神戸テクニカルダイレクターの退任を考える
ちょっと遅れて取り上げることになりますが、基本順番ということで。
今期結果も出せなかったですし、3年目ということでサポーターからの批判も多かったですし、予想はできることではありました。
木山監督の退任も後ろ盾であった神戸TDの退任と、無関係とは言えないでしょうね。
しかし、タイミングがプレーオフ敗退の直後ということで、なんとなくトカゲのしっぽ切り的な印象も感じなくはなかったような。
あるいはサポーターのガス抜きという意味もあるのでしょうか。
まぁ、それでガスが抜かれるのであれば、サポーター側も自分以外の誰かに責任を取ってほしがっていたというか。
そこで一番切りやすくて(批判しやすくて)納得できるのが、神戸TDなのかなとも思ったりもしますが。
就任当初の神戸TDは、かなり難しい状況にあったと思います
神戸TDジェフがJ2に降格した2009年の10月に、強化アドバイザーに就任(2010年2月からテクニカルダイレクターに正式就任)。
それだけでも大変な状況だったと思うわけですが、その時にはすでに新米監督だった江尻監督が就任しており、来季の続投も当時の社長が明言。
自身が選んだわけではない監督とともに、就任早々に「1年でJ1復帰」という高いノルマを求められることになりました。
アドバイザー就任まで北マリアナ諸島代表を務めており、2010年2月までは非常勤という状況で、準備期間もろくになかったわけですしね。
しかし、その一方で下部組織改革には力を注ぎ、朴才絃氏や菅澤氏など実績のある指導者を招聘。
結果を出したというには早すぎますが、今後に期待したい部分ではあります。
トップチームに関しては、問題となるのは2011年からということになるのでしょう。
2011年に関しては神戸TDのコネでドワイト監督を招聘しましたが、一向にチーム力が上がっていかず、最終的には自身が監督を執って昇格に失敗するという非常に残念な結果に終わってしまいました。
しかし、これに関しては自分の憶測ではありますが、2011年のドワイト監督就任時もサポコミで「リストアップした」「最終決定はクラブが行う」と歯切れの悪いコメントをしていました。
日本人監督の江尻監督がダメだったからまた欧州路線に戻してドワイト監督を招聘したことや、長身FWオーロイの獲得に関しても前年度やられたハーフナーのものまね感が強く、どちらも素人的な発想だなぁと感じる部分があるように感じていました。
このあたりの決断は、もしかしたら神戸TD主導の下ではないのではないかなぁと思う部分があったりして。
もちろんドワイト監督にせよオーロイにせよ、"準備をした"のは神戸TDであり、神戸TDに責任がないとは言えませんが。
神戸TDの色が本当に出てきたのは、今年からだったのではないでしょうか。
日本人監督を招聘し、"身の丈に合った"チーム作りを行う…と。
折しもジェフの社長が交代したタイミングで、神戸TDもやりやすい部分が出てきたのかなと。
個人的には「チーム強化に失敗した=TDがすべて悪い」という風潮は、短絡的すぎるのではないかと思います。
例えば神戸TDが就任から2年間で獲得した竹内、渡邊、山口慶、勇人、林、村井、茶野(ここ4人は代理人も絡んでいるでしょうが)、鎌田、倉田(江尻監督が引っ張ってきたともいわれていますが)などは十分な戦力になったはず。
また、新人選手も久保、伊藤、戸島、藤本、町田、大岩と将来性の期待できる選手たちを補強しています。
今年に関しても木山監督が具体的に希望を出したであろう兵働、山口智、荒田などを補強。
戦術と選手層を見れば、藤田、佐藤健、武田、田中なども監督の意向が強かったのではないかと思われます。
まずこれだけの選手を監督の希望通り補強したというだけでも、J2レベルでは十分すぎる戦力だと思います。
それに加えてシーズン中には、パスワークを改善させるため、高い位置でボールを受けて前にパスを出せる大塚を補強。
大岩がイマイチ伸びきれないとなったら高橋を獲得。
ゴール前に得点できる選手がいないとなったらロボを加入させ、攻撃に変化が足りない状況では谷澤が復帰…とピンポイントで、文字通りの"補強"を行っていきました。
外国人選手に関しても物足りないと言われることもありますが、現役オーストラリア代表とセリエAプレーヤーを獲得していて、まだ足りないというのは贅沢すぎるのではないかと。
今期J2のライバルを見ても日本人レベルから飛び抜けた外国人選手といったらダヴィくらいしか思いつきませんし、J1を見ても以前ほど外国人選手に頼るチームというのは少なくなっている印象がしますし。
もちろんそれでも目標は達成できなかったのですから、神戸TDへの責任問題には。
特に今期に関しては、言い訳の効かない1年だったとは思いますし。
ただ、次へのスタートを切るためには、「じゃあ次にいい強化担当の責任者を呼べばいい」で終わるかというと、そうではないと思います。
そもそも、その目標というのは、本当に正当なものだったのか。
「J1昇格」という目標は、神戸TDも含めてではありますが、クラブ全体で決めて、実行しなければいけないことであって。
多くのサッカー関係者が口をそろえているように、戦力はある。
けれども、結果が出ないというのであれば、監督人事に問題があったのか。
けれども、今のジェフに木山監督以上の指導者を選出できるかどうかも分からない…。
そうなってくると、そもそも「J1昇格」というのは無理難題ではなかったのか。
人も物もお金も足りているのにうまくいかない…。
で、あるのならやはり時間をかけなければいけなかったのではないか。
1年で結果を出すというノルマではなく、数年単位で見ていかなければいけなかったのではないか。
そうなってくれば、選手の補強のあり方も必然的に変わってくるだろうし、チーム作りも違ってきていたのではないかと思います。
フロント(強化部よりも上の首脳陣)としても、親会社やスポンサーなどからのプレッシャーもあるのかもしれませんけど、そこは現場だけでなく自分たちも戦わなければ行けないんじゃないのかなと思います。
神戸さんにゼネラルマネージャーという肩書ではなく、テクニカルディレクターという役職しか与えなかった。
そこからもあるいはご本人の言葉からしても、神戸TDがやれることはある程度絞られていたのではないかと予想できます。
その分、首脳陣がやりたいようにやれたのではないかと思いますが、責任(…という言葉は好きではないですけど)は首脳陣にも回ってくるはずではないでしょうか。
ともかく、神戸TDに責任を押し付けるだけでなく、クラブ全体で何が問題だったのかを真剣に考えていってほしいところだと思います。
さて、これで監督とともに強化部トップの"招聘"も急ピッチで行わなければならなくなりました。
個人的には優秀な監督もですが、強化部トップが任せられる人材というのも、そう簡単にはいないものだと思っております。
清雲さんではないかという噂も出ていますが…。