J1昇格を決めた松本山雅に力負け
多くの松本山雅サポーターが集まったアルウィン。
2012年からJ2に昇格した松本が、早くもJ1昇格を決めたということになります。
逆に言うとその他のクラブの不甲斐なさも感じるわけですが、観客動員数という点においてはJ2トップの松本ですので、そういった視点で見ると当然の昇格とも言えるのかもしれません。
この日も雨の中、クラブ史上最多となる18000人以上の観客が集まったとのことです。
動員の面でも他クラブは松本に負けているということになるわけですけど、松本には上り調子のクラブだからこその勢いを感じ、前向きな雰囲気を持っている印象があります。
なんとなく反町監督が指揮を執って、J2から上がった新潟も思い出させますね。
怖いもの知らずな部分が、伸し上がっていくクラブの強みとも言えるのでしょう。
■ホーム松本が先制ゴール
ジェフは大岩が右SBでスタメン。
試合前にも話した通り高さ対策で起用される可能性は考えられたと思うのですが、カバーリングなど流れの中での守備がどうかが、1つの注目点だったように思います。
またジェフは出場停止明けの健太郎がスタメンに復帰し、兵働、山口慶がベンチスタートとなりました。
キャプテンマークは、また智に戻したんですね。
ベンチでは戸島に変えてオナイウが入り、井出もサブから外れてしまいました。
それほど井出の調子が悪いと判断されたのか、怪我などのアクシデントがあったのか…。
SHでプレーできるジャイールはいるものの守備やパスワークは期待できない選手ですから、安定してプレーできるSHがベンチにいなくなりましたね。
ジャイールもFWと考えればFWは3枚となり、FW不足で2列目が多かったジェフが、FWが多く2列目不足の状況に。
もちろん怪我人などの影響もあるのでしょうが、これも監督交代の変化の1つと言えるのでしょうか。
序盤は予想以上に両チーム、静かな立ち上がり。
松本はサイドでパスワークを作っても、磐田のように簡単には食いついてくれない。
群馬戦でもわかったように現在のジェフ対策を考えると、サイドでもバランスを重視して守れば相手の背後を自発的には取れないので、一定間隔を維持して守ればいい。
前半12分には、ゴール前正面で中村が直接FKを放ちGKがセーブ。
惜しいシュートでしたが、流れからの攻撃の形は作れずにいました。
一方の松本もジェフの右サイドを狙っての攻撃が多かったものの、チャンスは作れずにいました。
カウンターに関しても、キムがスピードでカバー。
やはりキムの存在は、現在のジェフの守備において非常に大きいな存在ですね。
しかし、前半14分、先に得点を奪ったのは松本。
松本の右サイドからの攻撃にクロスを上げられると、下がり気味にボールに合わせていった喜山がヘディングシュート。
これがそのまま決まって松本が先制します。
基本的には喜山がうまくあわせたゴールだったと思います。
しかし、ジェフは攻め込まれると、簡単にラインが下がってしまう。
そのためゴール前の喜山に対応したのが健太郎だったし、喜山は下がってのヘディングシュートだったにもかかわらず、ゴールからは決して遠くなかった。
またジェフはここ数試合、一度サイドを攻め込まれてから戻されての対応でやられてしまう事が増えているわけですが、このシーンでもスローインを受け直したところから切替してクロスをあげられています。
総じてやはり最終ラインが低いこともあって、そのひとつ前のエリアに弱いところがここでも見られてしまいました。
一点を奪われてからのジェフは、パスも繋げなくなっていき、ロングボールが増える展開が続いてしまいます。
松本は森本への対応へも厳しく、試合を通じてポストプレーで自由にさせませんでした。
その結果、前でタメを作れず、なかなか全体を押し上げられません。
前半22分、久々にジェフが深いところまでボールを持ち込みます。
右サイドからのセンタリングを相手GKに弾かれ、こぼれたところを中村がアーリークロス。
森本がそらしますが、GKがキャッチします。
中村はアーリークロスも1つの武器という意見を聞くことがありますが、実際にはアーリークロスでチャンスを作れたことはほとんどないと思います。
精度の高いボールをを蹴るのでチャンスのように見えますが、アーリークロスでは相手も予測が出来た状況で準備が出来ているため中で外しきれていない。
アーリークロスでも相手の守備が整っていない早いタイミングで上げられればいいのですが、実際にはパスワークで手詰まりが起きた後に中村が後ろから蹴るといった状況が多く、効果的なボールにはならない。
かといって、えぐってのクロスも蹴れず、なかなか流れの中で中村の左足を活かせない状況となっています。
前半23分には松本の岩上が前線でタメを作って、山本がシュート。
