横浜FMの富沢、川崎の安柄俊加入を発表

富澤清太郎選手加入のお知らせ(ジェフ公式サイト)
安柄俊選手加入のお知らせ(ジェフ公式サイト)


 これまであまり報道には出てきませんでしたが、ジェフの夏の移籍市場が一気に動きましたね。
 まずは、富澤が横浜FMから完全移籍で加入。
 ジェフとしてはまた横浜FMからの補強ということになりましたし、これだけ続いていることを考えると何かしらのルートがあるということなのではないでしょうか。


 富澤は2000年にプロ入りしてから、長らく東京Vでプレー。
 2012年に横浜FMに移籍したわけですが、その頃にはすでにジェフがJ2に降格していたこともあって、個人的には東京Vのイメージの強い選手です。
 横浜FMでは、主にボランチとしてプレー。
 2013年のリーグ2位と天皇杯優勝に、大きく貢献した1人といえるのではないでしょうか。


 ジェフは佐藤勇人が復帰したとはいえ、中盤の底で跳ね返すことができるタイプではありません。
 関塚監督の守備スタイルからすれば、アンカーの位置で跳ね返すことができる選手がほしいところなのではないかと思うのですが、パウリーニョも基本的には前に出ていきたい選手。
 富沢は身長も181cmあってフィジカルも強い選手といった印象があるので、そういったプレーも期待できるのではないでしょうか。



 しかし、ここまでの補強動向や起用法を考えると、CBとして考えている可能性の方が高いのかもしれません。
 開幕前に山村獲得に動いていたのも、夏にブラジル人CB獲得の噂があったのも、ここ2試合大岩が外され栗山が起用されているのも、CBからのビルドアップに物足りなさを感じていたからということなのではないでしょうか。
 足元の技術に関しては田代も期待できると思うのですが、ゴール前で跳ね返すためのフィジカルが足りないという評価なのかもしれませんね。
 大岩も得意とは言えないものの、頑張っていたとは思うのですが。


 確かに栗山も足元の技術はあるし、後方からのロングボールにも強い選手。
 しかし、岐阜戦でも難波に2度も完全に裏を取られてしまったし、金沢戦でもマークのついていた水永に前を向かれてしまった。
 相手の前への速い動きへの対応に課題を感じましたし、そのあたりの不安もあって富沢を獲得したいとうことなのかもしれません。



 ただ、ビルドアップというのは、基本的にはチームで作るものだと思います。
 金沢戦でもパウリーニョがDFラインに下がってCBと3人でパスをつないでいましたが、なかなか縦にはボールを入れられなかった。
 ジェフはボールを持つ時間は長いものの相手に持たされているという展開が多く、CBからのビルドアップでチャンスを作る回数は少ないと思います。


 今季のジェフはサイドの大外につないでの展開やロングボールから相手を押し込む形やハイプレスからのハーフカウンターでここまで戦ってきており、細かなビルドアップというのはできていないと思います。
 例えば前節戦った金沢はCB太田の太田からFWへの縦パスでチャンスを作っていましたが、あれもCBが前を向いたらFWが受ける動作をし、FWに縦パスが入ったら中盤がサポートに回ったり、サイドが飛び出したりといった連動した動きを組織として作れていたからだと思います。
 サイドチェンジからチャンスを作るにしても逆サイドの準備というが重要になってきますし、そのあたりに現在のジェフは課題があると思います。


 細かなビルドアップやパスワークができていないからこそ、後方のプレッシャーが少ない位置に展開力のある選手を置きたいという部分もあるのかもしれません。
 それが金沢戦でのパウリーニョが下がって、パスをつなぐ形にも見えていたのかなとも。
 ただ、パウリーニョが後方に下がった効果はあまり見られなかったように思いますし、富沢を獲得したとしてもそれだけではビルドアップが解決するわけではないように思います。


