って前に人数をかけることによって、相手を押し込む狙いになっているように思うだけに、そこからの修正というのは悩ましいところがあるのではないでしょうか。


 加えて、肝心の攻撃においても課題がある。
 SBとSHが高い位置にポジショニングすることで相手を押し込み、1つ戻してCBやボランチが前を向いてパスを出す、あるいは逆サイドに展開するという形はできていると思います。
 それによって相手を左右に揺さぶりボックスの隙間を作ろうというのが1つの狙いだと思うのですが、そこから中にうまくボールを入れられない。
 あるいは中にパスを出しても、そこから連携ができていないといった状況でした。
 パウリーニョが交代前に縦パスを出したもののつながらず、カウンターを受けたシーンもありましたし、せっかく相手を揺さぶり押し込んでもそのメリットが生かせていない印象です。



 サイドチェンジで、相手を揺さぶることによって相手を疲労させる。
 または高い位置まで相手を押し込んで、セットプレーからチャンスを作るといった形こそあったものの、ボックスの中で攻撃の形が作れない。
 その結果、守備面でリスクが多いわりに、攻撃でメリットが少ない印象があります。


 見方を変えれば、攻撃の形がうまくいっていないからこそ、守備に不安を抱えてでも前に人数をかけて攻めざるを得ないということなのかもしれません。
 けれども、人数をかけてもチームとして攻撃の形が作れないという本質的な課題が改善されなければ、最終的な解決にはつながらないようにも思います。
 選手のコンディションは一時期より改善されたのではないかと思うのですが、それでもまだチームの進歩におけるブレークスルーとまではいかなそうな印象です。