昨期のディフェンスと今期のオフェンスと

 今さらかって話題ですが、キャンプ前にまとめておこうと思うって、昨年の守備に関してのお話から少し。
 昨年の守備に関してポイントだったのは、なによりもプレッシングだったと思います。
 シーズン序盤は他チームもまだチームを作り始める段階で、選手層の厚さ(主に選手交代を燃料として)で勝点を稼げていたと思います。
 しかし、シーズンが進むにつれジェフがプレッシングをベースにしていくということは見えてきたものの、夏場の気候もあって90分間を通してのプレスが難しいことが判明し、前半45分は激しいプレスがかけられても後半にはチーム全体が失速してしまう症状が起きてしまします。


 その前半45分のプレスの質に関しても、相手の研究もあってかボールを奪いきれず、DFラインで展開されて逆にピンチを作られるシーンも目立ってしまいます。
 そんな中で、6月に巻が久々にスタメンで出場され、米倉と共にプレスにおいて大きく貢献。
 ネットもチェイシングをする選手ではありましたが、継続的に追うことやパスコースを消しながら守備をするといった“賢いプレス”ができるタイプではなかったですし(巻と比べるのは可哀想かもしれませんが)、個人的にはプレスが主軸となるチームだったからこそ「巻は戦力外だから移籍は仕方がない」という考えは、どうにも納得できない部分がありました。
 もちろん巻抜きでプレッシングがしっかりと構築されていればそうはおもわなかったでしょうけど、監督の試合後のコメントなどを読んでも、そのあたりは評価されていなかったのかなぁと思います。
 …というか、江尻監督は分析能力の点で課題が大きかった印象がありますね。
 相手チームへの対応はもちろん、自チームの分析に関しても。
 “攻撃における最後の部分の形作り”に問題があったことは多くの人が指摘していたことだと思うのですが、最後まで「特別な練習はしない」と言いきっていたわけですし。


 
 前半45分ハイプレスをかけて後半失速…という展開は、岡田監督の日本代表でもW杯の1年前に見られた傾向だったと思います。
 もしかしたら岡田監督の中では日本人の特性を活かしたサッカーがハイプレスであり、それをどこまで追求できるのか試そうという意味合いもあったのかもしれません。
 そういう意味で両チームのやろうとしていたことは、非常に似通ったところがあったと思います。
 それが上手く行かず、45分程度しか持たなかったという点も含めて(笑)
 江尻監督もJFAでの経験がある指導者ですから、ロジックの部分で近いところがあるのではないかと思います(JFAの方向性を維持するという意味では、これは良い面もあるはずです)。


 しかし、うまく行かなかった後にどう対処したのかという点では大きく違ったのかなと。
 日本代表はW杯でどちらかと言えばリトリートに比重を置いたサッカーをし、それにプレスも織り交ぜるサッカーをして成功を収めた印象でした。
 このリトリート+プレスは現代サッカーの主流ですよね。
 J2でもそういったチームが多いですし、アジアカップでも、ロシアや西欧でも見られる戦い方で。
 もちろんそのやり方や細部に関しては大きく異なります(そこが重要な部分とも言えるのでしょう)が、いわゆる“守備のスタイル”というか“狙い”に関して考えれば、その比重をどちらに傾けるかが重要なのではないのかなと。
 だから、志垣コーチがブログでドワイト監督の印象として語っていた状況に応じたプレスというのも、それだけでは監督の特徴はわからないなぁと。
 それがもっとも一般的な守備スタイルだと思いますし、同様に攻撃においてもショートとロングを使い分けるということですが、どういった比重になるのかが一番違いの表れるところだと思いますし。
 逆に「ショートパスを中心に戦う」とか「プレッシングサッカーを目指す」とか「マンマークで行く」という話なら、なんとなく見えてくる部分もあると思うのですが。
 もちろん、このエントリーで全てを説明されるつもりではないでしょうから、わからなくて当然だとは思うのですが。

 