前半30分にはセカンドボールを岩間が拾って、岩沼がミドルシュート。
その直後にも山本が右サイドの裏に走り込んでボールを受け、大岩が絞った逆サイド大外の岩沼に展開し、中央の岩間が受けてミドルシュート…と松本がチャンスを作っていきます。
前半34分にも攻撃参加してきた大久保が、ジェフの右サイド大外で受けてワンツー。
大岩の裏を完全に抜け出しクロスを上げるなど、ジェフは右サイドから攻撃を作られていた印象でした。
やはり広範囲を守らなければいけない現状だと、大岩は厳しいのか…。
前半39分には谷澤が山本に競り負けカウンターを受けると、岩上がバイタルエリアでフリーとなり、CBの裏を狙ったスルーパス。
船山が抜け出してボールを受けますが、コントロールできず、ジェフからすれば事なきを得ました。
なかなかチャンスの作れないジェフですが、前半41分。
勇人が右サイドで粘って大岩につなぐと、大岩は相手ボランチ前のエリアにいた町田にパス。
町田はミドルシュートを放ちますが、相手GKに阻まれます。
その後、一度目のCKはGKがはじき出しますが、2度目のCKで幸野がニアに走り出しそらしてゴールかと思いきや、その前にファールがあったということで、得点はなりませんでした。
スローで見ていると、智が大久保とやり合っていたようにも見えたので、そこを取られたんでしょうか。
2度のCKで中村の良いキックだったのですが、得点には結びつきませんでした。
■交代策も実らず1-2で敗戦
前半は松本の流れで後半から巻き返しを図りたい展開でしたが、先にチャンスを作ったのは松本。
松本のボランチがセカンドボールを拾ったところから、素早く中央へ縦パス、そこから右サイドと展開していきます。
そして、そのまま早いタイミングでクロス。
智が背後を走って行った山本を見失い、フリーでヘディングを放たれますがGK正面で失点は免れました。
後半6分にも、ロングボールへのこぼれ球に喜山が素早く反応し、ダイレクトでミドルシュート。
長い距離のシュートでしたが、ゴール右隅をかすめる惜しいものでした。
攻撃の形が作れず、悪い流れが続いたジェフ。
流れを変えたいジェフは、後半10分に二枚同時に交代。
町田に変えてケンペスを、勇人に変えて慶を投入。
慶に関しては、セカンドボールを拾われていたので、そこへの修正ではないでしょうか。
勇人はこれで4試合連続途中交代。
ボランチが90分持たないというのは、悩ましい問題ですね。
攻撃では森本、ケンペスの2トップにして、慶が低い位置まで下がって両SBを上げ、サイドからの攻撃を狙っていきます。
一方、松本は全体的に運動量が落ちてきて中盤から前のプレスが弱まり、全体のラインが下がっていきました。
しかし、ジェフは町田が下がった分前線の動きが減り、相手守備陣をずらせなくなってしまいます。
サイドに人数が増え相手守備陣を広げて、ラインを押し下げる状況は出来ていたジェフですが、肝心のゴール前でのマークは外せずにいました。
この時間帯ジェフがボールを持つ時間帯が長かったですが、チャンスらしいチャンスは、後半20分に谷澤が放った長い距離のミドルシュートくらいではないでしょうか。
すると、後半23分。
ジェフ右サイドからの中途半端なクリアを松本が逆サイド中盤で奪い、パスをつなぎます。
岩沼、船山、飯尾でトライアングルを作ったところから、右サイドの飯尾が難なく抜け出し素早くクロス。
これを岩上が決めて2-0とします。
松本はクロスに対する逆サイドの選手の飛び込みをずっと狙っていました印象で、それが形になってしまいましたね。
このシーン、ジェフはボールを持ってもチャンスを作れない時間帯が続いていたせいか、集中力を欠いていたと思います。
アバウトなクリアも問題でしたが、相手のトライアングル3人に対して対応したのは中村と谷澤の2人のみ。
押し上げも遅かったため、サイドには広大なスペースが出来ており、そこを突かれてやられてしまいました。
また、岩上に対応した大岩の寄せが遅く、ほぼフリーでシュートを放たれてしまった。
飯尾も完全にフリーでクロスを上げていましたし、やられるべくしてやられた失点だったように思います。
失点直後にも松本は左サイド前方で犬飼が粘って、山本に落とし鋭いセンタリング。
喜山がゴール前でシュートを放つといった惜しいシーンを作ります。
2失点目を許してしまったジェフは後半24分、幸野に変えてジャイールを投入。
これで早くも、3枚目のカードを切ったことになります。
ジャイール投入直後には、森本がロングシュート。
後半27分には森本が右サイドからクロスを上げて、ケンペスがヘディングシュートもGK正面。
後半34分にはジャイールが抜き切らずにクロス。
こぼれたところを中村が拾い、角度のないところからシュートを放ちますが、ゴールなりません。
