関塚監督らしさが出た長野戦
まず前回の話の続きということになりますが、こちらによるとジェフが発行しているUNIITEDに、「監督解任は自動昇格のための決断」と斉藤TDが話していたそうです。
そうなると、やはり関塚監督の目標はともかく昇格ということでしょうか。
確認すると今年の新体制発表会では昇格の話はせず土台作りの重要性を説き、鈴木監督解任時は社長が成績の問題を指摘し、関塚監督就任時には監督自身が地盤作りの話をしていました。
そう考えていくと、やはりフロントとしては監督解任の理由は成績で、関塚監督との意思の疎通が出来ているかは疑わしくなりますが、目標は自動昇格ということになるのでしょうか。
しかし、あの就任会見の感じだと長期的な視野を持ってやっていこうということなのかなと思いましたし、報知にも長期政権なんて話が出ていたんですけどね。
まぁ、もはやどこが主導で監督交代をしているのかもわからないですし、フロントの言葉にどれだけの意味があるのかも判断しにくい状況ですが…。
結果も出て、地盤も作れて、長期政権が続いて…となれば理想的ではあるわけですが、意思決定モデルで重要なのは最も優先すべきなのが何かを明確にすることだと思います。
言い換えれば、このクラブのポリシーはどこにあるのか。
そこが定まらない限りは、いつまでたっても根本的な部分は変わらないような気がします。
まぁ、ともかく自動昇格を目指すのであれば、チームへの見方も変わってくると思います。
ともかく結果を追及すること。
補強なしで自動昇格というのはなんとも過酷な状況だと思いますが、例えばとしてクラブ単位で言えばクラブが自発的に監督を変えたわけですから、「監督交代直後だから」というような言い訳などもしていられないですし、様々な余裕もなくなるはずで。
昨日行われた天皇杯長野戦も、J2に向けて大事な試合と言うことになります。
■先制するも前半に2失点
ジェフはベンチも含めて、前節と同じメンバー。
来週にはJ2が控えていますから、選手をテストするような余裕はないだろうなぁと思っていました。
そう考えると、結果の出た大分戦を引き継いだというよりは、やはり大分戦は関塚監督の意向も含まれた戦い方だったのではないかなと思います。
試合は早速動きます。
前半10分。
中盤左寄りでボールを受けた兵働から、右サイド裏の田中へのボールが出て、大岩に戻します。
大岩はフリーでボールを受けて、森本にクロス。
森本がヘディングであわせて、先制ゴールを上げます。
このシーンからしても、長野は守備が若干あやしかった。
サイドから兵働がボールを受けたのですが、なかなか寄せが来ずするすると簡単に高い位置まで上がることができました。
大岩も田中が前に出ていって戻すと、完全にフリーに。
ここ数試合、クロスの精度に大きな課題を感じていた大岩ですが、ここでは合せてくれました。
フリーだったため大岩が内寄りの位置取りをしてクロスを上げられたことによって、良いボールが上げられたのだと思います。
普段は3-6-1の長野でしたが、この試合で3-5-2にしたこともあってか、ジェフのサイド攻撃への守備が後手後手に回っていました。
森本の裏にもケンペスがフリーで走りこんでいたし、中央も強さを魅せられず、この日はどういった守り方をしたいのか、曖昧だったように思います。
しかし、その直後の前半11分、今度は長野。
健太郎のキムへのバックパスを相手に奪われて、佐藤悠希がゴール。
佐藤悠希は元ジェフリザーブズの選手ですね。
健太郎のバックパスも良くなかったですが、その前の山口智のパスも不用意で、マークのいる健太郎に対して遅いボールを出してしまいました。
また、その前の守備においても、森本が相手ボランチに前を向かせたところからパスをつながれ、両チーム守備面でバタバタしたスタートとなってしまいます。
その直後もサイドからジェフが攻めこまれますが、そこを守ると試合は一進一退といった感じで。
ジェフがポゼッションする時間は長く、長野がカウンターを狙う展開。
その中でもショートカウンターを狙うため、ジェフは前線からプレスを狙っていきます。
基本、点を取りたい時は前からプレスをかけていき、リトリート時はFWをボランチ付近まで下げる感じなのかもれませんね。
相手の3バックでパスを回している際に、2トップに加えて右SHの田中が前に出ていく形でプレスをかけていき、4-3-3のようなフォーメーションになっていました。