 富沢は33歳のベテランということで、そこも気になるところではないでしょうか。
 現実的に考えるとシーズン中に連携が重要となるCB獲得となれば、経験豊富な選手を補強した方が良いという発想になるのかもしれません。
 また、若手から中堅が多いDFラインにおいて、ベテランを補強することで経験をプラスしたいという意味合いもあるのかもしれません。


 しかし、J2に降格してからのジェフはベテラン選手を中心に補強してきたこともあって、なかなかチームとして成長できなかった。
 また、ベテラン選手はどうしても衰えなどの不安もあり、スタミナ面にも課題がある場合が多い。
 ここにきて展開力のあるベテラン選手を獲得するのであれば、山口智でもよかったのでは…とも、考えてしまわなくもありません。


 けれども、まだ自動昇格を狙える位置にいるからこそ、ここで即戦力を補強したとも考えられるのかもしれません。
 そうなると、チームの将来性よりも今季の結果ということになるような気もするのですが、そのあたりクラブとしてどのように考えているのでしょうね。



 もう1人、ジェフは川崎からFW安柄俊(アン・ビョンジュン)の加入を発表しました。
 北朝鮮国籍の25歳で、レンタルでの補強ということになります。
 しかし、プロ入り3年目ということですし、レンタルから完全移籍に移る可能性もあり得るのでしょうか。


 2013年に中央大から川崎に加入した安柄俊は、1年目にナビスコ杯1試合に出場。
 2年目はリーグ戦5試合に出場し、うち3試合がスタメン、鹿島戦で1ゴールを決めています。
 しかし、3年目となる今年は、途中出場の2試合のみに終わっている状況です。


 北朝鮮代表として、U-17W杯メンバー入りも本大会での出場はなし。
 他にロンドン五輪予選やフル代表にも選出されており、フル代表で2試合に出場した経験があるそうです。
 ただ、2011年からは代表から遠ざかっているようです。
 個人的には見たことのない選手なので何とも言えませんが、ここ数年の実績からするとそこまで大きな期待をしてはいけないのかなとも思わなくもありません。
 同ポジションに近い年齢の選手の補強を受けて、森本の一層の奮起にも期待したいところです。


 けれども、改めて関塚監督の求めるCF像を考えると、日本人以外だとすれば韓国や朝鮮系の選手がいいのかもしれませんね。
 まず、継続的なプレスが求められること。
 後方の守備陣が低く守りがちで、前から追ってほしいチームになりますから、そこは重要な点になります。
 この点でケンペスは難しかったし、ペチュニクやオナイウももう1つフィットしきれていない印象があります。


 また、前への推進力やクロスに合わせられる空中戦の強さ、サイドに流れたときのシンプルな繋ぎも必要となる…。
 フィジカルが強くスピードあるだけでなく、勤勉に守れてパスも繋ぐ真面目さも求められるということを考えると、東アジア系のCFというのが理想なのかもしれません。
 イメージとしては、永井やチョン・テセということになりますね。
 そう考えると、安柄俊の獲得も関塚監督の意向通りということがいえるのかもしれません。



 これで夏の補強は終わりでしょうか。
 一昨年の夏の補強は森本だけでしたし、昨年も幸野だけだったことを考えれば(監督交代で余計に費用が掛かったのかもしれませんが)、これくらいなのかなとも思います。
 出来ることならスペシャルなストライカーなどをとってほしかったようにも思いますが、贅沢は言えない状況なのでしょう。
 理想を言えばチョン・テセなどを考えていたのですが、清水に獲られてしまいましたね…。


 富沢にしろ、安柄俊にしろ、関塚監督の好み通りといった印象を受けますし、しっかりと強化部は仕事はこなしたと言えるのではないでしょうか。
 ただ、この2人の補強で大きくJ2の戦力図が変わるとも思えません。
 もちろん2人にも頑張ってほしいところではありますし予想以上の活躍を見せてくれればうれしく思いますが、夏の補強に大きな期待をしすぎずに地に足をつけてコツコツとやっていくことが大事ということなのかもしれません。