 昨年のジェフは9月の柏戦あたりから一度プレスはあきらめたかのように見えたのですが、シーズン終盤のJ1昇格も厳しくなった頃にもう一度キックオフからのプレスを再開。
 このあたりからも、江尻監督のプレッシングサッカーに対するこだわりは大きかったんじゃないでしょうか。
 そのために開幕前からスピードのある茶野やミリガン、運動量豊富な山口、勇人を補強したのではないかと思います。
 そして、その意図は、何よりも試合の主導権を握ることだったではないかと。
 J1を昇格するためには試合の主導権を握って、試合を優位に進めることで、勝点を確実に奪っていかなければならない。
 そういった考え方に関しては、私は前向きに評価するべきなのではないかと思います。
 確かにプレスに関しては中途半端な面も残ってしまったし、カウンター対策やセットプレーの守備に関しても、課題は多かったですけどね。
 といっても、実際にはジェフの総失点数37は甲府の総失点数40より少なく(柏は断トツの24、福岡は34)、そこまで極端に守備が酷かった印象はないのですけど。

 
 そのあたりを踏まえて、今期の守備はどういった考えを持って守備組織を作るのか。
 「守備の強化」を昨年の課題としてあげる意見も多いようですが、一言で「守備を強化する」と言ってもいろんな守備への考え方があるはずで。
 もしかしたら昨年も単純に失点を減らすことだけを主眼に置けば出来なくはなかったのかもしれないですが、あえて前掛かりなサッカーをしていた部分もあったはずで。
 昨年は高さに不安もありましたが、今期は逆に背の高いベテラン選手が増えて、スピードや運動量の面では不安も出てきそうな気もします。
 そうなってくると、今期は昨年のようなコンパクトなサッカーを目指す方向とは別路線で行くのか。
 その場合、スタイルが大きく変わる可能性も出てくると思うのですけど、チーム作りに時間はかからないのか。
 そして、そういったサッカーでも主導権を握って、勝点を奪っていけるのか。
(昨年のアルゼンチン戦で素晴らしい守備を構築できていた日本代表がアジア杯で守備面では不安定に見えるのも、前に出ていかなければいけない立場に変わったからという部分もあるのではないかとも思いますし。)
 このあたりは練習試合などでは見えてこない部分もあると思うし、相手の研究などもあるシーズンを通して結果として表れる部分なのかもしれませんね。



 ただ、私は今期もっとも気になるのは、攻撃面ではないかと思います。
 昨年のジェフは試合の主導権を握ろうとしたけれど、実際には主導権を握り切れなかった試合が多かった。
 その原因は何よりも前掛かりなサッカーをして相手を押し込む時間が長かったにもかかわらず、そこから得点を奪いきれなかったことだと思います。 
 昨年の総得点は柏、甲府が71で、福岡は63、ジェフは58。
 あれだけ前への意識が強いサッカーだったことを考えれば、得点が少な過ぎる印象があります。
 だからこそ、その攻撃面にプラスを作れる監督がいいのかなと思っていたのですが(城福さんとか大木さんとか)、サポコミを聞く感じだとなんとなくドワイト氏は守備面で期待の出来る監督さんといった感じなのでしょうか。


 攻撃に関しては、長身のオーロイなどを獲得し、中盤にはサイドアタッカーをあえて残した印象もあるので(ドワイト氏はコメントでも「ウイングを使った攻撃」という話をしていますし)、サイドからクロスが主流になっていくのかなと思います。
 ただ、ミラー監督の時のように、ウイングの個人での突破力ばかりに期待するサッカーになってしまうと、少し心配な部分も出てくるのではないでしょうか。
 これまでの補強を見ても、なんとなくミラー監督の目指す部分に近いものを感じてしまうのですが…。
 W杯の日本代表のようにカウンターを狙える状況ならばそれでもいいと思うのですが、J2でのジェフは相手の守備をこじ開けていかなければいけない立場です。
 そうなってくると、どうしても個人での突破力だけではなく3人目4人目が連動した攻撃を作っていかなければ、スペースを消されて(あるいは数的不利を作られて)攻撃が行き詰ってしまう可能性が高いわけで。
 アタッキングサードにおいて3人目4人目と連動した動きが作れなかったことが、昨期苦しんだ一番の理由だとも思いますし。



 ということで、個人的には守備以上に“攻撃における最後の部分の形作り”をドワイト監督に期待したいところです。
 もちろん攻守どちらかが欠けても成り立たないのがサッカーではあると思うのですが、昨年の反省を踏まえるのであればやはり攻撃面の改善が最も必要とされる部分なのではないでしょうか。