しかし、その分田中の裏をとられて、右サイドから攻撃を作られてしまうシーンも目立っていたように思います。
田中が前に出ていく守備が1つの変化なのかなと思って見ていたのですが、やはり無理があったのか途中から無難な形に戻してしまった印象でした。
長野は中盤でプレスにはいくのですけど、寄せが甘くジェフの選手たちを潰しきれないため、ジェフとしてはプレスを掻い潜り逆にチャンスを作れていた印象です。
前半19分には、中村のドンピシャのセンタリングからケンペスがヘディングシュートを放つも決まらず。
前半35分には、中盤でボールを奪い、ボールを受けたケンペスがドリブルで持ち込みミドルシュートを放つもゴールならず。
幾度かチャンスは作れていたのですが、相変わらずゴールが決まりません。
すると前半38分、長野が左サイドの位置でFKのチャンス。
キムがヘディングで跳ね返そうとするのですが、ゴール前にこぼれるとフリーになった宇野沢がゴール。
1-2とされてしまいます。
キムが跳ね返しきれなかったことよりも、中央でエースの宇野沢がフリーになっていたことの方が、問題だったのではないでしょうか。
選手たちがボールだけを見ていて、選手を見きれていなかった印象です。
■相手の足が止まり逆転勝利
1-2で折り返し、後半戦へ。
後半6分。
左サイドで大塚が一対一になって相手を抜き去り、ふわっとしたボールを上げます。
これをケンペスがダイビングヘッドであわせて同点ゴール。
大塚のボールも、ケンペスの飛び込みも良かったですね。
この直前、ジェフの山口智が負傷。
ピッチから離れたのですが、治療のため時間が空いた分、長野の集中力がガクッと落ちてしまった印象です。
その流れで受けたスローインから、大塚がドリブルを仕掛けたのですが、大塚への対応が完全に遅れてしまいました。
また、長野は後半に入って、運動量も一気に落ちていました。
湿度も高く蒸し暑い環境で、しかもアウェイということもあって、体力的に厳しかったのでしょうか。
ジェフのボランチが簡単にフリーになって、後方にスペースが出来てしまう。
にもかかわらず、全体的に前へ出ていく姿勢は変わらなかったので、裏を取りやすい状況になってしまいます。
ジェフは負傷した山口智に代わり、井出を投入。
井出を右SHで使い、SBに田中を起用しました。
田中のSB起用は6月21日の北九州戦にも見られた展開で、この場面でも同点でもう1点欲しいところだったので、攻撃的な交代だったんでしょう。
後半21分、長野左サイドの攻撃。
田中の裏をとってゴール前に返すと、GKと一対一でしたが決まらず。
このあたりの決定力はやはりJ3なのか。
ジェフも外すことは多いですけど、ここまで大きくふかすことは少ないですしね。
そして、後半24分。
ケンペスが中盤右サイドでボールを奪うと、前方の森本にパス。
大塚が走りこみますが、そのまま持ち込み豪快にミドルシュート。
相手DFの寄せも甘く、GKのポジショニングも怪しかったですけど、見事なシュートが決まって勝ち越します。
勝ち越したジェフは兵働に変えて勇人。
森本に変えて竹内を投入し、竹内を右SBへ…と守備固めをしていきます。
田中のところを狙われていた印象もありますし、関塚監督は川崎でもSBの一枠を守備力があって高さのある選手を起用していました。
基本的に守るときは最終ラインで跳ね返す守備がベースでしたので、SBに高さのある選手を置いておきたかったのでしょう。
起用法で言えば、ここが一番関塚監督らしい交代ではないかなと感じました(笑)
実際、試合終盤はボランチや最終ラインが下がりがちになって、最終ラインで跳ね返すことも増えていきました。
これまでのようにラインで守るというより、この時間帯に関してはマンマーク気味に人について跳ね返す。
相手は前に人数をかけていたのでどうしても押し込まれがちになりますが、竹内含めて背の高い選手で対応する…と。
ただ、この時間、井出はかなり頑張ってプレスをしてくれていたので、後方の選手は助かったんじゃないでしょうか。
このままジェフが試合をクローズして3-2で、天皇杯3回戦進出となりました。
■関塚監督らしいサッカー
ジャイアントキリングを起こすには、下剋上を起こそうとするメンタルと、割り切った堅守速攻と、相手に走り勝てるコンディションと…。
このあたりが必要なのではないかと思うのですけど、長野はどれももう1つ足りなかった気がします。
長野は先週行われた天皇杯JSC戦ではもっと走れていたと思うし、守備も粘り強く戦えていた印象でした。
