西部謙司氏「問われるJクラブのビジョン」


毎年主力が流出している千葉は、まさに「育てて売るクラブ」の様相だが、やむを得ずそうなっているだけで、それを目指しているわけではない。
 クラブを混乱から救えず、結果も出せなかったことで、社長の責任を問うことは可能でしょう。
 また、昨シーズンオフの「優勝」、今シーズンオフの「ACL出場を目差す」という目標設定も、現実的ではないと思います。 


 
 この二点が大きな問題だと思っているのですが、それ以上に重要なのはやはりクラブのビジョンですね。
 目標設定はクラブビジョンにも大きく関わってきますが…。


中小クラブは「育てる」に力を入れながら、「売る」にブレーキをかけるしかない。具体的な方策はさまざまだが、選手が止まりたくなる環境を作ることだ。年俸は安くても総合的に得だと思える何か、クラブとしての魅力を打ち出していく必要がある。
例えば、医療的なバックアップが素晴らしく 35 歳まではプレーできる、引退後のプランまで立てられる、監督が有能で能力を伸ばせる、練習環境が抜群、とにかく雰囲気がいい…選手にとって何らかの魅力を持つことだ。
 ジェフのフロントはアマル監督の解任を決定しました。
 これにより方向性(魅力)の1つであった『オシムサッカー』の継続は不可能になります。


 社長が「脱オシム」を宣言したことを批判する声も多いようですが、アマル監督を解任した時点で『オシムサッカー』からチームが(選手には残るかもしれないが)卒業しなければいけないのは当然でしょう(言っていることは正しくても社長の言い方が悪かったということは十分ありえることだが)。
 岡田監督に『オシムサッカー』を望むのと同じように、クゼ監督やその他の監督に『オシムサッカー』を望むのは失礼に当るし、的が外れた話しだと思います。
 実際、クゼ監督は就任直後に「4-4-2で戦う」ことを明言していますが、それがいいか悪いかは別としてオシム監督ならそんなことは言わなかったはずです。


 一方で、アマル監督は父親のサッカーを理解していた上、オシム監督の下でコーチをしていたことが非常に大きかったわけです。
 日本代表での『オシムサッカー』がジェフでやっていた『オシムサッカー』とは違いがあったように、『オシムサッカー』も環境が違えば変化していきます。
 ジェフでの『オシムサッカー』をアマル監督が学んでいたことは、アマル監督がジェフの監督に就任して『オシムサッカー』を継続する上でとても重要だったということです。
 この辺りからも祖母井さんの手腕が見て取れるということですね。


 逆に、もしアマル監督を解任しておいた上で『オシムサッカー』を継続するというのなら、それこそ問題ではないかと思います。なぜ解任したのかということになりますからね。
 ただ、私は『東欧路線』の中の『オシムサッカー』だと思っていたのですが(もっとももっと長く『オシムサッカー』を見たかったけれど)、アマル監督解任後の選手達のコメントを読むと『東欧路線』以上に『オシムサッカー』に強く魅力を感じていたように思います。


 羽生の移籍の際のコメントなどを読むと、もしかしたら移籍の一番の要因はここにあったのではないかとも思えてきました。







 また、アマル監督の解任理由が「成績不振」だったことも大きいことだと思います。
 これにより、もう1つの方向性(魅力)であった『若手育成』も間接的に否定することになると思います。
 アマル監督は工藤、伊藤、青木、水野など、多くの選手を育てましたが、『若手育成』の部分を評価せずそれ以上に成績を求めたことになるわけですから。
 そして、現に昼田GMは櫛野や坂本など、ベテランでメンタル面の強い選手を呼び戻しました。
 これにより、若手は育たなくなるかもしれませんが、結果は近づくかもしれません。
 もっとも、それには選手流出を防がなくては元も子もないわけですが。








 このように、アマル監督解任はジェフのクラブビジョン(=クラブの魅力)にとって、大きな要素だと思っています。
 にもかかわらず、ジェフのフロントはそれをアマル監督の解任という形で否定してしまったのです。
 これに関して、選手が動揺するのも無理もないことなのかもしれません。






 ただ、サポーターもアマル監督にはブーイングしていたわけです。
 しかも、選手には拍手を送っておいてアマル監督だけをブーイングしていたのですから、(選手の質云々ではなく)クラブビジョンに対して否定していたと思われても仕方ないことではないかと思います。
 特に昨シーズンは、結果を我慢しても土台を作らなければいけない時期だったのにも関わらず…。


 オシム監督は何度も「チームの方向性が重要だ」と言っていました。
 加えて、それを叶えるためにはフロントはもちろん、選手もスポンサーも街もサポーターも同じ方向を向いていることが重要だとも言っていました。
 


 だから私がクラブビジョンに対して社長に言うのであれば、「なぜクラブビジョンとアマル監督を暴走したサポーターから守ってやれなかったんだ!」ということです。
 「祖母井さんは何を言われても耐えてきたのに!」と。
 けれど、私だってにわかサポーターの端くれの端っこ。それを偉そうに言う立場にはないんじゃないかなぁと、ずっと悩んでいたのですが…。





 こんな状況だからこそマスコミにそういったことを言ってほしいんですけど、結局サポーター=お客様ですからサポーター批判に繋がるようなことは、言えないんですよね。
 フロント批判はいとも簡単にするんですけどね。まぁ、そういった記事は逆に部数が伸びるのではないかと思うけど(笑)


 むず〜りさんも「ウラにある理由を考えよう」とおっしゃっているし、記事をそのまま読んでいては駄目だということですよね。
 まぁ、今回に限らずでしょうけど。






 …それにしても、クラブビジョンを考えるたびに、祖母井さんの大きさを感じてしまいますね。   
 岡社長も「丸投げ」ではなかったにせよ、祖母井さんに「一任していた」ような感じだったし。
 社長が現場にでしゃばってきたら、それはそれは問題でしょうしね。