この時間帯もジェフが攻め込みはしますけど、最後のマーカーは外せず、決定機までは作れずにいました。
そのため得点の雰囲気はなかなか感じられずに、時間が経過していきます。
後半30分、松本は山本に変えて棗を投入。
2点目を奪ってから、カウンター時に無理に人数をかけなくなっていきました。
しかし、その分、高さのある棗を智のところにあてて、そこで粘ってボールを奪った後の時間を作ると。
それによって下がりがちだったラインを押し上げ、守備を改善していった印象でした。
かなり冷静な試合運びが出来ていた印象です。
試合終盤、なかなかチャンスが作れずにいましたが、後半ロスタイムの目安3分を過ぎたところでゴールが生まれます。
ケンペスが思い切って最終ライン前からミドルシュートを放つと、相手DFにボールが当たります。
その弾いたボールに犬飼が対応するもクリアミス。
これが森本の目の前にこぼれ、そのままシュート。
これが決まって1点を返すものの、1-2でジェフの敗戦となりました。
■群馬戦と同じ展開での敗北
J1昇格を決めた松本ですが、前節ジェフが戦った磐田とは1つレベルの違うチームでした。
さすがに自動昇格しただけの実力あるチームだったと思います。
全体的に運動量が豊富で、球際に強さもある。
守備に関しても安定感があり、攻撃時のカウンターも非常に鋭かった。
試合終盤の対応も落ち着いており、昇格を決めた直後とは思えない冷静な戦いぶりだったと思います。
スコアに関しては結果的に1点差ではありましたが、内容に関しては力負けといった試合だったと思います。
それは1点返した後と試合直後のジェフの選手たちの落胆した表情にも、表れていたのではないでしょうか。
ただ、ジェフからすれば、試合展開は群馬戦と同じでした。
相手守備陣が簡単に飛び込んでこない状況だと、ジェフはなかなかチャンスが作れない。
攻め倦む状況が続いて先にゴールを許し、ケンペスを投入してパワープレー気味に攻め込むも、クロスからの攻撃ばかりになって徐々に停滞状態に陥ってしまう…。
その後、群馬戦ではケンペスの個人技で競り勝って2ゴールをあげるも、松本はしっかりそこも抑えてきた。
群馬戦はケンペスの個人能力に救われた試合だったわけですが、松本とはそこまでの戦力差がなかったため、個人技では勝ちきれず負けてしまったということになるのではないでしょうか。
ジェフとしては内容の悪かった群馬戦でも奇跡的に勝ってしまったこともあって、あの試合からの反省をうまく活かせず、変化・進歩ができていない…。
その結果、同じ形でやられてしまった試合とも言えるのかもしれません。
もちろん変えたくても変えられない状況なのかもしれませんし、今季のJ1昇格だけを考えれば無理に大きく変えなくても乗り切れるという判断なのかもしれません。
しかし、スポーツにおける停滞は、得てして後れとなってしまうケースが多い。
相手は当然ジェフを研究し対策をとってくるわけで、その上をいかなければやられてしまいます。
試合終盤の森本のゴールも、松本の守備陣がこの試合で初めて見せた大きなミスによるものだったと思います。
先日も話した通り、関塚監督になってから相手の隙を突くのがうまくなった。
けれども、相手が隙を見せない高いレベルの試合になった時にどうか…という問題が、この試合で出てしまったのではないでしょうか。
守備においても、ここ数試合相手に狙われることの多いサイドのスペースを突かれたもの。
SBの裏を突かれた時にどう対応するのか。
あるいは一度押し込まれた後に、前への対応のゆるさがある。
そのあたりが大きな問題となっている印象で、そこを改善できずにやられてしまいました。
それでもプレーオフ昇格レベルなら勝てる…と思ってしまえば、足元をすくわれる可能性も出てくるでしょう。
もちろんチーム関係者にはそういった思いはないと願いたいですが、人間ですから心のどこかで油断する可能性はあると思います。
この試合も最後はラッキーなゴールが生まれたわけですが、これをどう捉えるべきか。
あのゴールでチームの勢いは最低限維持できたかもしれませんが、あれによって変な油断を生まないようにしたいところではないでしょうか。
あえて前向きに考えるとすれば、ここ何試合結果が出ているものの内容は決して良いものばかりではなかったと個人的には思っていますし、この敗戦によってもう一度現状のサッカーを見つめ直す機会に出来れば…と思います。
毎試合同じような課題が出てしまうようでは、当然今後の試合でもそこからやられる可能性が出てきてしまいますし、しっかりとそこを修正してほしいところ。
改めて気を引き締め直して、プレーオフ出場に向けて戦っていかなければいけません。
この試合がそのきっかけになればと思います。