相手のくさびのボールに対しては、CB1人が前に出ていってガツンとFWを潰して、5バックのうち残り4人が絞ってカバーをする。
中盤においてはパスコースを消しながら、密集してボールを奪う。
そういった守備をベースに、攻撃ではサイドを広く使い、ウイングバックやシャドーをうまくフリーにする攻撃が出来ていたのですけど、どれもジェフ戦では見られなかったと思います。
3-5-2にしたのも、少なくともこの試合だけ見れば、大きな失敗だったのではないでしょうか。
ジェフがSH、SBと2枚いるのに対して、どのように守るのか曖昧なまま試合が進んでしまった印象です。
単純に力関係の差で潰したいところで相手を潰せない部分もあったとは思うのですけど、JSC戦はアルウィンで行われたのでやはりコンディション問題が大きかった気がします。
また、JSC戦のようなサッカーでもっと守備よりに戦えばジェフも苦労するかな…というか、引いた相手をどう崩すかのテーマが見られるかなと思ったのですが、意外なほど前に出てきてくれて。
来年J2を見据えた準備をしている長野だからこそ、自分たちのサッカーでどこまでやれるのか試したかったのかもしれませんね。
実際のあのままでJ2で戦うとなると、もっと守備的なチームになるのではないかなぁといった印象も受けました。
JSC戦の戦い方は好きだったんですけどね。
対するジェフも悪くはなかったと思いますが、粗さも出た試合だったように思います。
守備面では前半からラインが下がりがちで中盤が空くことがあったことと、2トップにしてボランチへの守備が遅れがちだったことが気になりました。
森本もケンペスも強さはあるから、うまく守備に入ればがつっと奪えるし、存在感はある。
けれども、守り方は上手くないし、さぼる時間があるので、そこでぽかりと空いた時にボールを運ばれてしまう。
それでも2人はコンディションもよさそうで頑張っていた方だと思うのですけど、これが夏場にどうなるかですね。
関塚監督になって最も目立った変化は、ボールの動かし方でしょう。
「縦に速い」と説明すればそれまでですけど、まずはFWに預けることを第1に考えると。
速攻においても遅攻においても、とにかく早くFWにボールを出そうという意思を感じました。
それが比較的スペースのあった長野相手には、うまくいったと。
加えて現在のFW陣を見ると、森本がこれまでにないほど絶好調。
この試合ではケンペスも好調のように見えました。
長野もいいチームとはいえ、やはり選手の能力はJ3レベルな部分もあって、森本とケンペスとのマッチアップに勝てなかったということになると思います。
関塚監督の攻撃陣の個を活かすサッカーにおいては、前線が勝てるかどうかが非常に重要。
これは今までのチームでもそうでしたし、今日はそこで勝てた。
けれども、もし勝てなかった時、FWが調子を落とした時などにどうするか…?という部分が、今後のポイントになる気がします。
前に速くなった分、今までのように中盤で丁寧につなぐという部分はなくなっていたと思いますし、FWがマッチアップに負けてしまったらどうするか?ということもあって、組織的に崩そうというのが、鈴木監督の狙いだったと思うのですが。
逆に早く前に出し手そこで勝てさえすればチャンスは増えるとも言えますし、そこは一長一短と言うことになるのでしょう。
しかし、森本、ケンペスに早く預けて兵働が散らす…。
まるで昔の川崎を見ていたようでしたね…(笑)
まだ関塚監督にとって初戦ですけど、意外と監督の初戦というは選手たちに無駄な雑念などもないせいか、一番その監督のやりたいサッカーがわかる気もします。
時間をかけてよくなる可能性はあるとは思いますが、その監督の意思が出やすいのは初戦だったりすることも多いのかなと。
日本代表のザッケローニ監督なども初戦の方が一番やりたいサッカーが出来ていた印象でしたし、ジェフでのオシム監督も開幕戦でCBを一枚削って巻を投入するなど攻撃的な姿勢を見せていました。
鈴木監督で言えば3-0で勝ったちばぎんカップでしょうか。
今回の試合でもFWに素早く預けるボール回しや、終盤の跳ね返すディフェンスなど関塚監督のサッカーらしさが出ていたと思いますし、ベースはあの試合になるのではないかなと思います。
ともかく冒頭で話した通り大事なのは、リーグ戦での結果ということになるのでしょう。
幸先良いスタートと言うことになりましたが、本番はこれからですね。